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第9話 フィオナ再び

 今日は、朝から屋外の練習場で兵士に混じり魔法の訓練をしていた。魔法の射撃訓練は一人でも出来るので、訓練場の片隅で実践訓練をしていた。相手は……上級兵士で剣の腕も良く魔法も仕えるという強者だ。主に剣を使い補助的に魔法を放ってくる。


 それに最近は、強者の組んでいる小隊のメンバーも参加してくれるようになっていた。


「小隊長、一人だけ訓練してるなんてずるいですよ! しかも……レイニー様となんて! 出世する気が満々ってバレバレですよー!」いや、俺に気に入られても出世は出来ないだろ……第三王子だしぃ。軍の構成に口出しできるわけ無いじゃん。まぁ、からかって言ってるだけだと思うけどさぁ。


「お前ら参加するなら、ふざけてないで真面目にやれよ! ケガするぞ! ケガをしたら収入が絶たれて嫁や彼女に捨てられるぞ〜」さすが小隊長、今の言葉で皆が真面目になったね。こういう世界は、前世とは違い『労災保険』などは無く、ケガをして使えなくなったら解雇が当たり前の世界だ。英雄級の人物となれば、別だと思うけど……


「チーム戦をしませんか?」ん? チーム戦かぁ……珍しいね。それに……いつもと違う雰囲気で緊張してる? ソワソワしてるし……。


 首をかしげて聞いてみた。「どうしたの?」


「どうしたの?じゃないですよ……誰です? あの……貴族か王族のお嬢様は……先程から、こちらを見ていますけど?」見学席の方を見るとフィーが見学をしていた。あれ? 今日はルナが相手をするって言ってたよな……。こんな所にいて良いのか?それに、軍事関係って秘密なんじゃないの? 友好な王国の王女様でも、関係者意外を入れちゃダメでしょ。


 もしかしたら友好国らしいから許可が出たのかな? 俺には関係ない事かな……俺が気付いたと分かると面倒になりそうだし。関わらずにいよーと♪


「小隊長こそ、周りに気を取られてないで、真面目にお願いしますよ〜♪」帯剣をしていた剣を抜き、構えた。


「わ、ちょ、ちょっと待ってください! チーム分け出来てないですよ! ……それに、それ、真剣ですよね? 木刀に変えてください!!」と突っ込まれた。


 5対5の試合が始まり、新人の俺は初手から3人にマークされた。敵の一人が鋭い斬撃を繰り出し、俺に向かってきた。半歩横に移動し、彼の斬撃を紙一重で避けると、同時に脇腹へ力強い拳を叩き込んだ。その一撃で、相手は気絶し、地面に倒れ込んだ。


 その瞬間を見逃さなかった二人の敵が同時に斬り掛かってきた。俺は跳躍し、空中で一回転して彼らの視界から消え去った。背後に着地すると、相手の隙を突いて迅速に接近し、木刀をトン、トンと頭に軽く叩き込んだ。彼らは驚愕しつつも、負けを認めて退場するしかなかった。


 残りの二人は……4対2の戦いで圧勝していた。うぅ〜ん……やり過ぎたかな。でも……勝てば嬉しい♪


「お前ら……王子様だからと手を抜いていたんじゃないのか? もっと真剣にやったらどうだ!?」審判役だった小隊長が注意をしていた。


「小隊長……レイニー様の実力を知ってるでしょ……。本気で掛かっても当たらないし、5人がかりでもムリですよ……」


「それより……あそこのお嬢様……レイニー様の彼女さんですか? にひひ……可愛いじゃないですか。うぉ……頬を赤くして、こちらを見てますよ!」そんな……バカな……ムスッとした、あのフィーが? ちらっと見るとそっぽを向いていた。うっ……騙された……。


「からかわないでくださいよ〜」と練習を少し続けて、休憩で練習場から出る時にフィーとすれ違った。


「あら……王子様が兵士と練習ですか?」まあ……普通は、剣術の師匠に教わるものらしいけど。第3王子だし、剣の才能がないと判断されていたみたいで……師匠は付けられていなかった。お願いすれば付けてもらえると思うけど……


「うん。楽しいよ〜」と笑顔で答えた。


「そうなのですか。兵士とも仲良さそうにしているのですね」モジモジさせて話してくるし、ムスッとしていない?あれ?まあ、無表情だけど……


「うん。仲良くしてるね。気を使わせちゃってるけど……最近じゃ、普通に話しかけてきてくれるし♪」と言うと無言になったので……巻き込まれるのは勘弁して欲しい。


「……じゃ……またね♪」手を可愛く振り立ち去ろうとすると、スッと俺の服を掴まれた。え……? 捕まった……な、なにこの状況……ねぇ……俺の護衛は?働いてよ……という表情で護衛を見つめるが、目を逸らされた。職務放棄ですか!?


「…………」フィーが、俯いて小声でなにか言ってる??


「ん? な、なに?」と、顔を近づけて聞いた。


「あの……一緒に……いて」……なんで? 正直、嫌だっ! 絶対に……イヤだ! 気まずいし……無言だし、ムスッとするし。


「えっと……なんで?」ド直球で聞いてしまった。


「なんでって……わたしの誘いを断る気なの?」そりゃ……友好国の王女様だけど、俺も王子で同じ立場だよね? 断る権利あるでしょ。あぁ……あからさまに嫌そうに断るのは今後の問題になるか……。


「あ、えっと……剣術の訓練もあるし、魔法の訓練もあるんだよね。忙しくてさぁ……」どうだ、これで穏便に断れたでしょ。うん。


「わたしの……誘いを断るなんて……ひどいっ」あれ? 失敗? ヒドイって言われても、俺の都合も考えて欲しいんですけど。王女様ってワガママだからなぁ……うちのルナちゃんを見習って欲しいよっ。素直でいい子だよ♪


「俺の都合も考えてくれないんだ? 自分の都合を押し付けるのは嫌われるよ?」対等な立場なハズ……だよね?


「……う、うん。そうね、わかったわ。わたしも参加するわ」おいおい……急に、グイグイときたんですけど……? なんで? 興味なさそうだったじゃん。ムスッとしてたじゃん……


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