科学技術の進歩により、人の記憶はデータとして保存し、未来へ送ることが可能になった。
リオはある日、古びたデバイスを見つけた。それは、5年前に亡くなった恋人・ナナの記憶データだった。画面に映るのは彼女の懐かしい笑顔。そして、表示されるメッセージ。
「5年後のあなたへ」
リオの心臓が跳ねる。震える手で再生ボタンを押すと、ナナの声が流れ出した。
「リオ、これを見ているということは、私はもういないんだね」
彼女はすべてを悟っていたのかもしれない。あの日、病院のベッドで無理に笑っていたナナの姿が脳裏をよぎる。
「あなたの未来が幸せであるようにと願っています。でも……あなたは今、どんな気持ちでいるの?」
リオは答えられなかった。ただ、胸の奥が締めつけられる。
「もし、まだ悲しみに囚われているのなら……大丈夫。あなたがもう一度恋をできるように願っています」
最後の言葉は、優しさと愛に満ちていた。
リオは涙をこぼしながら、静かに画面を閉じる。
「ありがとう、ナナ……」
彼は空を見上げる。ナナの想いを胸に、未来へと進む決意をした。