昼食を大好きなルナと一緒に食べた。やっぱり笑顔の美少女と一緒に楽しく会話しながら食事をすると、楽しくて癒されるね。午後からは、勝手に城を彷徨いながら、城のマップを頭に描き覚えた。
その後、書庫に向かい日課の読書をした。「他種族」という本があったので読んでみた。すると、人間種の他にも多くの種族が存在し、この王国でも昔は共存していたと記録にあった。また、王国の軍でも多くの獣人が活躍していたらしい。さらには、王国を救った英雄も存在したと書かれていた。
他の歴史書にも悪魔や天使の存在が多く記録に残っていた。まあ、悪魔は当然だが、悪さをして混乱を引き起こし、天使は疫病の治療や災害時に現れていたらしい。そして、王都近くの山にダンジョンがあり悪魔が出るとのことでダンジョンを封印し結界を張ったと記述されていた。
ドラゴンの存在なども書かれていて面白く、まるでゲームやアニメの話の中のようでワクワクしてくる。
読書をやめ、気分転換に外に出ると、初めて軍の練習場に出てしまった。
そこで偉そうな者が椅子に座り、指示や文句を言っていた。その言葉には魅力を感じられず、ただ自分のストレスを発散しているように見える。
「お前ら、そんな事も判断できないのか!? やる気あるのか? あぁ!? そんな事はなぁ、臨機応変で自分で考えろ! 何のための訓練なんだ! イチイチ指示を仰ぐな! 聞いてくるな!」
わぁ……だったら、こいつ必要ないじゃん。何のための上官なんだかね〜イヤダイヤダ。ただの職務放棄じゃんかぁー……
魔術師団長が俺のことを少し遠くで見ていて、俺が嫌な顔をしていたらしく、声を掛けてきた。よく合うねぇ……この人。
「レイニー様、よくお会いしますね。嫌そうなお顔をされて、いかがされたのですか?」
「え、あぁ……軍のことに口を出す気はないんですけど……あの方って大丈夫なのかなって思いまして……」偉そうな態度の奴の方を向いて口を開いた。
「あぁ……最近、出世した方ですね。と言っても親の口利きで出世したんですがね」
「そんな感じですよね。実力じゃない気がします……」
「どうして、そう思ったのですか?」
「部下や一般兵にその場で臨機応変に対応しろと言っているんですよ?ありえますか?政治を理解していない、作戦を理解していない者に臨機応変に対応しろと?それが引き金になり戦争に突入することもありますし、関係の悪化も考えられますよね?そんな指示や訓練をしているんですよ」レイニーが、可愛く頬を膨らませて言った。
「……それは……マズイですね。勝手に動けと言ってるんですね……。後で騎士団長に話をしておきます」団長が苦笑いをして返事を返した。しかし、指摘の内容がただの子供の指摘だとは思えないほど的確で、さすがは高度な教育を受けているだけのことはあるが、そこまで考えられるものなのか? とレイニーの洞察力の高さを知った。
「下の者が上にお伺いを立てるのは、常識ですよね。下級兵士の自己判断は危険ですからね」規模が大きくなれば、いわゆる『ほうれんそう(報告、連絡、相談)』が重要になってくると思う。
「レイニー様って、何者なのですか?」
「え、あぁ……見ての通りの子供ですよっ♪ ただ書庫で学んだ知識なんで……報告、連絡、相談は重要ですって覚えましたっ!」ニコッと笑いながら言った。
「えぇ、それは重要ですね、勝手に下級兵士に判断されて動かれては困りますからね。こちらの思惑や作戦もありますしね」
魔術師団長がそう言うと、少し悩んだ感じで改めて口を開いた。レイニーが報告してきた事も重要で問題だが、今はそれよりもレイニー様の魔術師としての才能の方が彼にとって最も重要だった。
あの伝説の魔術師アストラル・ファルコナーの多重魔法を簡単に操っていたのだぞ? ミスリル製の盾を貫通させ、山を吹き飛ばすほどの偉大な魔術師アストラル・ファルコナーを超えるかもしれん。
「あの……これから、訓練に参加してみませんか?」
レイニーの応対がフレンドリーだったので、団長はレイニーに興味を持ち、能力を引き出してあげたいと思い誘っていた。すっかり王子だということを忘れていた。
「え? 無理だよっ。俺、体力ないしぃ……軍の訓練についていけるわけないよぅ〜」
レイニーは誘われてすごく嬉しかったが、可愛く体力がないアピールをした。なぜなら、軍の訓練のイメージが過酷で厳しく、体力づくりがメインだと思っていて、現に目の前で練習場を走らされていたからだ。
体力づくりや厳しい訓練は避けたいが、魔法の訓練には興味があった。そう、「未知なる魔法の探求がしたい」「でも、面倒で疲れる体力づくりはしたくない」と思っていた。
団長はそれを聞いて、「軍人なのに何を言ってるんだ?」と思ったが……思い出した。「このお方は、この王国の王子様だった」ということを。「そうだ、王子様を軍の訓練に誘って、参加させるのはまずい……誘うこともまずいだろう。視察、見学ならば……」と考えた。
魔術師団長のガードナーは、すっかりレイニーの魅力に引き込まれていていた。
「魔法の常識を理解できると思いますがね。参加と言っても見学ですがどうでしょうか?」
団長は残念そうな表情で改めて誘ってきた。このままレイニー様を放っておくと、あまりにも魔法の常識を知らなすぎて危険だし、能力の高さに目をつけられ利用されるかもしれないと考えた。
レイニーは見学なら大歓迎だ、見学といいつつ魔法の練習になったら参加しちゃおうと思っていた。
「うん。見学なら参加しようかなっ。楽しそうだね〜♪」
ガードナーは、レイニー様を訓練場に案内する決意を固めた。彼の態度は一変し、レイニー様に対する敬意と畏敬の念がはっきりと表れていた。その厳格な表情には、決意と忠誠が宿っていた。
「レイニー様、どうぞこちらへ」とガードナーは丁寧に一礼し、先導するように歩き始めた。彼の足取りは力強く、確固たる信念が感じられた。
途中でガードナーは手を振り上げ、指示を出す声が響いた。「警護兵、レイニー様のご案内に加わるように!」
ガードナーは警護兵たちに冷静な視線を送り、「レイニー様の護衛を頼む」と静かに命じた。その言葉に警護兵たちは一斉に敬礼を返し、即座に動き出した。
レイニー様の周囲に警護兵たちが配置され、その歩みはまるで儀式のように整然としていた。彼らの目は鋭く、常に周囲を警戒しながら、王子の安全を守るために全力を尽くしていた。