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第19話 誘拐

 警備兵に囲まれ、「こっちに来い!」と店の外に出されると、裏路地に連れてこられ、怪しい建物に連れ込まれた。


 あのぉ……監視の人は、なにしてるの?? 放置でいいの? 怪しい建物に連れ込まれたんですけど……? もしかして……危害を加えそうになるまで待機って命令だったりして!? 何度も言うけど、俺……王子だよ?


「上玉じゃないですか〜。こりゃー高く売れますね!」悪人面の人が俺たちを見て言ってきた。


「こりゃーしばらく、遊んで暮らせるぞ」わぁ……嬉しそうに言ってるけど、俺たちを売る気っぽいな。


「ですなー。二人とも可愛いですな。しかも、金持ちの娘そうですぜ……。肌の艶、衣服も上等ですよ! 悪臭もしないですからなー」完全に売る気だな。不正な人身売買ってやつじゃん。


「ギャーギャー騒がないし、しつけやマナーも教え込まれてそうですな。ぐふふ……」わぁ……キモすぎる。


 これって……奴隷商か人買いに売る気か? 街の警備兵が盗賊の真似事ですかぁ……?


「移動しますか……。勘付かれたっぽいからな」


 男たちが懐からキラキラと光る石を取り出し、俺たちを囲むと魔法陣が出てきて空間が歪み、別の建物に移動したみたいだ。


 そこは動物臭が漂い、木造で薄暗く、王都から離れた場所なのか静かだった。


 あらら……転移? 転移されちゃったじゃん……。これじゃ、複数いた監視がまかれちゃったんじゃないの? それにしてもエリゼは落ち着いてるね……。自分が置かれた状況を理解していないのかな? 頭は良さそうだけどなぁ、俺たち誘拐されてるんだよ??


「お前ら、ここで大人しくしてろよ?」リーダーっぽい男が、ニヤけた顔をして話しかけて来ると部屋から出て行った。


「分かるよな? 頭良さそうだしよ! 大人しくしてろな……じゃないと、痛い目にあうからな!」続いて、下っ端の男が怖そうな顔でいかにも悪党面の男が威圧的に言ってきた。リーダーに続いて部屋を出た。


「まあ、念のため拘束させてもらうけどな」残された悪党面の下っ端がそう言うと、ロープで両手両足を縛られ、男たちは別の部屋に行ってしまった。


「エリゼ、落ち着いてるね? 怖くないの?」


「ん……少し怖いけど、あの人たちより……お父さんが連れて来る人のほうがコワイかな。それに……お兄ちゃんが一緒だし……大丈夫かな♪」俺を見つめ、ニコッと微笑まれちゃった。これは、守り切らないとだよね! いざとなれば、魔法もあるし……非常事態にはなれば、あーちゃんに手伝ってもらおーっと♪


 それにしても、面白いモノを見せてもらったなぁ。転移かぁ~すごぉーい! そんなもの見せられちゃニヤけちゃうじゃんっ!


 エリゼに、かなり信頼されちゃってるみたいだね〜どーしよー? エリゼと一緒に縛られていて……これじゃ、あーちゃんと話もできないじゃん。


 あーちゃんに、この場所がどこか聞きたかったのになぁ〜


『……えっとですね、王都内の森の近くの小屋ですね』あーちゃんの声が頭の中に入ってきた。


『あーちゃん?』ビックリしながらも頭の中で確認をした。


『なんですか?』


『なんですか? じゃないよぉー、もお! こんなのが使えるなら教えてよ〜』


『使ったのは……レイニー様じゃないですかぁ……。悪魔同士なら使えますが、レイニー様も使えたのですね〜……レイニー様って……悪魔の血でも引いてるのですか? それとも、もっとすごい……』


