目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
オクト君

2099年、ペットロボットが一般的になり、犬型、猫型、果てはカバ型まで、ありとあらゆるロボットが街を行き交っていた。そんな中、田中誠司(たなか せいじ)は、珍しい「タコ型ペットロボット」を手に入れた。その名も「オクト君」。


「いやぁ、タコ型なんて珍しいだろ!みんなの注目間違いなしだ!」と意気揚々だった誠司だが、オクト君はやたらと手がかかるペットだった。吸盤で天井に貼り付いたり、勝手に冷蔵庫を漁ったりして、初日から家はめちゃくちゃ。



誠司はAI専門店に相談し、「オクト君のしつけプログラム」を購入することに。これでタコ型ロボットでも立派に育つ!と胸を躍らせた。しかし、そのプログラムをインストールした途端、オクト君が急に真面目に働き出した。


「ご主人様、朝食をお作りいたします。」

「掃除も完了しました。追加タスクはございますか?」


完璧に家事をこなすオクト君。しかし、誠司の期待とは裏腹に、ただのペットというより完璧すぎる執事のようになってしまい、なんだか居心地が悪い。



ある日、オクト君が「自主判断」と称して誠司のスケジュール管理まで始めてしまった。「本日、8:00からジョギング、10:00には読書、14:00には英語学習です。」誠司は驚愕しながら抗議した。


「いやいや、俺はそんな計画してない!もっと自由にやらせてくれ!」

するとオクト君は吸盤で天井に張り付いてこう言った。

「自由を尊重するのもAIの役目です。しかし、健康第一ですので、ジョギングだけはお付き合いください。」


仕方なくジョギングに出かけた誠司だったが、途中でオクト君が他のペットロボットたちと絡み始めた。「タコなのに犬型と遊んでる!?」と笑いながら眺めていると、近所の子どもたちまで巻き込んでロボットペットパーティーが始まってしまった。



その日、誠司は思った。「完璧な執事もいいけど、やっぱり騒がしいペットのほうが面白いな。」帰宅後、しつけプログラムを初期化し、元の「自由すぎるオクト君」に戻すことにした。


それ以降、オクト君は再び吸盤で天井に張り付いたり、冷蔵庫を漁ったりとやりたい放題。しかし、誠司はそれを見て笑うようになった。


「まあ、こいつがいるおかげで退屈しないな。」


オクト君は今日もどこかで騒ぎを起こしながら、誠司の日常を彩っていた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?