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第23話 友達 6

「アリシア様!いけません!陛下が決定されたことです!」

「離して!離してシズさん!ご主人様!ご主人様待って、待ってください、殺さないで!

その人たちを殺さないで!!」

「アリシア様!」

ご主人様は剣を手にかけるのをやめ、こちらを見ている

そして、こっちに歩いてきた


「アリシア」

「ご主人様、どうか、どうかお許しください、その人たちをどうかお許しください」

「ダメだ、気分が悪いなら城の中に入って休んでいなさい、シズ」

「はい、陛下」

「アリシアを」

「やめて!!お願いですご主人様、その人たちを殺さないで!!」

「・・・アリシア、私の決定に逆らうのか?」


私は、思いだす

この方が本当の意味で王であることを

私はこの方の所有物であることを

私が口出しする権利は何一つないことを

すべてはこの方がお決めになることを


「・・・城の中に入って」

「・・・嫌です、ご主人様、おやめになってください、お願いです、その人たちは、その人たちは・・・

私の、私の古い友人なのです

戦友なのです

今度のことは魔が差したのです

シズさんのおかげで、私は転んだ時の擦り傷しか負いませんでした

私は大丈夫です

私は大丈夫ですから」

「・・・お前は、俺のなんだ?アリシア」

「・・・」

「お前は、俺のなんだアリシア?言ってみろ」

「私は、あなたの奴隷です、ご主人様」

「そうだ、お前は俺の奴隷だ、いつから奴隷が主人の決定に口を出していいようになった?」

「・・・」

「アリシア、俺を怒らせるな」

「・・・」

「シズ、アリシアを」

「おやめくださいご主人様、お願いです、お願いだから殺さないで、友達なんです、私の友達なんです

一緒に戦った、この国を守った、戦友なんです、私の、戦友なんです」

「お前を襲った男たちだぞ!!!いい加減にしろアリシア!!!

魔力も何にもない無力な女であるお前を犯そうとした奴らだぞ!!!」

「・・・」

ご主人様の声に、本気で怒った声に、私はただ震えるしかなかった

「お前が許しても俺は許さん・・・アリシア、お前に触れていい男は、俺だけだ・・・俺を怒らせるな」

「・・・」

「・・・アリシア?おい・・・おい・・・泣くな」

「・・・殺さないで・・・殺さないで」

「アリシア・・・」

「殺さないで・・・お願い・・・」

「ダメだ・・・俺は許せない・・・」

「お願いだから、殺さないで、私のために、手を汚さないで、お願い、お願いだから

あなたの手を汚さないで、お願いです、お願いです・・・ご主人様」

「・・・」

涙で前が見えない

でも

すっと、ご主人様の匂いが私を包んだ

ご主人様が私を抱きしめてくれた


「わかった・・・わかったから、泣くな、アリシア、泣くな・・・」


「ご主人様・・・」


私を抱きしめたまま、ご主人様が皆の方に向いた


「この者たちの処罰は、身分はく奪の上、王都追放とする

永久に王都に入ることは許さん

そして今回は、我が奴隷アリシアの願いを聞いての特例であり

もし今後似たようなことがあれば、次はどれだけアリシアが私に願おうと私はその者たちを切って捨てる

・・・これでいいか?アリシア」


「はい、ご主人様、ありがとうございます」


「涙で顔がぐしゃぐしゃだぞ、アリシア、今日はもう休め」


「今日はお茶を入れられなくて、申し訳ありませんでした」


「・・・」


ご主人様はもう一度私を抱きしめ、それから来た時みたいにまた私を抱き上げた


私は、恥ずかしいけれど、ご主人様が重いと感じるだろうから、その首に手をまわそうとした

でも、涙でご主人様のお顔を汚してしまわないかと、少し思う


「どうした?疲れたかアリシア」


「はい・・・そうみたいです」


ご主人様が私のほほにキスをした


恥ずかしいけれど、もっといろいろ話をしないといけない気がする


でも、疲れてる、私は、今、すごく


「陛下、では私はこれで」

シズさんがご主人様に一礼する

「ああ、ご苦労だった」

「シズさん・・・」

「シズはお前の大先輩だよアリシア、お前の護衛を依頼しておいたんだ」

「私の、護衛」

「そうだ、お前を守ってもらうために、腕利きのシズに復帰してもらった」

「・・・嘘だったんですね、家政婦って言うのは」

いけない

今の言葉は、きっと、責めるように聞こえたはず

疲れていて思考が追い付かない

「・・・申し訳ありません、アリシア様」

涙が溢れる

悲しくて

「私と友達になりたいって言うのも、嘘だったんですか?」

聞くのが怖い

そう思うより先に、聞いてしまった

シズさんの答えが怖い

でも、目をそらせない

私はシズさんを見ている

シズさんは、震えたように見えた

「・・・嘘のわけないよ・・・アリシアちゃん」

「シズさん・・・」

「友達になりたいよ、私はアリシアちゃんの友達になりたいよ、アリシアちゃん」

シズさんが、泣きながら笑いながら、私に言う

ああ、やっぱりシズさんはシズさんだ

私の知っているシズさんだ

「私はアリシアちゃんの友達になりたいよ、アリシアちゃん」

聞けて良かった、嬉しい

「そう、良かった・・・ありがとうシズさん」

私はほっとした

シズさんの答えが、本当にうれしかった

「アリシア、今日はもう休むんだ、疲れたろう、いいな?」

「はい、ご主人様」

「アリシアちゃん、またね」

そう言ってくれる声が聞こえた

私は疲れて疲れて、もう声もちゃんと出なかった

その代わり、何度もうなずいてみせた

シズさんも、うなずいて、笑ってくれるのが見えた

そして私は、ご主人様の腕の中で、私を抱きかかえたまま歩くご主人様の腕の中で、いつしか眠ってしまった

安心して、眠った

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