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第32話

俺が自分の部屋に戻ると、


「カズン様、カルチェ様との剣のお稽古はもう終わったんですか?」


とミアが部屋のカーテンを開けながら訊いてきた。俺が残しておいた書き置きを見たようだ。


「ああ」

「どうでしたか?」

「そうだな、カルチェのおかげでもっと強くなれた気がするよ」

「わあ、それはすごいですね」

ミアが手をたたいて喜ぶ。


「あの、カズン様……」

ミアがメイド服のポケットから手に収まるサイズの四角い箱を取り出した。

「これよかったらどうぞ。お見舞いのお礼です」

「おお、ありがとう……開けていいか?」

「はい」


俺は箱を開けた。

中には綿の上に四つ葉のクローバーがそっと乗せられていた。

「これはわたしのおばあちゃんから聞いた話で――」

「四つ葉のクローバーかぁ」

こっちの世界でも幸運のお守りなのかな。

「え、カズン様知ってるんですか?」

「ああ、知ってるけど。おかしいか?」


「い、いえ別に……」

怪訝そうな顔をするミア。

どうしたんだろう。


「あ、いらなかったら捨ててくださいね」

「捨てるなんてとんでもない。大事にするよ」



筋トレをしていると時間が過ぎるのがあっという間だな。

すぐに昼食の時間になった。


ミアが部屋にやってくる。

「今日の昼食はいつもとは趣向を変えてラム肉にしました。カズン様ラム肉お好きでしたよね」

俺の目の前に昼食を運んでくれた。


ラム肉か。

鶏肉の方が体作りにはいいんだけどまあ、たまにはラム肉も悪くはないかな。

「ああ、ありがとう。じゃあいただきます」

俺はラム肉の料理に舌鼓を打った。



俺が食べ終わったころ合いを見計らってミアが食器を下げに来た。

「カズン様、完食されたんですね」

「ああ、美味しかったよ」


するとミアがうつむく。


「……カズン様、ラム肉嫌いでしたよね」


ミアが顔を上げて俺をみつめる。


「カズン様、いえ、あなたは誰ですか?」

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