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第55話

「なんだって。スズの故郷からのろしが上がってるのか?」

「はい。きっと拙者の故郷で何かよからぬことがあったに違いないです!」

「だったらスズちゃん早く行きましょうよ」

とカルチェが言う。


「ちょっと待ってよ。スズの故郷って忍びの隠れ里なんでしょ。私たちが行ってもいいわけ?」

「そう言って姉さんは本当は行くのが面倒くさいってだけじゃないでしょうね」

「うっ……そ、そんなわけないでしょ」

エルメスが図星を指されたような顔をする。


「よほどのことがない限りのろしを上げるなんて真似、忍びの隠れ里は普通しません。拙者一人でも向かいます」

「おいスズ、俺たちももちろん行くぞ」

「はい私も」

「プププー」

「……私も行くわよ」

「みなさん……」


俺たちはあと一歩のところで村に入るのをやめ、スズを先頭にスズの故郷である忍びの隠れ里を目指した。


「あ~宿屋が遠くなっていくぅ……」

村を離れる際、後ろからエルメスの悲痛な声が聞こえてきた。



走ること十分。

忍びの隠れ里に着いた。

コの字型に周りを断崖絶壁に囲まれていて自然の要塞のようなつくりになっていた。


やはりのろしは里の中から上げられているようだ。

とその時――。


「クエェェー!」


里の中から何者かの鳴き声が聞こえてきた。


スズが里の中に駆けていく。

俺たちもあとに続いた。


キイィィン、キイィィンと刀がぶつかり合うような音が里に響いている。


あれはっ!


里の中央では十数人の忍びと巨大な怪鳥が交戦していた。


目つきとくちばしが鋭い巨大な怪鳥の足元には数人の忍びが倒れている。

忍びたちは全方位から刀で攻撃を仕掛けるが、巨大な怪鳥はくちばしと翼と尾でそれらをはじき返している。


「クエェェー!」


巨大な怪鳥は翼を大きく羽ばたかせた。


強風が忍びたちを襲う。


そして身動きできなくなったところをくちばしで追撃する。


「ぐあっ」


忍びが一人、また一人と地面に倒れていった。


「みなのものっ。助太刀いたすっ!」

スズが加勢しに入る。


「スズ!? スズじゃないか!」

「帰ってきたのか!」

「話はあとです。まずはこいつを倒してから」

「ああ、そうだな」


スズも加わり連携のとれた忍びの攻撃が巨大な怪鳥に降り注ぐ。


しかし、手裏剣もクナイも決定的なダメージは与えられない。

そこに最後の一撃をスズが首めがけて斬りこんだ。


ブシュッと血が吹き出る。

「やった!」


「クエェェー!!」


巨大な怪鳥は首にダメージを受け暴れまわった。

がそれもここまで。

最期は断末魔の叫びとともに地面に倒れこんだ。


「ふう、助かったぜスズ」

「よく帰ってきてくれたな」

「まあお前がいなくてもなんとかなったけどな」


里の忍びたちがスズを激励する。

すると、一人の忍びが俺たちに気付いた。


「なんだ貴様たちは?」

「あ、あのう彼らは拙者の――」


「クエェェー!」

「クエェェー!」


さっきの巨大な怪鳥の倍近い大きさの怪鳥が二匹空から現れた。

「な、なんだと!?」

「うそだろっ」

「くそったれ!」

忍びたちは絶望の表情を浮かべた。

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