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バグった運命

1. 禁じられたエラー

西暦2042年。

恋愛は「エラーのないシステム」となり、人々は恋に落ちる前に**「LOVETECH(ラブテック)」**と呼ばれる恋愛アルゴリズムを通すのが常識だった。


LOVETECHは、遺伝子・趣味・性格・価値観・フェロモンまで解析し、100%の相性保証を出せる。

だから、人々はもう**「好きになるかどうか」ではなく、「相性が100%の人と出会うだけ」**になっていた。


だが、その「完璧なシステム」の中で、唯一のバグが発生した。

それが、**高槻レン(27歳・Z世代)と、茉白(21歳・α世代)**の二人だった。


2. 0%の恋

ある日、レンのLOVETECHに異常が発生した。

——相性診断結果:「ERROR」


「……は?」

そんなはずはない。これまでどんな相手とも数値が出ていたのに、突然の「エラー」。

彼は試しに、ランダムな100人と再診断してみた。


99人は正常に相性数値が出た。

だが、**たった一人、茉白だけが「ERROR」**だった。


一方、茉白の端末にも異変が起きていた。

——相性診断結果:「0.00%」


「相性ゼロ……?」

そんなことはありえない。たとえどんな相手でも、最低限の相性(約30%)は出るはずだった。

**0%の相性は、理論上「お互いの存在を拒絶するレベル」**でしか発生しない。


にもかかわらず、レンと茉白は——


お互いを目で追ってしまう。

近くにいると心臓が跳ねる。

会うたびに、話す時間が長くなっていく。


「……なんで0%の相手に、惹かれてるんだ?」


3. バグの真相

二人は、この異常な相性を調べるためにLOVETECHの開発元である「アムール社」に潜入することにした。


そこで彼らが知った事実。

——LOVETECHには、政府の裏コードが仕込まれていた。


そのコードは、「不安定な恋愛を未然に防ぐ」というもの。

つまり、相性が悪すぎる二人は強制的に出会わないように設定されていたのだ。


しかし、レンと茉白は「運命をシステムに決められたくない」と、コードを書き換えた。

「たとえ0%でも、俺たちで確かめる。」


システムが制御する恋愛を超え、**"バグった運命"**を選んだ二人。


——「相性ゼロ」のはずなのに、世界で一番惹かれ合っていた。

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