なんなの?
……あの男、いったいなんなの⁉
馬鹿なの?
ってか、変態? 変態なの?
もし、もしもだけど、あのままあたしが大人しく従ってたら……絶対に襲われてたよね?
モデルになってほしいって言うからオーケーしたのに、それはあたしが想像するような普通のモデルの仕事なんかじゃなくて、え、えろ……エロ漫画のモデルだなんて……っ!
色んな表情や決めポーズを描くのを練習する為だと思ってたら、いきなり体操座りしろって……しかも正面を向いて、足を開けって、……論外! はっきり言って犯罪だから!
ひょっとして、初めからあたしに目を付けてた……?
赤の門で都合良く助けに入ってくれたのも、あたしの後をつけてたから?
……ち、違うよね。さすがにそれはない……よね。ちょこっと強引だったとはいえ、あたしが勝手に室内に入ったわけだし。
昨日、赤の門はランカー以外の探索を禁止してたし、あいつは自分のことをランク圏外だって言ってたし、魔石と手柄を譲ってくれたし、あたしに見返りを要求するようなことはしなかったし……まあ、赤の門に潜ってたことを内緒にしてほしいみたいなことは言われたけど。あとあと、モデルになってほしいとも……って、それは今日の話だからノーカウントよね。
「はぁ、もう、何を考えてんのか全く分かんないんだけど……」
溜息しか出てこない。
今日の感じからすると、あいつって……童貞を拗らせた変態で間違いないよね。あのまま放っておくと、将来的に性犯罪に手を染めそうな気がするし。だってそうでしょ、エロ漫画描いてるんだし。
だけど、その点にさえ目を瞑れば、昨日はあたしを助けてくれたし、何もないところからいきなり拳銃を出して見せたし、ランカー並みの強さだってことは疑いようのない事実なのよね。
あの魔物、正直言って勝てる気が全くしなかった。
先に潜ったランカーの人達も、そしてあたしも、あの魔物の気配を感じた時にすぐ引き返すべきだった。
でも、それをしなかったのはランカー故の油断……。
あたしは生きて帰ることができない。今日、ここで死ぬ運命なんだって思ってた。でもそんな時、あいつが助けに来てくれた。それどころか、あの魔物を一人で倒しちゃった。
「……カッコ、よかったなぁ」
ぽつりと漏れる言葉は、嘘じゃない。
本当にあいつはカッコよかった。あれで変態じゃなければもっといいんだけど。
でも、そうね。だからこそ決めた。
あいつ以外に、この人だって思うような探索者はいない。
だったらもう、後には引けないし腹を括るしかない。
「なんて言われようとも、絶対に組んでやるんだから」
予定通り、明日もあいつのアパートに会いに押し掛けよう。
そしてもう一度お願いしてみよう。
ああでもその前に、今度はちょっとやそっとのことじゃ驚かないように、気を引き締めておく必要があるかな。
「……よし、決めた!」
追加で一つ、予定を増やしちゃおう。
あいつに会う前に、行くところができた。
これで、あいつがあたしとクランを組んでくれるといいんだけど、どうなるかなぁ……。