「どうしたんですか国王? 改まって」
この世界に来て半年が過ぎたある日の朝、俺は国王の部屋へと呼び出された。
「しかもテスタロッサたちまで」
部屋に入るとそこにはテスタロッサとエルメスとミアもいた。
テスタロッサとミアは椅子に座っていて国王とエルメスは立っていた。
「なんじゃ、アテナちゃんも連れてきおったのか」
俺の後ろに引っ付いていたアテナを見て国王が言う。
「だめなら部屋に帰らせますけど……」
アテナは俺の服のすそを掴んでいた。
「いや、アテナちゃんならいいじゃろ。まあとりあえず座ってくれ」
国王に促され俺とアテナは空いていたソファに腰を下ろした。
「王子よ。この世界の生活にはもう慣れたかのう」
国王は歩きながら部屋のドアに鍵をかける。
「ええ、まあ」
「それはなによりじゃ」
国王は全員の顔を見回し、
「さて、みなに集まってもらったのは他でもない。王子のことについてじゃ」
語りだした。
「ここにいる王子が偽物の王子じゃということはもうみな知っての通りじゃな。そして本物の王子は城を出ていってしまったということも」
「いい大人のくせに家出なんて恥ずかしいったらないわ。まあ、あいつがいなくなってせいせいしたけどね」
テスタロッサが肩をすくめ、
「ミアもそう思うでしょ」
「え? わ、わたしは別にそんなことは……」
急に話を振られて困惑するミア。
「あいつ付きのメイドとしては本音は言えないわよね。ごめんなさいね」
「い、いえ……」
「すみませんお義父様、お話の腰を折ってしまって。続けてください」
「おほん……それでエルメスに王子そっくりのお主をこの世界に召喚してもらったわけじゃが」
国王が俺に視線を移す。
「みなに、特にお主に言っておかねばならぬことがあるのじゃ」
「なんですか?」
いつになく神妙な顔の国王はなんだか気味が悪い。
俺が訊き返すと国王はうつむいてふぅと一息つきそれからエルメスを見た。
エルメスが国王に代わって口を開く。
「みなさん……本物のカズン王子はすでに亡くなっています」