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第117話

婚姻の儀に異議のある者として手を上げていたのはダンの他にミア、スズ、アテナ、エルメス、カルチェだった。


「なんじゃお主たちは!? この婚姻の儀に異議があると申すのか」


「大ありですっ。テスタロッサにふさわしいのはやっぱりボクしかいませんからねっ」

とダンが立ち上がり自分を指差す。


おそるおそる手を上げていたミアも、

「結婚は好きな人同士がするものだと思います!」

と声を上げた。

隣にいたスズも「同じく」と続く。


さらにアテナまでもリンゴを食べながら、

「……わたひもほうおもふ」

つぶやいた。


「お主ら……」

あっけにとられる国王と来賓客たち。


「エルメス、お主まで異議があると申すか?」

ステージ上から国王がエルメスに目線を移す。


「だって王子と結婚したら一生遊んで暮らせるじゃないですか。ね、カズン王子」

俺を見てからかうように微笑むエルメス。

「あっでも妹は本気みたいですけどね~」

「ちょっ、姉さんっ。ち、違いますよカズン王子様。私はカズン王子様のためを思って手を上げただけですからねっ」

焦ったように手をぶんぶん振るカルチェ。


「お主らは揃いも揃って、婚姻の儀をなんだと思うておるのじゃ……」


するとそこまでステージ上で黙って見ていたテスタロッサが口を開いた。

「いいですわ。みなさんがそこまで言うのならこの際です、白黒はっきりさせましょう」


テスタロッサは立ち上がると俺を見下ろした。

「……あたしはあんたとなら結婚してもいいと思ってるわ。それであんたはどうなの?」

「え……」


想定の範囲外の言葉が投げかけられた。


こいついきなり何を言い出すんだ。


会場中のみんなの注目が俺に集まる。


なんかわからんが汗が急にあふれ出てきた。


ん……よく見るとテスタロッサの手は震えていた。


……これは正直に答えるしかないか。


「お、俺は――」

ウオォォォォーン!!

ウオォォォォーン!!

突然けたたましい音の警報が鳴り響いた。


「な、なにごとじゃ!?」


すると一人の兵士が大広間に駆け込んできて、

「敵襲ですっ! ヤコクとサマルタリアの連合軍が攻め入ってきましたっ!!」

「なんじゃと!?」


外を見ると大勢の敵兵がずらっと隊をなしている。

城をぐるりと取り囲んでいるようだ。


その中から一人が歩み出てメガホンを口元に当てた。


「イリタールの国王よ、そしてエスタナ王とセルピコ王。そこにいるのはわかっている。降伏して出て来い。そうすれば国民に危害は加えないと約束しよう」


大音量で声が届いてくる。


「さもなければ……皆殺しだ」


「くそっ。あやつら今日という日を狙ってきおったな」

「私たちが集まるこの日を待っていたということですかっ」

「我ら同盟国を潰すために連合軍を結成するとは……」

国王たちが歯をかみしめる。


「俺が行ってきます。みなさんはここにいてください」

俺は大広間の窓から飛び出そうと立ち上がった。


すると、

「ボクも行くよ。カズン王子にばっかりいい格好はさせられないからね」

「私も行きます。兵士長として当然の責務ですから。ほら姉さんも」

「も~、面倒くさいわね。国王様、特別手当てくださいよ」

「拙者もお供します」

ダン、カルチェ、エルメスにスズも行動に移った。


「「あ……」」

心配そうにみつめるミアとテスタロッサに「お前たちはここにいてアテナをみててくれ」と言い残し俺は大広間を飛び出た。

四人も俺の後に続いて窓から飛び出る。


敵勢の前に駆けつけるとメガホンを持った兵士が、

「これはこれは、カズン王子じゃないか。バカ王子に用はないんだ、国王を出せっ!」

声を張り上げた。

四人が俺に追いつく。


「俺たちを倒したら考えてやるよ」

「ふっ、笑わせてくれるじゃないか。たった五人で何が出来るっていうんだ、あぁ? こっちは一万の軍勢だぞこらっ」

「やってみればわかるさ」

「バカ王子めっ!」

メガホンを持った兵士が斬りかかってきた。


俺はとっさに兵士の懐に潜り込みデコピンをくらわせてやった。

メガホンと剣を手放し、後ろに吹っ飛ぶ兵士。


それを見た敵軍勢が息をのむ。


「……な、何やってんだき、貴様ら……。さっさと攻め込めっ!」

俺に吹っ飛ばされた兵士がよろめきながら号令を出した。


「うおおぉぉー!」


大声を上げて攻め込んでくるヤコク・サマルタリア連合軍。


「いくぞみんな。気合い入れろっ」

「「「「おー!」」」」



それから五対一万の戦いは一時間もかからずに終結した。

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