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第20話 友達 3

本当はわかっていた


私が一番よく、わかっていた



でもそれを彼らから言われることが、こんなに悲しなんて、知らなかった


知りたくなかった



「ヒーラーに傷をいやしてもらって、それから、お風呂入ろ?アリシアちゃん」

「いいです、水でやります」

「そんなわけにはいかないよ、アリシアちゃん、お風呂、入ろ?

・・・あいつら触れたところ、洗いたいでしょ?」

「水で、いいです」

「なんでそんなこと」

「お湯がもったいないです、私は、奴隷だから」

「・・・」

「シズさん?どうかしまし・・」

シズさんが、私を抱きしめた

「バカだね」

私より10センチ以上背の高い彼女が、私を抱きしめて言った

「バカだね、バカな子だね、この子は・・・」

震えている

私のために、泣いている

「いいかいアリシアちゃん、ちょっとこっち来て」

そう言って私の手を引いて、王宮の壁まで私たちは歩いた

「ここで待ってて、すぐ来るから、いい?どこにも行っちゃダメだよ、いいアリシアちゃん?」

「はい、わかりました」

「すぐ戻ってくるからね」

そう言って、シズさんはどこかへ消えた

「痛い」

一人になって私は、腕や足の擦りむいたところを痛いと感じ始めた

痛みを感じる余裕さえさっきはなかったんだと気づく

でも、これぐらいんで済んでよかった

おぞましいことをされなくて良かった

私はそう思った


しばらくそうしていると

足音が聞こえてきた

シズさん、じゃない足音

なんだか、怒ってるような足音


これは

私のよく知っている、足音


「アリシア」

「ご主人様」


背の高いご主人様だけど、今はいつもよりもっと背が高く感じる

息を切らしている

走ってきたの?


「アリシア」


ご主人様が私を抱きしめた


「アリシア、アリシア、アリシア」


ご主人様が私の名前を呼ぶ、何度も、何度も



気づいたら私は泣いていた

子どもみたいに泣いていた

悲鳴のように泣いていた


ご主人様はそんな私をじっと抱きしめてくれた


私がしばらく泣いた後、ご主人様が


「さあ来い、アリシア」


そう言って私を抱き上げた


「ご主人様、歩けます、私、歩けます」

「うるさい!」


体が硬直する

「あ・・・違う、違うんだアリシア、お前を怒っているんじゃない

泣くな、泣かないでくれ、頼むから、黙って俺に抱かれていてくれ

頼む、アリシア」

頼むなんて奴隷に言っちゃいけないのに

そう思いながら私は

「はい、ご主人様」

そう答えた



それから、私はご主人様に抱き上げられたまま王宮に戻り

ヒーラーから傷をいやしてもらい

王族専用のお風呂に入れられ

体を洗われ

それから、ドレスを着せられた

断ろうとする私にヒーラーもメイドもみな「王命です」と言って、私は従うしかなか

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