『はぁ?……人間ですっ!! ……たぶん。俺が伝えたいと強く念じたから届いたのかもね〜。新スキルゲット♪ えへっ』


 王都内なら見つけてくれるでしょ。監視役が撒かれて大騒ぎになってると思うし……たぶん。騎士団長が命じた監視役だったらだけどねぇ……


 外が騒がしくなり、男たちが兵士の服装から一般人の服装に着替えて戻ってきた。


「おい、移動するぞ。足の縄を解くから自分で歩けよ!」


 外に出ると、幌付きの馬車が用意されていた。辺りは、民家がなく自然が多い場所だった。この感じからすると、王都の端の方の土地かな。転移で王都内外の行き来は、できないようになっているっぽい。そりゃそうか……自由に行き来できちゃったら、敵も自由に入れちゃうからね。ということは……王都から出るとすれば、普通は荷物検査があるはずなんだけど。こういう悪いやつは、買収してたり……抜け道をつくってるんだよねぇ。そうなったら……悪いけど、ちょっと痛くしちゃうけど自業自得だからねぇ〜


 馬車に乗せられると移動が始まった。


「エリゼ、大丈夫?」


「うん。別に大丈夫だよぉ」


「そっかぁ〜。エリゼは、強いねっ♪」


「そうかなぁ〜?お兄ちゃんがいるからかな。いなかったら……パニックになってるかもなぁ……お兄ちゃん♪」


 隣に座るエリゼが俺に寄りかかってきた。手が自由だったら頭を撫でてあげたいけど、拘束されているのでムリだ。


 しばらく馬車で走ると、森の中から町中に入ったようで周りが騒がしくなってきた。


「お前ら黙ってろよ。騒いだら容赦なく殺すからな!」前方の幌が開き、男が睨みながら言ってきた。


 開いた隙間から城壁が見え、都内に出入りする検問所の列に並んでいるみたいで少し動いては止まりを繰り返していた。


「積み荷はなんだ? 」男たちとは別の声が聞こえてきた。質問からして警備兵だろなぁ。早く気付いてくれないかな……


「子供の奴隷です」落ち着いた声で男が答えた。よくこの状況で落ち着いて答えられるねぇ……調べられたら終わりじゃないの?


「子供か……。そうか。では、中身を確認させてもらうぞ」門兵らしいセリフを言う。


「え? 話が違うだろ!」すると、男が慌てた声をだし怒っていた。明らかに買収したけど、裏切られたような話の内容だなぁ。


「バカか? お前らも警備兵なら分かるだろ……。それに今は、状況が違うぞ! あんな金額で危険を犯せるか!! 話し掛けるな……巻き込まないでくれ!」ふぅ〜ん……買収されてるじゃん。帰ったらお父さまに言ってやろ〜っと♪


「今更……子供の奴隷の売買くらい、罰金程度で済むだろ……臆病者めが!もう、二度とお前には頼まんからな!裏切り者め!!」諦めたようで、強気で文句を言っていた。


「お前らの拐った子供が、ただの子供だと思ってるのか? お前ら……全員生きては帰れないぞ……」


「は? まさか……有力者の貴族の子供だったか!?身なりも良かったしな……」


 動揺した声を上げた直後に、後方の幌が開き即兵士が大声を上げた。まるで乗っている者が誰か知っているかように……


「発見したぞ!!無事でいらっしゃるぞ!」と兵士が声をあげると同時に、兵士に担がれて保護された。真昼の青空に、兵士が魔法の信号弾を力強く打ち上げた。その瞬間、鮮やかな赤い閃光が空を切り裂き、まるで炎の矢のように一直線に上昇した。光り輝く信号弾は、太陽の光を反射し、周囲を一瞬にして鮮烈な赤に染め上げた。


 上空で信号弾が破裂し、轟音とともに眩い閃光が放たれる。周囲の静寂が破れ、大音量の爆発音が響き渡る。その光景は、昼間の陽光にも負けないほどの明るさで、全ての視線を一瞬で捉えた。、赤い煙が尾を引き場所を知らせた。


「わぁ……。これ、オオゴトになっちゃってるね……たいへんだぁ……」エリゼが、外を見て引き攣った顔をして俺に呟いた。


「そうなの? ただの応援要請とか、発見したぞって感じじゃないの?」


「ううん、ちがーう。青色が鎮圧完了、黄色が応援求む、赤色はね……敵勢とか魔物の群れが攻めてきたとかの非常事態宣言だって、お父さんが言ってたよ」うん。それは、オオゴトになっちゃったね……俺も怒られそう……かな。


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