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第23話

 キンシャザの町の外をしばらく歩いていると夜になった。

 俺はドラゴン狩りを開始する。

 早速姿を現したのは二体の大きなドラゴンだった。

 ハピネスキングは二体のドラゴンめがけて火の玉を放った。

 しかしドラゴンも炎を吐いてこれを相殺する。

 次にドラゴンに殴りかかる。が、硬いうろこにはじかれてしまう。

「口の中を狙えっ」

『承知した』

 ハピネスキングはドラゴンの口を掴むと押し広げて手を中に突き刺した。

『グエェ!』

 ドラゴンが悲痛な鳴き声を上げる。

「攻撃が効いてるぞっ」

 だがもう一体のドラゴンがハピネスキングに突進してはね飛ばした。

「大丈夫かっ?」

 ハピネスキングに駆け寄る。

『さすがドラゴン。しかし吾輩、いいことを思いついたぞ』

 言うとハピネスドラゴンは瞬間移動をして消えた。

 そして次の瞬間、

『グエェー!』

 ドラゴンが叫んだかと思うと、ドラゴンの体内から肉を突き破って出てきた。

『知恵の勝利だ、主よ』

 ハピネスキングがドラゴンの血を浴びた状態で口にする。

 それを見たドラゴンが逃げようと後ろを向いた。

「おい、逃げるぞ」

『承知。瞬間移動!』

 同じ方法で二体のドラゴンを撃破したハピネスキング。

 その後もドラゴンを狩りまくり、途中一体のドラゴンも仲間にした。

 そして、

【ハピネスキング レベル23とドラゴン レベル10を合成しますか? はい いいえ】

 の文字に俺は迷いなく【はい】を選ぶ。

 二体のモンスターの体が光りくっついて合わさる。

 目も開けられないほどの強い光が辺りを照らして……。

 光がおさまるとそこには、頑強そうなうろこを纏った巨大なドラゴンの姿があった。


【次元竜 ランクP 特技 ヒール みね打ち 瞬間移動 火の玉】

「でっけ~……」

 俺は巨竜を見上げながらつぶやく。

【覚えられる特技は四つまでです。異次元砲を覚えさせたい場合はどれか一つ消してください】

「なあ、次元竜。異次元砲ってどんな特技だ?」

『フシュー……我にもわからん』

「え? お前の技なのにわからないのか?」

『フシュー……そんなに知りたいのなら我に覚えさせてみろ。貴様に放ってやる』

「いやいや、それはやめてくれよ」

 俺のモンスターは体だけじゃなく態度もでかくなってしまったようだ。

「まあ、一応覚えさせておくか……」

 格闘大会が開かれるのは明日。

 俺は次元竜とともに夜通しドラゴンを狩り続けレベル上げに没頭した。

そして――

 朝を迎えた。

【次元竜 ランクP 特技 異次元砲 みね打ち 瞬間移動 火の玉】

「ふぅ……だいぶレベルも上がったし、もう充分だろ」

『フシュー……まだだ、まだ足りん。もっとレベルを上げるぞ』

「んなこと言ってももう朝だからドラゴンも出てこないし、大会も始まるだろ」

『フシュー……貴様がもっと早く我を顕現させていれば時間に追われることなどなかったのだぞ』

「わかったよ。とにかく町に戻るぞ」

 俺は次元竜を連れてキンシャザの町へと戻る。

 こんなでかいモンスターを連れてて町に入れるのかと心配だったが、それは杞憂に終わった。

 町は大小様々なモンスターを引き連れた魔物使いであふれかえっていた。

 中には俺の次元竜よりも、さらに一回り大きなモンスターを連れた魔物使いもいた。

「わあっ、クウカイさん。そのモンスターどうしたんですかっ?」

 遠くにエイミたちの姿が見えた。

 エイミが駆け寄ってくる。

「次元竜だ。合成して出来たんだよ」

「次元竜さんですか~。大きいですね~」

『フシュー……貴様ら人間が小さいだけだ』

 次元竜の低い声が降ってきた。

「何そいつ、なんか偉そうね」

「クウカイ、今までずっとレベル上げしていたのか?」

 シルキーとマジョルカもやってくる。

「ああ、まあな」

 俺は途中で切り上げて宿屋に向かいたかったが次元竜が許してくれなかったのだ。

「クウカイさん、格闘大会の予選がもう間もなく始まるみたいですよ」

「そうなのか」

「お前はそのモンスターで参加するんだろ?」

「もちろんだ」

 俺のモンスターは次元竜一体だけだからな。

「マジョルカはどのモンスターにするか決めたのか?」

「ああ。ハイドラゴンを参加させることにしたよ」

 マジョルカがハイドラゴンを見上げながら体に触れた。

「私は昨日言っていた通りアップルにしました。頑張ろうね、アップル」

『グルル!』

 エイミとエイミのモンスターのアップルエイプがハイタッチをする。

