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第56話

「多分最期の叫び声を聞いて親鳥が仕返しにやってきたって感じじゃないかしら」

エルメスが考察する。

「そんな悠長なこと……私たちも加勢しましょうカズン王子様」

カルチェが俺を見る。


「いや、お前たちはここにいてくれ。あいつらは俺一人でなんとかするから」



超巨大な怪鳥二匹は圧倒的な強さで忍びたちを全員いとも簡単になぎ倒した。

そして倒れた忍びを踏みつける。


「ぐああぁぁー!」


骨がきしむ音がする。

もう一匹が倒れているスズを踏みつけようとして足を上げた。

踏まれる、その瞬間――。


スズの姿が消える。


俺が目にもとまらぬ速さでスズを救出したからだ。


超巨大な怪鳥二匹はスズの姿を見失ってい辺りを見回す。


俺は抱えていたスズを離れた場所にそっとおろした。


シュッ


俺が突然目の前に現れてびっくりしたような反応をする二匹の超巨大な怪鳥。


一匹がくちばしで襲いかかってきた。

俺はそれを両手で掴んだ。

「うおぉぉー」

俺は力を込める。

指がくちばしを突き破りそのまま押しつぶした。


「クエェェー!」


くちばしの先半分が粉々に砕け散った。


「お前ら魔獣だろ。俺の言葉がわかるか? わかるならもう帰れ。痛み分けだ」


どういう経緯で里の忍びと戦っていたのかはわからないが、これ以上どちらの血も流したくない。


「クエェェー!」


しかしくちばしを失った超巨大な怪鳥は攻撃の手を止めない。

翼を羽ばたかせる。

暴風が吹き荒れる。

里の木で出来た家が吹き飛ばされていく。


「……仕方ないな」


俺は超巨大な怪鳥の腹の下に潜り込み全力で拳を突き上げた。


「グエエェェェー!!」


ぶしゅーと俺に血の雨が降った。


俺の拳は腹を突き破っていた。


ふらふらとよろけた後盛大な音とともに倒れる超巨大な怪鳥。


それを見たもう一匹は恐れをなしたのか飛び去って行った。


「ふぅ……」

俺は血に染まった全身を見る。

「これはまたひどいな、全く」

早く風呂にでも入らないとな。



第一声「なんだ貴様たちは?」と呼ばれたのが嘘のように意外にも俺たちは里の忍びたちに歓迎された。

てっきり怪鳥を追い払ったからだと思いきやそうではなく、スズによると強い者は無条件で歓迎してもらえるのだそうだ。


「なんと! お前さんがイリタールの王子とな」

ここはスズのおばあちゃんの家。

スズはおばあちゃんと二人暮らしだったんだそうだ。

俺はスズのおばあちゃんに風呂に入れてもらった。


「ええ、まあ」

「イリタールの王子といえば腰抜けで有名なはずじゃったがのう」

「はははっ。そうですね」

そうなのか。


「それでスズや、今はこの方に仕えとるんか?」

「はい。とてもよくしてもらっています」

「いい笑顔じゃて。王子さんやこれからも孫娘のことよろしゅうな」

両の手で握手をされた。


「こらっ。おまんらお客人に失礼じゃろうが!」

スズのおばあちゃんが窓からこっちを覗いていた忍びたちを追い払った。

「すまんこて、堪忍してな。強いお客人は滅多に来んからな」

続けて、

「せっかくじゃ今日は泊まっていきゃあええ」

「いいの? おばあちゃん」

「ええ、ええ」


俺たちはスズのおばあちゃんの言葉に甘えることにした。

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