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第22話 友達 5

人が、数名、四人、後ろ手に縛られて、地面に膝をついている

騎士の制服を着ている


「あ・・・」


私を襲った男たちだった

体が震えた


「アリシア、大丈夫だ、こいつらはお前にもう何もできない

・・・怖かったら俺にもっと体を預けていろ

・・・そうだ、それでいい・・・アリシア」


私は言われた通りにした

ご主人様にもっと体を預けたら、本当に、震えが止まった


「アリシア、こいつらが、お前を襲ったやつらで間違いないか?」

「・・・」

そうか、私にこの人たちが私を襲った人たちか確認させるためにご主人様は私をここに連れてきたのか

「アリシア?どうだ?こいつらで間違ってないか?」

「・・・はい、この人たちです、ご主人様」

「わかった・・・立てるか?アリシア」

「あ、はい、立てます、立てます」

「今から降ろす」

「は、はい」

ご主人様はゆっくりと私を地面に下ろした

時間にして十何分かだろけれど、もっと長く抱っこされていた気がする

皆が私たちを見ていた

思い出しながら、私は地面に足をついた

でも、ご主人様は、私を離さない

「・・・」

「ご主人様?」

「・・・アリシア」

「え」

ご主人様が、私のほほに、キスした

顔が真っ赤になるのを私は感じた

「ここで待っていなさい、アリシア」

「・・・は、はい」

ご主人様は、私から離れて、捕られられている男たちの方へと歩いていった

「アリシア様」

「え・・・シズさん?」

シズさんが、騎士の制服に身を包んで、私のすぐ横にいた

「え、え、シズさんも、騎士だったんですか?」

「ええ、もう十年も前に、引退してますけどね」

そう言って、シズさんが優しく笑った

そして、私の肩をそっと、抱いた

「大丈夫ですか?アリシア様」

「大丈夫です・・・それより」

それより、その言葉遣いをやめてほしい

そう思った、でも言えない

言っても聞いてくれる気がしない

「それより?」

「いえ、なんでもないです」

「・・・気持ちが悪くなったら、すぐ私におっしゃってください、アリシア様」

「・・・はい」

これから何が行われるのか、なんだか嫌な予感がした


「皆よく集まってくれた」

ご主人様が皆に話しかける

「皆の前にこうして捕えられているこの男たちは、アリシアに乱暴をしようとした者たちだ」

皆がざわつく

一斉に私を見る

私は目を閉じる

「大丈夫です、アリシア様、私が支えております」

「シズさん・・・」


「幸いにも、未遂に終わったが、それでも、王である私の所有物であるアリシアに乱暴しようとしたことに変わりはない

アリシアは、私のものだ

私の所有物だ

アリシアに触れていい男は、この世でただ一人、私だけだ

王である、この私だけだ

アリシアは奴隷だが、彼女を奴隷として扱っていいのは主である私だけだ

私以外の者は彼女が元王族であることを重々承知して、ふさわしい態度で接してほしい

これは王命だ

もし従わぬものがいたら、切って捨てる

今これから先、肝に銘じてほしい」


皆が一斉に礼をする

私に向けて

私はめまいがする

こんなこと私は望んでいない

私が、私が望むのは・・・


私はご主人様を見つめる

すっと通った背筋で私よりはるかに背が高い

その服の下には何年もずっと鍛えてきた体を隠し

涼し気なまなざしで、私を見て、優しく微笑む私の主、ご主人様

私はもうとっくに、完全に、心の中でさえ、『ご主人様』としか呼べなくなっている


私はただ、この方のおそばにいたいだけ

私の望みは、この方のおそばにずっといることだけ

他には何もいらないのに

私は奴隷のままでいいのに


「それで、私の所有物に乱暴をしようとしたこの者たちについて、これより皆の前で処刑をしようと思う

・・・裁判は必要ない

私がこの手で切って捨てる」


「え・・・」

私はめまいがした

「アリシア様?」

シズさんが私を支えてくれる

「今、ご主人様は、『処刑する』って、言いました?」

「・・・はい、アリシア様、その通りです」

私は、私を襲った男たちを見た

これからあの人たちをご主人様が殺す

男たちから、人々が離れていく

ご主人様が、剣に手をかけるのが見える


「ご主人様!!」


私は駆けだした

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