「ヴァーレン家は現当主様で22代目……さ、さすがね……えーと、奥方が正式には少なくとも5人……。そのうちお1人の方は既に亡くなっていて、その子どもたちも不審な死を次々と遂げている……? え、ええぇぇぇぇ……?」
作戦会議から帰宅した後、私はサラサに言われた『孫子』に習い、早速と婚約破棄に向けてヴァーレン家について情報収集をしていた。
しかして収集した情報のどれもがいわゆるゴシップ紙程度のものであるにも関わらず、簡単には流せないきな臭い内容ばかりで私は1人で変な声をあげる。
あまりに不穏な内容にドン引きしつつ、急ぎ集めたヴァーレン家に関する過去紙面をガサゴソと漁り、必死に記事に目を走らせていく。
「……現当主の有力候補者としての後継は2人に注目…………第二夫人の次男であるロデオ・ヴァーレン様……と、第五夫人の長男であるルドガー・ヴァーレン様がその頭角を…………。な、なんか今更だけど、婚約者様のルドガー・ヴァーレン様は只者ではなかったのね……」
誰に言うでもなく1人でうわぁと顔を引きつらせながら呟いて、私は続きを読み進める。
「……第一夫人の御子息と御息女は既に亡くなっていて……し、しかも、へ、変死……っ!? こわっ! ……ええと、あと…………第二夫人の長男は……で、溺死……っ……!? ……次男が当主候補のロデオ様で、三男は……ゆ、行方不明……!? はぁ!? ……長女は婚姻……。第三夫人の長男であるクラウン・ヴァーレン様は気が触れ…………え、えぇ……? ……第四夫人の御子息と御息女は誘拐の後に…………ざ、惨殺……!? しかも人間業とは思えない有り様……って…………な、何これ……!!」
あまりにもおどろおどろしい内容の数々に読む間も突っ込みを抑えられず、最終的には顔を引き攣らせながら記事を机に打ちつけて私は叫んだ。
ひたすらに事件に遭遇する数奇な運命の探偵や、殺人鬼ですらも真っ青になりそうな内容に、私は冷静ではいられない。
「由緒正しい黒魔術の家系って言うより、呪われた一族じゃない……っ!」
ひいぃっ! と両の頬に手を当てて、私は1人自室で髪を振り乱して頭を振るも、ピタリとその動きを止める。
「ーーちょっと待って、整理しましょう。紙とペン……っ!」
急ぎ机から取り出した紙とペンで家系図を簡単に書いていく。
「ーー……何これ……整理すると、第一夫人と第四夫人の子どもは全滅……。それに、第二夫人も候補のロデオ様と嫁いだ長女様以外は死亡か行方不明。第三夫人の長男は気が狂っていて…………家に残っていて、まともに無事と言えるのは……候補のロデオ様と、婚約者のルドガー様だけ? ……こんなの、当主候補が2人のどっちかになるしかないじゃない……」
次々と消されていく家系図を見下ろし、私は何とも言えない薄気味悪さを覚える。
「あ、そう言えば亡くなった奥方の方は誰だったのかしらーー……」
ガサゴソと紙面を掻き分ける私の目に飛び込んできた情報に、手が止まる。
「……亡くなったのは、第五夫人……ルドガー・ヴァーレン様のお母様……」
しばし手元の家系図を黙って見下ろし、私は静かに第五夫人に線を引く。
「ーー何なの、この一族。普通じゃない……っ」
ーー人を呪わば穴二つーー
先日に聞いたヴァーレン様の言葉を思い出し、私は腕を抱えて身震いする。
「ーー……何?
自身で書いた家系図から、思わず私は一歩後退る。自分の置かれつつある立場を再確認して、耳の横で鼓動が激しく脈打ち、変な汗が出るのを感じた。
「……何が、
サァーっと血の気が引き、世界がぐらぐらと揺れているような錯覚に陥るほどの動揺に、私は目を覆ってその場に座り込んだーー……。