レイニーがニコッと微笑み、ディアブロに小さな声だが、はっきりと言った。
「ねぇ……そんな攻撃じゃなくてさぁ……。もっとスゴイ攻撃をしてよ、つまらないなぁ……。未知の力を教えてくれるんだよね? それ、未知だけどさぁ……つまんなーい。もっと派手なのが良いかなっ」
レイニーにジロッと見つめられて、悪魔は背中が凍りつく恐怖を感じた。精神支配は成功したはずだぞ? なぜ効かない? それ以前に、なぜ最上位の悪魔を見て怯えないんだ!? 精神支配がばれていただと? それに人間に効かない? あり得んぞ……
「あ〜それ、もう……いいやぁ。飽きちゃったぁ〜」
ディアブロは、精神支配をし解放されることを期待した。この部屋にも結界が張ってあり、逃げ出そうとすればレイニーに再び封印されるかもしれないと考えた。簡単に封印を解ける子供なのだから、封印をすることもできるだろうと考えた。
ディアブロの心中では、この異常な状況に困惑し恐怖していた。こんな子供に、最上位の悪魔である自分がここまで追い詰められるとは……。いろいろな不安が胸をよぎるが、必死にそれを押し隠し、単刀直入に解放をしてくれないか聞いてみた。
「そうか、悪かったな。つまらないか……。では、ここから解放してくれないか?」
「え? だめだめ〜♪ 俺の実験に付き合ってもらわないと〜。キミ、悪魔だよね? 悪魔って現れるのって珍しいって本に書いてあったんだよねっ♪」
レイニーが、不気味な笑いというか実験動物を見る目で見てきた。
最上位の悪魔を実験に使うだと? 悪魔と分かっていてその振る舞いなのか、コイツ大丈夫なのか? こんな奴に付き合ってたら、こっちまでおかしくなりそうだ。なんでこんなヤツに声を掛けちまったんだ、最悪じゃないか……さっさと終らせるか……
魔法やスキルが効かなければ物理攻撃で、何でも切り裂ける悪魔の爪で切り裂いてやる。この爪は、特殊で思いや希望などの形のないものでも切り裂ける。それが魂だとしても。魂を切り裂かれれば、蘇生魔法も効果がなくなるし、切り裂かれた場所の回復魔法も治癒薬も効かない。
ディアブロは、内心で焦りながらも、相手はたかだか人間の子供だ。この子供は魔法に優れているが、物理攻撃を防げるわけがないだろうと確信していた。人間とは、魔法か物理攻撃のどちらかが優れていれば、どちらかが劣っているものだ。
ディアブロの手には鋭い爪が光り、瞬時に動いて目の前に現れると、キラリと光る爪を喉元を狙い振り下ろした。「よし、やはりただのガキだな……まったく反応ができていない」甲高いキーンと音が鳴り響き、ディアブロの爪が弾かれた。
「は? ……え!?」ディアブロが、何が起こったのか分からないという表情で固まった。
「あぁ〜、そんな攻撃は効かないから。残念でしたぁ♪ 獣みたいな爪が効くわけがないじゃん〜」子供の戦いごっこを楽しむかのような口調で言ってきた。
「は? 意味が分からないぞ。我の爪は……人間のバリアごとき、バリアごと切り裂けるはずだぞ……」
本来は、獣の爪と同レベルにされて怒るところだが……今は、それどころではなかった。何もかも想定外すぎる。
「へぇ……そうなんだぁ。残念だけど……俺には効かないみたいだね。無駄な抵抗しても疲れるだけだよっ。大人しくしてなよ。それに、あまり暴れるようなら……キミ、消・す・よ?」
ディアブロは、その言葉に凍りついたように動けなくなった。一瞬、明らかに強大な殺気を感じた。それも人間の殺気とは次元が違う、もっと上位の存在の殺気を感じ血の気が引いた。
「えへへっ、冗談冗談だよ♪ 大切な実験の材料を消すわけ無いじゃんっ。あははっ♪」
レイニーは無邪気に笑い、悪魔の最上位であるディアブロを実験の材料として見ているとハッキリと再び言った。
「我を消すだと? 悪魔は不死の存在だ。殺せるわけがないだろ」ディアブロは、思わず人間の戯言にムキになりツッコミを入れてしまい、慌てて平静を装った。
それを聞いたレイニーがムスッとした表情で頬を膨らませ、面倒くさそうに説明を始めた。
「だーかーらー消すって言ったでしょ? 殺せなくてもさ、存在そのものを消しちゃえば良いんじゃないっ? たとえばさぁ〜異次元に閉じ込めちゃったりすれば、どーなるだろうねぇ〜? 興味ない? どうなっちゃうんだろうね……? この世界から存在は消えちゃうよね。でも、他の次元では生きてるの。それって面白い実験じゃない? キミも興味あるでしょ? えへっ♪」
レイニーが言い終わると、ニコッと微笑みディアブロを実験動物を見るような眼差しで見つめた。その目は好奇心で輝き、まるで悪魔が人間で遊ぶ時の眼差しと同じだった。ディアブロは、この状況に焦り、状況が完全に立場が入れ替わっていることに気づいた。だが、人間の子供が異次元だと? 高度な空間魔法の上位である、さらに上位の異次元魔法を使えるわけが……ないだろ。
「は? 人間の貴様が、異空間魔法を使える訳がなかろう。魔族や悪魔などの上位種でも使える者が少ないのだぞ」まるで使えるような話し方をするので、ディアブロは真面目に説明をした。どれほど異次元魔法が難しいのかを話した。
「あはは。はい、ざんねーん。俺、色々と頑張って練習したからさぁ……使えるようになっちゃったんだぁ〜♪ ほらぁ」
レイニーは、書庫で魔法の勉強と、ガードナーとの魔法の練習とアドバイスを受け、知識を教えられ、上達とはいえないほど格段に知識、魔力、種類が爆発的に増えていた。まさにチート能力といえる知識の吸収力だった。もともとアニメやゲームで知識があったし、イメージできれば問題がなかった。基礎と常識を教わり、あとは好奇心と実験を密かに繰り返していた。
そして今回の、貴重な不死という存在の実験材料が目の前に現れた。見過ごせるわけがない。
何をしても死なない存在……好奇心が湧いてくるでしょ♪
「不死でしょ? それがね〜かなり災いする空間なんだよね……永遠と地獄の苦しみを味わうんじゃないかなぁ〜。耐えられなくて、死んで終らせたくても終らない苦しみ……味わいたいかなぁ?」