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第101話

俺の部屋に戻った俺たちはベッドに腰を下ろした。


「あ~疲れた~」

ほとんど何もしていないくせにエルメスが口に出す。

「……面白かった」

アテナは俺に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でつぶやいた。


「エルメスはああいうことを俺たちの知らないとこでやってたのか」

「そうですよ。宮廷魔術師も大変なんですからね」

エルメスがこぼす。


「……ていうかなんか臭いませんか?」

「俺もそう言おうと思ってたところだ」

「わっ、ちょっと服の臭い嗅いでください。下水道の臭いがしますよっ」

エルメスが自分の服の袖に鼻を近づけ、苦虫を嚙み潰したような顔をした。

俺も嗅いでみる。たしかに臭い。


下水道を通ってきた俺たちの服は汚水の臭いを吸着してしまっていたようだ。

道理ですれ違うメイドたちに変な顔されていたはずだ。


「ちょっとお風呂借りていいですか? 借りますねっ」

俺の返事を待たずにエルメスは風呂場に入っていった。

「あーついでにアテナも入れてやってくれないか?」

「いいですよー」

風呂場から声が返ってきた。


「アテナ、お前も風呂入って来い。やっぱりちょっと臭うから」

「……わかった」

自分の着替えをもって風呂場に行く。


「俺も風呂入りに行くか……」

俺の部屋には風呂場があるが俺はいつも王子専用の大浴場みたいな風呂場を使っているから自分の部屋の風呂場はアテナの専用にしていた。


俺が着替えをそろえて部屋を出ようとした時、


「カズン王子まだいますかー!」

風呂場からエルメスが叫ぶ。


「ああ、いるけど。どうかしたか?」

「悪いんですけど私の着替え、部屋から持ってきてもらえますかー!」

「俺がお前の着替えを?」

俺は一応この国の王子なんだぞ。その俺に小間使いみたいなことをさせるつもりか?

大体エルメスの着替えなんてどこにあるかわからないし。


「カルチェに訊いてくれればわかりますから。お願いしますー!」

それっきりエルメスの声はしなくなった。

俺が何を言ってもうんともすんとも返ってこない。


「はぁ……」

俺だって風呂入りたいのに……。


俺は仕方なくカルチェを探しに部屋を出た。

ほどなくして俺はカルチェをみつけた。

カルチェは城の中庭で若い兵士たちを指導しているところだった。


「おーい、カルチェ。ちょっといいか?」

手招きすると、それに気付いたカルチェが走って向かってくる。

「なんでしょうか、カズン王子様」

はきはきとした声で話す。

息一つ切らしてはいない。


「いきなりで悪いんだけどエルメスが今俺の部屋の風呂に入ってて着替えを持ってきてほしいって言われてるんだ」

「え、姉さんがカズン王子様のお部屋のお風呂に入っているんですか?」

不思議そうな顔をする。


「いやまあ、話すと長いんだけど……ほら俺ちょっと臭うだろ?」

「? いえ、よくわかりませんが」

カルチェはくんくんと俺の胸元辺りを嗅ぐが首を横に振った。

結構な臭いのはずなのだがカルチェは平気みたいだ。


「もしかしたら私は汗だくの兵士たちと四六時中一緒にいるので臭いに鈍感になってしまったのかもしれません」

「まあそれはいいとして、とにかくエルメスと魔獣退治に下水道に行って汚れたから着替えが必要なんだ。俺は場所がわからないからカルチェ頼む」

「そういうことならわかりました。ちょっと待っててください、パネーナにあとを任せてきますから」

そう言って兵士たちの方へ駆けていく。


俺は自分の服を嗅いでみた。

やっぱり臭うぞ。

「カズン王子様、では行きましょうか」

「ああ」

戻ってきたカルチェを連れ俺はエルメスの部屋へと赴いた。

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