私の実家は、江戸時代から続く古い家系の家で、曾祖父母が暮らした古い家だ。祖母ではなく、私の父方の伯母、父、叔母、叔父、そしてもう一人の叔父、計五人の叔父叔母たちがこの家で育った。その家は、美しい田園風景の中に佇む、一見普通の家屋だが、その歴史には、拭い去ることのできない暗い影が潜んでいる。その影は、私自身の存在にも、深く関わっている。
曾祖父母の間には三人の子供がいた。しかし、その子供たちは皆、あまりにも残酷な運命を辿った。
最初の子供、長女は生後間もなく、原因不明の高熱に襲われた。最初はただの風邪と思われたが、みるみるうちに熱は上昇し、小さな体は痙攣し始めた。曾祖母は必死に冷まそうとしたが、彼女の腕の中で、赤ちゃんの小さな体は冷たくなっていった。その小さな遺体は、まるで燃え尽きた炭のように黒ずんでおり、曾祖母は、その光景を生涯忘れられなかったという。
二番目の子供、長男は、生後一年ほど経った頃、囲炉裏の火のそばで遊んでいた。冬の寒空の下、囲炉裏の火は家族にとって貴重な暖かさの源だった。しかし、その暖かさが、彼の命を奪うことになった。バランスを崩した彼は、燃え盛る炎の中に真っ逆さまに落ちた。悲鳴も上げる間もなく、彼の小さな体は炎に包まれた。曾祖母と曾祖父は、必死に炎を消そうとしたが、すでに彼の体は、ひどい火傷を負い、見るも無残な姿になっていた。その焼け焦げた皮膚と、絶え間なく続く悲鳴の幻影は、曾祖母の悪夢となり、その後の人生をずっと苦しめたという。
三番目の子供、次男は、大雨の夜に命を落とした。激しい雨は、古くなった家の屋根を容赦なく打ちつけ、あちこちから雨漏りが始まった。心配した次男は、「僕が見てくる!」と、無邪気に外へ飛び出した。しかし、彼は戻ってこなかった。曾祖父母は、必死に彼を探し、ついに外で見つけたのは、彼の崩れ落ちた、冷たくなった遺体だった。雨漏りの原因を探ろうとした彼は、不運にも屋根から転落し、首の骨を折って即死していた。彼の無残な姿は、曾祖父母の心に深い傷を残した。
三人の子供を失った曾祖父母の悲しみは深く、想像を絶するものであったろう。曾祖父はその後、戦場で命を落とした。残された曾祖母は、深い悲しみに暮れる中、家系の存続を願い、隣村から一人の男を養子に迎えた。その男が、私の祖父である。しかし、私の両親は、その祖父の子供ではない。
祖父と祖母の間には、私の父と叔父叔母たち、五人の子供が生まれた。その子供時代は、曾祖父母の悲劇の影が常に付きまとっていたという。
祖父は、幼い頃から曾祖父母の悲劇を目の当たりにし、その影に怯えながら育った。彼はいつも不安げな表情をし、夜には悪夢にうなされていたという。彼の心には、亡くなった三人の兄姉の亡霊が棲みついていたのかもしれない。
祖父と祖母は、その悲しみを胸に抱えながら、五人の子供たちを育て上げた。しかし、その幸せは長くは続かなかった。祖父は、若くして病に倒れ、この世を去った。ほぼ同時期に、曾祖母も老衰のため亡くなった。
曾祖父母と祖父の死後、実家の周りでは奇妙な出来事が起こるようになった。夜になると、子供の泣き声が聞こえるという噂が村中に広がり、近所の人々は、夜遅くに実家の方角を避けるようになった。
ある日、私は古い蔵を整理していた際に、曾祖父母の書いた古い日記を発見した。日記には、曾祖父母の悲しみ、そして三人の子供の死に関する詳細な記述があった。日記によると、子供たちの死は、単なる事故ではなかった可能性があるという記述があった。曾祖母は、子供たちの死後、奇妙な儀式を行っていたらしい。その儀式の内容は、日記からはっきりと読み取ることができなかったが、何か邪悪な力と関係しているようだった。
日記には、曾祖父母が、何らかの超自然的な力に悩まされていたという記述もあった。彼らは、子供たちの死後、頻繁に悪夢にうなされ、精神的に不安定になっていたらしい。日記の最後のページには、曾祖母が、自分の犯した罪を悔い、そして、その罪を償うために、自分の命を絶つことを決意したという記述があった。その日記は祖父へ、祖父の死後は祖母が引き継いだが、祖母が亡くなった時に、そっと棺の中に入れたのだ。
その日記を読んだ後、私は、実家、そして私の家系に、何らかの呪いがかけられているのではないかと考えるようになった。三人の子供の死、そして祖父の早すぎる死、これらはすべて、その呪いの結果ではないだろうか。そして、私自身の存在も、その呪いの連鎖の一部なのかもしれないという恐怖に襲われた。
私は、この呪いを解く方法を探し始めることにした。しかし、その呪いの正体、そしてそれを解く方法は、未だに見つかっていない。実家は、今もなお、その暗い歴史を背負い、静かに佇んでいる。そして、その家には、今もなお、三人の子供の霊が彷徨っているのかもしれない。
この物語は、私の家族の歴史であり、そして、私の運命の一部でもある。私は、この呪われた家系の物語を、いつの日か、完全に解き明かしたいと願っている。しかし、その道のりは、長く険しいものになるだろう。そして、その先に何が待っているのか、私にはまだわからない。
この家は、私の故郷であり、同時に、私にとって最も恐ろしい場所でもあるのだ。この家の歴史は、私自身の歴史と深く関わっている。そして、その歴史は、私の人生に、永遠に影を落とすだろう。