デロトリノの町で道行く人に、右腕を骨折していて左足が義足の男と訊ねると三人目でライドンの居場所が判明した。
ライドンは町はずれにあるクオーツ王の別荘にいるということだった。
僕はその足でクオーツ王の別荘とやらに向かう。
二十分ほど歩くと、町はずれに一軒の立派なログハウスが立っていた。
庭には大きなプールもある。
「ここかな……」
僕は玄関ドアの前に立ちドアをノックする。
すると中から「誰だっ?」と声が返ってきた。
僕はその声を聞いて胸が高鳴る。
返事をしないでいると、少ししてから内側からドアが開いた。
そして顔を覗かせたのは他の誰でもないライドンだった。
「っ!? ク、クズっ!?」
ライドンは僕と目が合うと目を見開き驚きの声を発する。
「久しぶりだねライドン」
「お、お前、なんでここがっ……!」
「クオーツ王が死ぬ前に教えてくれたよ」
松葉杖をつきながらじりじりと部屋の中に後退していくライドンを追うように、僕も部屋の中へと入っていく。
「お、お前、クオーツ王を殺したのかっ! 何考えてやがるんだっ……!」
「それとアンジーも殺した。だからもうライドンを助けに来る人間は一人もいないよ」
「なっ……」
ライドンは愕然とした顔を僕に見せた。
僕はライドンの姿を眺める。
ライドンは右腕に包帯を巻いてそれを首からかけている。
さらに左足は義足になっていて、松葉杖を使いなんとか立っているような状態だった。
「痛々しい姿だねライドン」
「お前がやったんだろうが、クズがっ!」
「もとはと言えばライドンが裏切ったのが悪いんだろ」
「裏切っただとっ、調子に乗るなっ! お前ははなっからオレらの仲間なんかじゃねぇっ! 誰がお前みたいなクズなんかと仲間になるかよっ!」
ライドンは唾を飛ばしながら吐き捨てるように言う。
「ライドン、今の状況わかってる?」
「わかってらあっ! お前はオレを殺しに来たんだろ、だったらさっさとやりやがれっ! のろまのクズがっ!」
部屋の中央まできたところで、ライドンは松葉杖を僕に投げつけてきた。
どうやら命乞いをする気はないようだ。
「もしかして僕を怒らせたいの? それで苦しまないように一瞬で殺してもらおうとか思ってない?」
僕はライドンに近付いていきライドンの目をじっと見る。
「無駄だよ。僕は至って冷静だからね」
「っ……」
「この別荘が町から離れていてよかったよ。おかげで何をしてもライドンの悲鳴は誰にも届かない」
それだけ言うと僕は手始めにライドンの骨折している右手を掴んだ。
「ぐあぁっ!」とライドンが声を上げる。
「ちょっとライドン、僕はまだ何もしてないよ」
「は、放せクズっ……!」
「これからライドンの指を一本一本折っていくから。じゃあまずは小指から」
「や、やめろぉぉぅああがあぁぁっ……!!」
「次は薬指だよ」
「はぁっ、はぁっ、も、もうやめてくれぇぐぎぃぃぃっ……!!」
ライドンは歯を食いしばって痛みに耐える。
「じゃあ中指行こうか」
右手の指の骨をすべて折ったところでライドンは痛みのあまり気を失ってしまった。
床にはライドンの吐瀉物と排泄物で汚い水たまりが出来上がっていた。
「次は左手だ。気絶してても痛みで起きるだろ」
僕は倒れているライドンの左手を持ち上げると、またも小指から折っていく。
ゴキッ。
「ぅああああぁぁぁーっ……!」
「起きたみたいだね。よかったよかった」
「うあああーっ、クズがぁーっ!! ぜってぇ許さねぇっ、お前だけはぜってぇに許さねぇからなあああっ……!!」
「それは僕のセリフだってば。さあ、次は薬指だ」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺ぐああぁぁぁぁぁっ……!!」
僕は二時間かけてライドンの両手足の指の骨を合計十五本へし折った。
ライドンは体中から体液をまき散らし、涙も枯れはて、ボロ雑巾のように床に横たわっている。
時折りぴくぴくと動いているのでまだ死んではいない。
「ライドン、起きてる?」
「……」
「ねぇ、ライドン?」
「……こ、殺せ……」
絞り出すように声を出す。
「え? 何? よく聞こえなかった」
「……こ、殺してくれ……た、頼むっ……」
「駄目だね。まだ僕にしたことを謝ってもらってないし」
「……そ、それなら謝る……あ、謝るから、もうだあああぁぁぁっ……!?」
僕は部屋にあった剣でライドンの右腕を斬り落とした。
「左足はもうないからあとは左腕と右足か」
「ぁぁぁぁっ……て、てめぇぇぇ……ク、クズがああああああぁぁぁぁぁっ……!」
僕はライドンの四肢を切断した。
さらにライドンの両目を別荘にあったスプーンでえぐった。
気付くとライドンは死んでいた。
どのタイミングで死んだかは定かではない。
僕はライドンへの報復行為中の記憶が頭にもやがかかったようにあいまいだったのだ。
体についたライドンの体液を風呂場で洗い流すと、僕はまるで自分の家のようにベッドに横になった。
そしてライドンの死体の横で一時間ほど仮眠をとった僕は、深夜のうちに別荘に火を放ち、デロトリノの町を後にしたのだった。