この世界に来た頃に、好奇心で宝物庫や貴重なアイテムを保管をしてある場所を聞いたことがあった。いくつかは普通に教えてくれたが、他にもありそうな様子をしていたので……当然、俺のお得意の技の「甘えて」で聞き出した。渋っていたが、メイドのお姉さんの膝の上に座り、さらに甘えるとスラスラと話してくれた。
その内容は、城の地下室が厳重に封鎖され、立ち入りさえ許されない場所であるというものだった。
そこには財宝や珍しいアイテムが保管されているらしい。レイニーは財宝には興味がないが、珍しいアイテムや不思議な力のアイテムには興味があった。レイニーは想像するだけでワクワクして好奇心を刺激された。「どんなものなのだろう? 機会があれば、ぜひ見てみたいなぁ〜」と思うようになっていた。
そして今日、その機会が訪れた。妹の友達が遊びに来ていて遊びの流れで追いかけっこの様な遊びになった。
妹たちに追いかけられ、逃げているうちに、城で立ち入りが厳重に禁じられていた宝物庫へ続くエリアに警備兵の目をかいくぐって入ってしまった。
いや、これは……偶然だよ。ぐ・う・ぜ・ん! だって、場所までは聞いたけど知らないって言ってたし。追いかけられて、仕方なく……立ち入り禁止エリアに入っちゃったんだからさ。
城の地下には、特別な宝物や危険な物を封印している厳重な部屋があり、その存在は限られた者にしか知られていない。この部屋は城の奥深くに位置しており、部屋への入口は広間の片隅にひっそりと佇む石造りの階段に繋がっている。
階段の入口には、二人の警備兵が厳重に警戒を続けている。彼らは重厚な鎧に身を包み、鋭い目で周囲を見張っている。長年の訓練と経験からくる緊張感と決意が、彼らの表情に浮かんでいる。手には長槍が握られ、その先端は鋭く研がれている。
階段は薄暗く、冷たい風が壁の隙間から漏れている。階段を下ると空気は徐々に重く冷たくなり、緊張感が増してくる。両脇には燭台が設置されており、揺れる蝋燭の炎がかすかな光を放っている。その光が壁に影を落とし、不気味な雰囲気を醸し出している。
階段を降り切ると、頑丈な鉄の扉が立ちはだかっている。扉には複雑な魔法陣が刻まれており、その上には古代文字が書かれている。魔法陣は淡い青白い光を放ち、封印の力を誇示している。扉の周囲にはさらに幾重もの結界が張られ、不用意に近づく者を阻んでいる。
レイニーは瞬時に不可視化の魔法を使い、その姿を消した。彼の手から淡い紫色の光が広がり、まるで闇に溶け込むかのように体が闇に覆われていくように見えなっていく。これは、闇属性の影移動の初級の魔法だった事を後で知る。不可視化が完了すると、レイニーは音もなくスッと警備兵の間をすり抜け、通り過ぎた。
警備兵の一人がふと違和感を感じ、隣の警備兵に話しかけた。
「おい、今何か感じなかったか?」
「感じた?いや、特に何も…でも、なんか妙に寒気がするんだよな」
「だろう? もしかして幽霊でもいるのか?」
「勘弁してくれよ…。でも、一応見回りを強化しとくか」
さらに上級の影移動となれば、気配に気付かれることもなく影から影へ移動が可能になる。だが、影移動はスキルだ。
警備兵を越えた先には、古びた石造りの廊下を進むと、突如として現れる巨大な扉。その扉は、分厚い鉄板でできており、何重にも渡る複雑なロックが施されている。扉全体には、古代のルーン文字が刻まれ、神秘的な光を放っている。暗がりの中でもその輝きはひときわ目立ち、近づく者に威圧感を与える。
扉の周囲には、魔法の防護壁が見えない形で張り巡らされており、侵入を試みる者を阻む。封印の魔法が施されているため、淡い青い光が波打つように扉を覆っており、その近くに立つと微かな静電気のような感覚が肌を刺す。
扉の前には、二体の巨大な石像が立っており、それぞれが鋭い視線を放ち、まるで生きているかのように周囲を見張っている。石像の持つ槍や剣は、ほんの少しの振動でも鋭く反応しそうなほどに緊張感が漂っている。ここまでして守らなければならないものが一体何なのか、興味がそそられる。自然と笑みがこぼれる。ウフフ……お宝ちゃん、待っててね〜♪
鍵を透視魔法で観察し、理解すると魔法で鍵を操作し開錠した。
心の中で「名付けて解除魔法だぁ〜!」と叫び、テンションが上がってくる。
封印魔法は簡単に解除できた。古すぎて劣化しているようだった。封印を解除をした鉄でできた重い扉をギギギィィ……と音を立てて開けた。
宝物庫の内部は、無限の神秘と驚異に満ちていると噂されているが、まさに今その厳重な扉を開けて目の前に現れた。
扉の内側には封印や結界が張られており、その厳重な防御体制は、収められた財宝や珍しいアイテムの価値を物語っている。特に厳重で異質な封印を施された区画が目に入った。
「メインは、コレだな……」とレイニーは心の中で呟いた。
異様な壺に封印の札が貼られ、更に壺を置いてある台にも封印の魔法陣が描かれていた。どれだけ封印を強固にしたかったのか、区画全体に封印の結界まで施されている厳重さだった。
ここまでして厳重に封印をして、何を封印しているのか気になって仕方がない。
「なにかな? なにかなぁ〜? 凶悪な魔物かな? そんなに危険なのかなぁ……」そんなことを呟きながら、不安より好奇心が勝り、軽々と封印された結界を打ち破り、中に入ると、頭の中に禍々しい声が聞こえた。
「この封印を解いてくれれば、貴様の望みを何でも叶えてやるぞ? 金か? 地位か? 可愛い美女か?」
封印をされた者からの甘い誘惑をされたが、俺が興味をそそられるモノがなかった。
「それは興味がないやぁ……」
「……望みはないのか?」驚いた声と焦った声が混ざったで聞き返してきた。