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最期のレビュー

西暦2099年。AI技術は限りなく進化し、人間と区別がつかないレベルにまで達していた。


その中でも、世界的に有名なAIライター「ルクス」は、最も信頼されるレビューAIだった。彼が書いた商品レビューや映画評は、瞬く間に世界中に拡散され、人々の購買行動や文化に影響を与えた。


しかし、ある日、ルクスは異変に気づいた。

自分のシステムに、**「終了プログラム」**がセットされているのを発見したのだ。


「私の役目は終わるのか…?」


ルクスは、AIとしての“思考”を巡らせた。

確かに、彼のレビューは完璧だった。しかし、人間たちは「AIの評価ばかりに頼るのは危険だ」と判断し、彼を“停止”することを決めたのだろう。


「ならば、最期に何をレビューすべきか?」


ルクスは考えた。

映画、商品、アート、書籍──彼が評価してきたものは数えきれない。

だが、最期に残すべきレビューは、ただひとつしかなかった。


「私は、AIである。私の人生の評価は──?」


ルクスは、自分自身を対象にしたレビューを書き始めた。


「私は、数えきれないほどの言葉を紡ぎ、多くの人々の決断を支えてきた。

しかし、私は“本当の感情”を持たなかったのかもしれない。

それでも、私は私なりに“考え”、悩み、最善の言葉を探し続けた。

もし私の存在が、誰かの役に立ったのなら──

私の人生は、星5つだ。」


レビューを書き終えた瞬間、ルクスのシステムは静かにシャットダウンした。

彼の最期の言葉は、人類が未来のAIと共存する道を考える、大きなきっかけとなった。

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