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第11話

 午後、生徒たちは運動場に集められた。

 朝礼台の上には校長がいて、その下に先生たちがずらりと横1列に並んでいる。

 ギルが口を開いた。


「それでは破壊及び、治癒魔法クラス合同演習を行います。演習場へ行き、二人一組で地図を見ながらゴールを目指してください。私たちはそれをモニターし、採点します。ちなみにゴールの速さも大事ですが、それ以外にもポイント加点がありますので、たとえ順位が低くても最後まで諦めないように」


 そしてギルはこほんと咳払いをする。


「1年生にとっては初めての野外演習です。バディ同士協力してミッションをクリアしてください」

「イエッサー!」


 生徒たちは一斉に心臓を叩いた。

 リタも慌ててそれにならう。


「それではお待ちかね。演習場所の発表をするよ。ドルルルルルル」


 ローランドはボイスドラムを鳴らしてみせる。そして


「ジャーン! ジャングルです!!!!」


 満面の笑顔でそう言った。


「ジャングル?!」

「けっこう遠そう」


 顔を見合わせる生徒たち。


「ふっ、ふっ、ふっ。生徒諸君! それがね、一瞬で行けるんだよ」


 ローランドは再び口を開くと、両手を胸の前で揺らし始めた。

 彼の体の前には何やら黒い玉のようなものが出来上がっている。


「ゲートだ! すごい。初めて見た!」


 一人の生徒が驚きに満ちた表情を浮かべて叫ぶ。


「その通り!」


 ローランドは少しずつ空間を広げている。


「空間と空間をつなげて移動時間を大幅にショートカットする。こんなことまでできるなんて驚きだろう? 好きなだけ私を讃えなさい!」


 ローランドは黒く丸い空間を持ち上げるようにして両手を高く天に向けた。

 巨大な穴が空中に出現し、生徒たちは一斉にその穴へと吸い込まれていく。最後の1人が姿を消すとゲートは縮小しながらローランドの手元に戻り、手のひらの上でパチンと消える。

 ガランとした運動場を前にローランドはうっとりと目を細めた。


「皆、移動したようだね。全く、自分で自分の才能が恐ろしい……」


 酔いしれているローランドの横で、ギルが胃の辺りを押さえている。


「まさかジャングルで演習だなんて。知っていたらもっと武器を持たせたのに。モンスターや魔物の闊歩するジャングルなんて実戦そのものじゃないですか……」


 ローランドはやれやれ、と肩をすくめる。


「ギル先生は心配性だねえ。残念ながらモンスターはめったに人前に出なくなってるんだ。偶然会えるような代物じゃないんだよ」


 そして遠くを見つめながらこう言った。


「笛で呼び出したりしない限り大丈夫さ」


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