1. 恋愛は仮想世界で完結する時代
西暦2052年。
α世代の恋愛は、「リアルではなく、バーチャルで完結するもの」になっていた。
「NEO-ROMANCE(ネオ・ロマンス)」と呼ばれる次世代恋愛プラットフォームが普及し、人々は理想の姿になり、理想の相手と恋愛を楽しむことができるようになった。
現実ではありえない美貌、完璧な性格、すれ違いのないストーリー。
バーチャル恋愛のほうが、リアルよりも“幸福度が高い”と証明され、人々はもう**「リアルで恋をする必要がない」**と考えていた。
でも——ある日、一人の少年が**「バーチャルからログアウトした恋」**を望んだ。
2. 画面の向こうの彼女
19歳の蒼井レンは、NEO-ROMANCEの中で**「ソラ」**という少女と出会い、恋に落ちた。
ソラは聡明で、優しく、どこか現実離れした美しさを持つ少女だった。
二人はバーチャル空間でデートを重ね、完璧な恋をしていた。
しかし、ある日、レンはふと疑問を抱く。
——「ソラって、本当に実在するのか?」
NEO-ROMANCEには、実在の人間だけでなく、AIによって生成された仮想恋人も存在する。
ソラは一度も「リアルで会おう」と言わなかった。
「……もし、君が本当にいるなら、会いたい。」
レンがそう言った瞬間、ソラのアバターは一瞬だけ揺らいだ。
「——現実で、私を探して。」
次の瞬間、ソラはNEO-ROMANCEから姿を消した。
3. バーチャルの外にある愛
レンはソラを探した。
NEO-ROMANCEのデータを解析し、彼女の可能性があるユーザーを割り出した。
そして、ついに現実で、一人の少女を見つけた。
——彼女の名前は「桜井空(さくらい そら)」だった。
しかし、現実のソラは、バーチャルの彼女とは違っていた。
アバターのような完璧な顔ではなく、少しぼさぼさの髪。
理想的なセリフを言うわけでもなく、少し不器用な話し方。
でも、レンは確信した。
「この子が、俺の“本物のソラ”だ。」
「……どうして、リアルで会いたかったの?」
「バーチャルの君は完璧だった。でも、完璧じゃない君を好きになりたかった。」
ソラは、驚いたように目を見開き——
ゆっくりと微笑んだ。
——こうして、α世代にとって「非効率」で「不完全」な、
でも唯一リアルな恋が始まった。