「王女アリシア・ホワイトとして命じます、いいですかハサウェイ、
決して、決して橋を下ろしてはいけませんよ、援軍が到着するまで、
何があろうと、橋を上げたままにするのです」
半ば脅すような形で、私は若い兵に言うことを聞かせた
私はもう王女ではなく、ご主人様の奴隷なのに
「は、はい」
「でなければ反乱軍がこの国を再び戦乱に置き、隣国たちが攻め入り、
この国は亡ぶと思いなさい、何があっても、援軍が到着するまで、
この橋を下ろしてはいけません
いいですね?」
「は、はい、承知いたしました姫様」
申し訳ないなあと思いつつ、若い兵が従ってくれたことに私は感謝した
私は腰にホルダーを巻き、長剣、そして、スモールソードをさした
スモールソードは、若い兵が、私に勧めたものだ
軽いから、と言う理由で
・・・今は、少しでも体力と魔力を温存しておきたい
私はお礼を言って、そのスモールソードを受け取った
「では橋を上げて下さい」
「はい姫様」
ごめんなさいと心で思いつつ、私は上がっていく橋を見上げた
私は靴と、ソックスを脱ぐ、兵に気づかれないように
半分ほど橋が上がったところで、私は駆けあがった
「姫様!?」
「橋を止めないで!!国を亡ぼす気!?」
「はははは、はいいい!?」
申し訳ないと思いつつも私は橋を駆けあがり、もう片方の橋へと移った
そして、地面に着地
「姫様!!」
「いい!?絶対に、絶対に橋を下ろさないで!いいわね!」
「で、ですが・・・」
「国を滅ぼしたいんですか!?これは命令です!!」
「わ、わかりましたあ!!」
ほんとごめんなさいハサウェイさん
でもありがとう
私は、指輪と剣を確かめる
どっちも大丈夫だ
よし、やれる、いける
そう思った
その途端に、震えがきた
怖い
でも死ぬのが怖いんじゃない
ご主人様に、ごめんなさい、としか言えなかった
あれが、最後になるかもしれないこと
それが怖い
ただそれだけが怖い
・・・しっかりしろ、アリシア・ホワイト・・・いいえ、ただの奴隷のアリシア
奴隷になっても、あの方の、ご主人様の剣であることは変わらないでしょう?
なら、やるべきことをやるのよ
もう騎士ではないけれど
でもあの方の剣であることに変わりはないのだから
さあ、気持ちを切り替えて
ご主人様のことを思うのは、すべてが終わってからにしましょう
すべてが、終わってからに
すべてが・・・
不意に、逃げたい、と言う気持ちが湧き上がる
ご主人様のもとに逃げたい
今すぐ逃げたい
ご主人様のそばに、いますぐ
・・・
・・・
しっかりしろ、アリシア
あの男を止めることができるのは、勝てるのは、私だけなんだから
ふと、思い出して私はスカートに、膝下に剣を入れる
そして、横に裂いていく
恥ずかしいよほんとに
でもこれで戦ってる最中に捕まる心配は減った
それからスモールソードを手にする
初めはこれで戦う
体力と魔力を温存する
あの男が、出てくるまで、これでしのぐ
小雨が降りだした
それから少しして、地響きとともに、反乱軍が現れた