「武道大会はラファグリポスを探す旅に出る者の選別みたいなものじゃった」
と国王が言う。
は?
「じゃあ願い事うんぬんは?」
「まるっきり嘘だったわけじゃないぞい。万が一ラファグリポスを見つけ出したら願いは王子の好きにしてよいからのう。ほっほ」
ラファグリポスなんて信じてないんじゃなかったのか、じじい。
武道大会はエルメスの発案だったな。だから自分は参加しなかったのか、あいつ。
「ちなみに拒否権は?」
「いつもの通りないわい」
平然と答える国王。
まあこれもわかりきっていたことだ。
俺が偽物の王子だということを盾にしてゆすりに近いことを言ってくる。
「旅の仲間は武道大会の本選出場者から選ぶとよいじゃろ……あ~じゃがダンはエスタナの人間じゃから無理じゃぞ」
全て国王とエルメスの手のひらの上だったわけだ。
「……わかりました、旅には行きます。でも国王、一つだけ条件があります」
「なんじゃ、言ってみよ」
「国王様! なんで私まで行かなくちゃいけないんですかっ! 話が違うじゃないですかっ!」
衛兵に腕をとられもがくエルメス。
「すまん、エルメス。この通りじゃ」
国王が頭を下げる。
「よう、エルメス。一緒に石板探し頑張ろうな」
「あっカズン王子の仕業ですねこれっ! やってくれましたねバカ王子っ! ちょっと痛いから放しなさいってば!」
エルメスは悪態をつく。
「姉さん、ここは謁見の間よ。静かにして、恥ずかしい」
カルチェがエルメスを注意する。
「カズンどの、拙者も旅のお供に入れてくださり恐悦至極でございます」
スズが俺の右隣で見上げてくる。
「ああ。それより薬ありがとうな。おかげで完治したよ」
「もったいないお言葉です」
「カズン王子様、私にも声をかけていただいてありがとうございます」
とカルチェが俺の左隣で話しかけてくる。
「ああ、こんな夜遅く悪いが付き合ってもらうぞ」
「心配しないでください。城のことはパネーナに任せてありますので大丈夫です」
「ちょっと、私を無視するんじゃないわよっ!」
エルメスが衛兵を引きずりながら前に出た。
「国王様、考え直してください! 私は行きたくありません! カルチェとスズがいれば充分でしょう!」
「本当にすまんな、エルメスや。お主が同行することが王子の出した条件なんじゃ」
国王が目を閉じ後ろを向いた。
「やっぱり! バカ王子~!」
エルメスが振り向き俺をキッと睨む。
「ではさっそく出発してくれ」
国王が後ろを向きながら言った。
「はい」
と俺。
「はっ」
とスズ。
「行ってまいります」
とカルチェ。
エルメスはというと顔をぶんぶん横に振りながら、
「私は行きたくないです~!」
と城中に響くような叫び声を上げた。