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第16話 午後の魔法の練習

 あーちゃんが擬態になり行動を共にしようとするが、擬態のままだと移動が遅い。


「ねぇ〜あーちゃん、おそーいっ」レイニーは振り返り、少し困ったような顔をした。


「す、すみません。この体だと……移動が困難ですよぉ」あーちゃんは申し訳なさそうに頭を下げた。


 あーちゃんは、擬態中は擬態に合わせて性格や声と口調が変わるみたいで可愛い。


「もぉ、仕方ないなぁ〜俺の肩に乗りなよ♪」レイニーは優しく微笑みながら、肩を差し出した。


「ご主人様の肩にですか!?」あーちゃんは驚きと喜びが混じった表情で尋ねた。


「ご主人様じゃなくてレイニーで良いよ〜」レイニーは軽く笑いながら答えた。


「えっと……でしたらレイニー様と呼ばさせてください」あーちゃんは少し恥ずかしそうに言った。


「うぅ〜ん……良いけどさぁ」レイニーは肩をすくめながら、あーちゃんを肩に乗せた。



 肩にあーちゃんを乗せて王族専用の屋内魔法練習場へやってきた。ガードナーさんに自主練の許可も貰っているし、堂々と最近は練習ができる。


「レイニー様、ここはどこなんですか??」あーちゃんは驚いた表情を見せた。


「魔法の練習場だよっ」とレイニーは自慢げに答えた。


「レイニー様が魔法を放ったら……この建物が保たないんじゃないですか?」あーちゃんは心配そうに周りを見回した。


「……バカぁ……そんな威力を出さないよっ」とレイニーはムスッとした表情で答えた。「俺だって魔法の加減くらい出来るしっ!」と思いイラッとした。


「……魔法の練習ですよね? そんなので練習になるんですか?」あーちゃんは疑問の表情を浮かべた。


 レイニーがムスッとした表情で、あーちゃんを睨んだ。「あーちゃん、イチイチうるさいっ。ポイって捨てるよぉ〜」と言いながら、ちょっと頬を膨らませた。


 レイニー様に捨てられれば解放となって嬉しいが……自分に誓ってしまって、さらに従者契約をしているので裏切れない。裏切りの代償は……何が起こるのかわからない。それに裏切ろうとも思えなくなっている。……レイニー様に惹かれてる……自分に驚いていた。


「すみません……疑問に思ったことを口に出してしまって」


「あぁ〜。あはは……飼い主に似るんだねぇ♪ 俺もね、疑問に思ったことは口に出しちゃうんだよね〜。一緒だね〜」


あーちゃんの頭を撫でて微笑んだ。「……なんだ……この温かい気持ちは……」あーちゃんが不思議な気持ちに戸惑っていた。


「あーちゃん、あーちゃん魔法のさぁ……点取ゲームしよ♪」


「点取ゲームですかぁ? 何を賭けますか?」あーちゃんが悪そうな顔をして聞いてきた。


「ん〜じゃあ、あーちゃんのご飯を豪華にしてあげる!」


「……はい?」あーちゃんが戸惑い聞き返した。


「はい? って、あーちゃんペットだし〜。本当はペットの餌だよ?」要は、残飯だ。


「……はい。それでお願いします」


「じゃぁ〜あーちゃんが負けたら?」


「……えっと……」自分で言い出しておいて掛けるものがないことに気付いた。レイニー様が欲しがりそうな物は持っていない。ここで地位や金と女とか名誉と言っても興味がないだろうし……。今思ったモノは全てレイニー様の実力で奪えると、嫌と言うほどに味わったばかりだ。困った表情をしているとレイニー様が声を掛けてきた。


「ん〜じゃあさぁ。今夜、一緒に寝てもらおうかなっ」


「え? あ、はい……それで良いのですか?」


「うんっ♪」



 あーちゃんは、戸惑った表情をして考えた。勝っても負けても痛手はない……欲を言えば勝って豪華と言われる飯を食いたいが。


 ゲームを始めると、レイニーがパシュ……と的に当てど真ん中に当てた。


 あーちゃんも擬態をしてるとはいえ最上位の悪魔だったので魔法の技術や精度は良い。


「もぉーつまんない。なんか面白い魔法ないの?」


 レイニーが飽きた表情をして呟いた。「面白い魔法……人間に出来ない魔法かな?」


「こんなのは、どうですか?」



 あーちゃんが擬態を変え顔が2つになった。



「うわぁ。あーちゃん……キモいぃ……。それ、おばけか妖怪じゃん!」レイニーが気味悪い物を見るような顔をして見てきた。


「……レイニー様が面白い魔法を見たいと言うから、お見せしようと思って擬態を変えたのですがっ!」あーちゃんが、ムスッとした表情でそっぽを向いた。


「わ、わわ、ご、ゴメン。あーちゃんっ♪」あーちゃんを抱きかかえてご機嫌取りで頭を撫でた。


「……では……」あーちゃんが2つの口で詠唱を始めた。


『『……ファイアショット』』2つのファイアショットが的に向かって放たれた。


「わぁ〜そういう方法もあるのか……すごーい。あーちゃん」


あれは、真似できないなぁ〜多重魔法は出来ても、多重詠唱はムリだぁ〜負けたぁ。


「えへへっ♪ どうですか? レイニー様」


「すごい、すごい! 俺には真似できないよっ!」


「こんなこともできますよっ」ご機嫌になったあーちゃんが次の魔法を見せてくれた。


『……黒炎球』『……サイクロンエッジ』同時に魔法を発動すると黒炎が渦を巻き、的をキーン、キーン、キーンと複数音が鳴り、複数回斬りつけられているのが分かった。


「へぇ〜これって、多重魔法でも応用が出来るんじゃないのかな??」とレイニーは思ってニヤッとした。


 あーちゃんの隣で腕を伸ばし無詠唱で2つの魔法を同時に放った。


『ファイアボール』『ウォーターボール』


 ゴルフボール大の2つの魔法が同じ的に当たると蒸気爆発を起こし、大音量の轟音と衝撃波が2人を襲った。当然、部屋に結界を張っていたので部屋の損壊、音が漏れることはなかった。



「威力が強く組み合わせを考えるのが面白そうだっ♪」とレイニーは思ってニコニコの笑顔になった。


「……レイニー様、今のは??」あーちゃんのが俺の体をジロジロと見て観察してきた。


「……無いよ! 2つの口なんてっ!」ムッとした口調で言った。そんなオバケみたいなのイヤすぎる……


「じゃあ、どうして2つの魔法が!?」あーちゃんが不思議そうな顔をして、納得できないといった口調で言ってきた。


「多重詠唱じゃなくて、多重魔法だよ〜♪ えへっ」


「……なんですか、それ!? こんなに苦労して擬態をして魔法を使ってるのですよ? もぉ……」呆れた口調で言ってきたが、どこか嬉しそうに感じた。


「あーちゃんから色々と教われそうだなぁ♪」と思い、あーちゃんを抱きしめた。モフモフとした感触がたまらないなぁ〜



 その夜に、嫌がるもふもふのあーちゃんを抱いて寝ると、あーちゃんが恥ずかしそうに観念して大人しくなり、幸せそうな表情をして一緒に眠った。


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