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第111話

俺とエルメスはミザリーを謁見の間に連れていった。

国王の前にひざまずく俺とエルメスとミザリー。


「もしやその娘が宮廷魔術師候補の魔術師かの?」

「そうです、国王」

俺は返事をした。


「よく顔を見せてくれんかのう。髪でよう見えんわい」

国王が顔を覗き込もうとするが、

「は、恥ずかしいです」

ミザリーはふるふると首を横に振る。


「極度の恥ずかしがり屋だそうです。でも魔術の腕は私が保証しますので」

とエルメスが答える。


「そうか。エルメスがそう言うのなら問題ないじゃろう。では当分の間は宮廷魔術師見習いとしてうちで働いてくれ。よいなミザリーよ」

「は、はい。が、頑張ります」

「では下がってよいぞ」

「失礼します」

「し、失礼します」

エルメスとミザリーが立ち上がる。


俺も立ち上がろうとして、

「お主にはまだ用があるからそのままで」

と制される。


一礼をしてエルメスとミザリーが謁見の間を出ていく。


「それでなんですか俺に用って?」

「お主にはエスタナ王に届け物をしてもらいたいのじゃ」

届け物?

「それって俺じゃないとだめですか?」

俺じゃなくて兵士に頼むとか出来ないのかな。


「だめというわけではないがこれもいい機会じゃ。さっきのミザリーも連れていって宮廷魔術師としてふさわしいかどうかお主の目で判断してほしいのじゃ。ついでにテスタロッサちゃんにも会ってくるとよい」

「はぁ……でその届け物というのは?」

「それはじゃな……」



「わ、わたしが王子様のお、お供ですか!?」

ミザリーが口を押さえて驚く。

俺は廊下の先を歩いていたエルメスとミザリーに合流していた。


「ああ。エスタナまでの短い旅だがな」

「な、なんでわたしなんですか?」

「国王直々のご指名だよ」

宮廷魔術師としてふさわしいかどうかを見極めるうんぬんは話さない方がいいだろうな。


俺はポケットの中の封書を取り出す。

「こいつをエスタナ王に届けてほしいそうだ」

「カズン王子、それなんですか?」

エルメスが訊く。


「さあな。中身は俺も知らない」

「ふ~ん、そうですか」

口をとがらせる。


「いや、本当に俺も知らないから」

「別に疑ってませんよ~」

そっぽを向くエルメス。

中身は本当に知らないんだけどなぁ。



俺の部屋に戻るとカルバンインがアテナに魔術書を読み聞かせていた。

「ここがこうなるから回復の効果があるっすよ」

「……すごい」

「でしょでしょ。あっお帰りなさいっす」

「……おかえり」

カルバンインとアテナは魔術書から視線を俺たちの方に向けた。


「国王様はミザリーが宮廷魔術師になること認めてくれたっすか?」

「とりあえず見習いってことでね」

エルメスが返す。


「そうっすか。よかったっすねミザリー」

「う、うん。あ、ありがとう、お姉ちゃん」


「じゃあミザリー。準備をしたらすぐ出発するぞ」

「で、では一度家に帰ってし、支度をしてきますので」


「準備ってなんすか?」

カルバンインがエルメスに訊く。

「二人でエスタナに行くよう国王様に言われたらしいのよ」

「へ~、早速宮廷魔術師としての初仕事っすか。頑張るっすよミザリー」

ガッツポーズをしてみせるカルバンイン。

「う、うん」


「ミザリー、城門の前で待ってるからな」

「は、はい」


部屋を出ていくミザリーに続いてカルバンインも「じゃあわたしも帰るっすね」と手を振り部屋をあとにした。


「なんか個性的な姉妹ですよね」

開けっぱなしのドアを見ながらエルメスがぽつりとこぼす。

お前のところも負けてないけどな。

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