さらにしばらく歩くと喫茶店があった。
「俺この店に入るけどカルチェは?」
「私にはおかまいなく。普段のカズン王子様の様子を見たいので」
コーヒーを頼んで席について待っているとまたも視線を感じた。
店の外を見るとカルチェが俺をじいーっと観察している。
はぁ、やれやれ。今日一日中ずっとこれか。
いっそ俺が重力の大きい異世界から来たんだって言ってやろうかな。
すると窓の外が騒がしくなる。
俺はあらためて見るとカルチェがチンピラ二人に絡まれていた。
「あいつら、まだあんなことやっているのか」
どこかで見たことある二人だと思ったら俺とミアが前に絡まれた坊主頭とモヒカン頭のチンピラ二人組だった。
坊主頭のチンピラがカルチェの腕を掴んでいる。
カルチェは怒っているようだ。
「あ~あ、知らないぞ~」
カルチェが何か言っている。
するとモヒカン頭のチンピラが激昂してカルチェに襲いかかった。
その後は言うまでもない。
カルチェがチンピラ二人をあっという間に制圧した。
これであいつらも少しは懲りるだろう。
ズズズ……。
俺はコーヒーを飲み干すと店を出た。
「行くぞ」
「はい」
それからは適当に歩き、ウィンドウショッピングをしてから城に戻った。
自分の部屋に着くとミアが昼食の用意をし終えていた。
「おかえりなさい、カズン様。久しぶりの城下町はどうでしたか?」
「あのチンピラ二人組がいたよ」
「えっ、また絡まれたんですか?」
「カルチェがのしてた」
俺は親指で後ろを指差す。
「あ、カルチェ様。カルチェ様も一緒だったんですか」
「ええ。今日一日同行する許可をもらったから」
「カルチェ、昼食はどうするんだ?」
「兵士用の携帯食がありますから」
と言ってポケットから長方形のチョコバーのようなものを取り出して食べ始めた。
用意のいいこった。
俺は昼食を済ますと背筋を鍛え始めた。
しばらく見ていたカルチェも鍛えだす。
「じゃあ失礼しますね」
「ああ、ありがとう」
食べ終わった食器をミアがテーブルごと廊下に運び出してくれる。
「なぁカルチェ、せっかくの休日をこんなことに使ってもったいなくないのか?」
「もったいなくなどありません。非常に有意義な時間です」
「お前がそう言うならいいんだけどさ……」
カルチェは俺がもといた世界なら大学生か新社会人かってとこだろう。
俺が言うのもなんだけど趣味とかないのかね。
一時間ほど筋トレした後、
「俺風呂行くから」
「承知しました」
俺は風呂場に向かった。
「おいー、どこまでついてくるんだよ」
「今日一日はどこまでもついて参ります」
脱衣所の中までついてきたぞ。
俺は後ろを向いて見えないように服を脱いだ。
今も見ているんだろうな……まったく。
俺はそっと後ろを盗み見た。
すると、
「っ!? な、何お前まで服脱いでるんだよっ!!」
「お風呂に入られるのですよね」
下着姿で平然と答えるカルチェ。
さらにもう一枚脱ごうとしたので俺は急いで風呂場に入りドアを閉めた。
「カズン王子様、どうされたのですか?」
それはこっちのセリフだ。
「男の前で服を脱ぐなんてどうしちゃったんだよ!? 恥ずかしくないのかっ!?」
「だってカズン王子様は女性には興味ないんですよね」
あ……そうだった。エルメスのせいでカルチェには俺は男が好きだと勘違いされているんだった。
誤解を解くのをすっかり忘れていた。
「興味あるって! 俺男好きじゃないからっ、それ全部誤解だからっ! エルメスの嘘だからっ!」
「……そんな……嘘……きゃああぁぁぁー!!!」
カルチェの悲鳴が城内に響き渡った。