あぁ〜暇だったのでいつも眺めていて知っているけど……少年兵たちが、いつも行っている訓練とは違うものが始まった。隊長や他の講師たちも緊張をしている様子で固まっている。
あぁ……セリオスって軍の中じゃ幹部だしなぁ。階級社会じゃ軍の頂点か。話をしていると……呼び捨てで呼ぶことがあるけど、他の人じゃ考えられないことなんだよなぁ。前に護衛兵に、呼んできてって頼んだ時も顔色を悪くしていたしなぁ〜
少年兵の訓練も真面目なセリオスだし……無茶なことはしないと思う。それより……
「さっき、お父さんになんて言われたの?」
「え?……ん……」
「あぁ……話しづらかったら言わなくても良いよ〜」
「他の男の子と仲良くしていると、「お兄ちゃんが会いに来てくれなくなるぞ」って……言われて焦っちゃったぁ……」
エリゼに仲の良い子が出来たら、俺は気軽にエリゼに会いに来れなくなるよな。兵士の男の子にしたら、同僚と仲良く話をしていたら会社のお偉いさんが来たような感じで、お互いに気を使っちゃうしなー
実際、俺は会わずに帰ろうとしてたし。こういう関係になることは……想定外だったなぁ〜。まあ、好かれて嫌な気はしないから良いか〜
さすがに、もう見飽きちゃったな〜。初めは、魔法に剣術が珍しくて、夢中で見てたけど自分も使えるようになったし。
『なぁ〜あーちゃんって剣術って使える?』
『まぁ、幼少の頃に……多少は、習いましたけど……』
『マジかぁ〜! ねぇ、ねぇ……後で、悪魔の剣術を教えてくれない?』
『……イヤです。ムリムリ……レイニー様の剣術の腕を知っていますしぃ……。教えることなんてありませんっ』
『……未知なる力……』ボソッと呟いた……
肩に乗るあーちゃんがビクッと体が震えるのが伝わった。
『……勘弁して下さい……』
『もぉ〜ウソつきぃ……』
『従者に、なったじゃないですかぁ〜』
『それって……俺は頼んでないけどねぇ……。勝手にあーちゃんが提案してきたんじゃんっ』
『……頑張って助言をしてるじゃないですかぁ〜』
『まぁ……そうだね~。頼りにしてるよー』そういうとホッとしたように力が抜けて、肩に体を預けてきたようにベッタリとくっついた。
そういえば……エリゼが「冒険者ごっこ」って言ってたよな? ゲームとかアニメで聞き慣れてたから、普通に聞き流してたけど……この世界に冒険者っているんだなぁ。
「エリゼって、剣術は使えるんだよね?」
「うん。お父さんに教えてもらってるよ!」
エリゼって、強いのかな? ステータスって見れないのかな? と思いつつエリゼを見つめているとステータスが表示された。周りの兵士と比較をすると低めだけど、少年兵と同等以上かぁ……さすがセリオスの娘といった感じだねっ。
わぁーい。新たにステータスの表示スキルをゲット〜♪ レベルに技術の熟練度くらいしか見れないけど、十分に役立ちそうだよねっ。
……っていうか、俺のレベル……一桁なんですけど!? あんだけ修行しても、このレベルなのか。エリゼより下っておかしくない?? まあ……魔物の討伐をしてないからかな? エリゼも魔物の討伐をしてないんじゃないの?
「エリゼって、魔物の討伐をしたことあるのぉ?」
「え? ないない、したことないよぉ〜。ある訳ないじゃん〜。お父さんが、許してくれると思う?」隣りに座るエリゼが、俺を見つめてコテッと小首を傾げて可愛く聞いてきた。エリゼが、魔物の討伐……うん。ありえないなぁ。でも、お父さんのセリオスと一緒にだったら……うぅ〜ん……娘をキケンな場所へ連れて行くわけ無いか。でも、低級の魔物の討伐くらいなら、冒険者ごっこであるかも?
「ん〜剣術の修行で、お父さんと一緒に討伐とかしてそ〜」
「わたし、女の子なんですけど! 剣術は自分の身を守るために教えてもらってるだけだよ〜」エリゼに、真面目に突っ込まれた。
なんだー。てっきり冒険者になるのが夢なのかと思ってた……
「そうなんだ? 冒険者志望じゃないんだね〜」
「ん〜ちょっとは、なりたいかなぁ……♪ あ、お父さんには……内緒だよ!」エリゼが、ニコッと笑って言ってきた。
だよね。エリゼを溺愛してるんだから、キケンな冒険者の道を許してくれるわけがないか。
「うん。秘密は守るよっ」俺も笑顔で返事を返した。
あーでも、セリオスは冒険者ごっこは一緒にしてるんだよね?
「冒険者ごっこって、なにをしてるの〜?」
「えっとね……お父さんと一緒に山に行って〜お父さんの魔物の討伐を見てるのっ♪」
……あぁ、それか。それがレベルが上がってる原因じゃん。行動をともにして、魔物の討伐でレベルアップか……なるほどねぇ……
『レイニー様……私を使ってレベルアップをしようとしてませんか……?』
『えへへっ♪ バレちゃったぁ〜?』
『この体で、戦闘をしろと?』
『擬態でも強いじゃん? たぶん……悪魔だし、不死だよねぇ〜? ンフフ……♪』
『イヤですよ……面倒くさい……。それに外出を許してくれないと思いますけどね〜』
レイニーがあーちゃんを見つめニヤッと笑うと、あーちゃんが察したらしく大きなため息を付いた。
「それじゃ〜冒険者ごっこをしに山に行こうか〜?」レイニーがエリゼを見つめてニコッと笑った。
「え? ダメですよぉ〜。絶対に怒られちゃいますよっ。それに許してくれるわけないじゃないですかー」エリゼが否定をしてくるが、少し期待をしている表情をしていた。
さーて、なんて言って外出の許可をもらおうかな〜? 山で冒険者ごっこをしたいと正直にいうか……? でも、魔物が出るからダメだと言うかな? 盗賊も出るかもだし……