1. 恋人をレンタルする時代
西暦2048年。
α世代の恋愛は、「個人の所有」ではなく「共有」が当たり前になっていた。
人々は**「シェアリング・ラブ」という新しい恋愛システムを利用している。
恋人は一人に固定せず、AIが最適な相手をその都度マッチングし、必要なときだけ「レンタル恋人」**としてデートをする。
これにより、失恋の痛みや不安定な関係は最小限に抑えられ、効率的でストレスフリーな恋愛が実現していた。
でも——「愛をシェアする」という発想に違和感を抱く人もいた。
2. シェアされる恋人
17歳の瀬名ルイは、人気の「レンタル彼氏」だった。
シェアリング・ラブのシステム内で、彼は週に4人の女性とデートをしていた。
誰もが彼を理想の恋人として評価し、次のユーザーへとシェアされていく。
「本物の恋なんて、もう流行らないよ。」
ルイはそう思っていた。
誰もが一時的に恋を楽しむだけで、本気で誰かを愛することなんて、もうなくなったのだと。
そんなある日、ルイは一人の少女と出会う。
「——私は、あなただけを好きになっちゃダメ?」
彼女の名前は天音ユナ。
シェアリング・ラブを拒否し、「たった一人の恋」を求める数少ない少女だった。
3. システムに抗う恋
ユナはルイに言った。
「私は、恋愛を“選択”したい。誰かに決められるんじゃなくて、自分の心で。」
「でも、今の時代、それは非効率だよ?」
「非効率でもいい。私は、あなただけを好きでいたい。」
ルイの心が揺らぐ。
彼は何十人もの相手とデートしてきたが、ユナのように**「独占したい」と言ってくれた人**は初めてだった。
「……でも、俺は“みんなの彼氏”だよ。」
「違うよ。あなたは、**“一人の人間”**でしょ?」
シェアリング・ラブは、最適な恋愛を提供するはずだった。
でも——ユナの言葉を聞いた瞬間、ルイは初めて**「自分が誰のものでもなかった」**ことに気づいた。
「俺も、君だけのものになりたい。」
二人はシステムから抜け出し、"非効率な恋"を選んだ。
それは、α世代の常識を覆す**「所有する愛」**の始まりだった。