「じゃああたしは適当に町の中をぶらついてるわ」

「なんだシルキー、予選を見ていかないのか?」

 マジョルカの問いに、

「レベルの低い戦いを見させられても退屈なだけだわ。それにマジョルカなら絶対本選に出れるでしょ」

 シルキーが手をひらひらさせながら返した。

「エイミも頑張んなさいよ。クウカイは本選に出たら応援してやるわっ」

 そう言い残しシルキーは大会に参加しないマジョルカとエイミのモンスターを引き連れて人ごみの中へと消えていく。

『フシュー……生意気な小娘だ』

 次元竜がシルキーの消えた先を眺めながら低い声でつぶやいた。

 それに関しては俺も激しく同意するね。

「さあ、予選会場に行くか!」

 手を叩きマジョルカが声を上げる。

「はいっ」

「おう」

 俺たちはそれぞれの参加モンスターたちを連れ予選会場へと向かった。


 予選会場である広い体育館のような場所には、多くの魔物使いとモンスターが集まっていた。

「おいあれ、カティアスじゃないか……?」

「本当だ! あの人今年も出るのかよ」

「オレ棄権しようかな……」

 カティアス?

 どこかで聞いたことのある名前だ。

 すると赤褐色の肌をした整った顔立ちの女性が近付いてきた。

「やあ、きみたちもいたのか」

「あっ、カティアスさん」

 エイミが応じる。

「エイミ知り合いか?」

「何言ってるんですか、クウカイさん。カティアスさんですよ、銀の旅団の副リーダーの」

「あ、そうか……」

 こいつがカティアスか。

 俺は直接は会わなかったから知らなかったがこんなきれいな顔をしていたんだな。

「先日は世話になったな。お前のおかげでわたしたちは晴れて自由の身だ」

「こっちこそキリートを捕まえてくれてありがとう」

 握手を交わすマジョルカとカティアス。

「なあ、あんたも魔物使いなのか?」

「そうだよ。私のモンスターはスライムさ」

 言うとカティアスの足元にいたスライムがぴょんと跳び上がって一回転した。

 挨拶のつもりだろうか。

「可愛いです~」

「スライムを出場させるのか?」

「うん。でもそこらのスライムとは比較にならないくらい私のスライムは強いんだよ。試してみるかい?」

「い、いや。遠慮する……」

 俺はスライムにはトラウマがあるからあまり近付きたくない。

 するとそこへ、

「ただいまより予選を開始したいと思います!」

 マイクを持った男性が声を発した。

「本選出場枠は四つですのでこれから四つのグループに分かれてもらいバトルロイヤル方式で一斉に戦ってもらいます! 最後までリングの上に残っていたモンスターが本選出場となります!」

「本選に出られるのは四体だけか」

「私たち同じグループにならないといいですね」

「そうだね。どうせなら決勝で当たりたいしね」

 マジョルカとエイミとカティアスが口にする。

「じゃあ私は行くよ。スライムのおやつの時間なんだ」

「ああ、またな」

 手を振り去っていくカティアス。

「ちなみにモンスターを殺してしまった場合は即失格です、いいですね! では早速予選一組目から行きます! 受付番号一番から四十九番までの奇数番号の方のモンスターたちはリングに上がってください!」

「おっ、わたしだ」

 男性の声にマジョルカが反応した。

「なんだ受付番号って?」

「受付でエントリーした順番に番号札をもらったんですよ、ほら」

 エイミが五十と書かれた紙の札を見せてくる。

「わたしは四十九番だ」

 とマジョルカも札を俺に見せた。

「俺は? そんなのもらってないけど」

 というかそもそも受付すらしていないのだが俺の受付は済んでいるのだろうか。

 すると、

「あー、悪い悪い。クウカイの番号札はわたしが預かっていたんだ」

 そう言ってマジョルカは胸の谷間からごそごそと紙を取り出す。

「ほら、これがお前の番号札だ」

「お、おう」

 くしゃくしゃになった紙を受け取るとそこには五十一と書かれていた。

 俺は五十一番ってことか……。

「わたしの出番みたいだからな、行ってくる」

「頑張ってください、マジョルカさん。ハイドラゴンさん」

「ああ」

 マジョルカはハイドラゴンを連れてリングへと向かっていった。

「奇数と偶数で分かれるなら私たち別のグループになりそうですね。よかった~」

 エイミが胸を押さえる。

 確かに上手くばらけそうだな。

 エイミのモンスターもそうだが、マジョルカのモンスターとは出来れば当たりたくないからな。

 男性がマイクを構えた。

「では予選第一試合、始めっ!」

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