昔々、深い森に囲まれた羽黒村という、世捨て人のような村があったそうな。その村には、古くから三つの「
一つ目、枯井戸の面鏡。 廃屋となった屋敷の庭に
二つ目、鎮守の森の面鏡。 村はずれの鎮守の森、朽ち果てた社殿の奥深くに隠された、その水たまりは、常に微かに光を放っている。まるで、無数の魂の灯火が水面を漂っているかのよう。しかし、その光は、決して温かくはない。冷たく、鋭く、見る者の心を凍らせる。この面鏡に映るのは、あなたの「忘れたい記憶」。 しかし、それは、歪められ、増幅された、悪夢のような記憶だ。 忘れたい過去、後悔、罪悪感…それらが、鮮明な映像となって、水面に浮かび上がる。 あなたは、その過去の出来事を、再び体験する。 その痛み、悲しみ、恐怖を、鮮明に、そして容赦なく、味わうことになる。 そして、あなたは気づく。 その記憶は、あなた自身の一部となり、永遠にあなたを苦しめるだろう。 逃れることのできない、永遠の
三つ目、山の奥の面鏡。 最も恐ろしいとされる、その面鏡は、険しい山奥の洞窟深くに潜む。 その存在を知る者は少なく、辿り着いた者は、二度と村に戻ってこなかったという。 直径5メートルを超える、巨大な水たまり。 しかし、その水面は、何も映さない。 真っ黒な闇が、底知れぬ深淵を暗示している。 近づくと、空気は重くなり、息苦しくなる。 そして、耳元で、囁きが聞こえるようになる。 それは、あなたの心の声。 しかし、それは、あなたの声ではない。 それは、あなたの深層心理に潜む、抑圧された欲望、隠された本性、最も恐れるもの…それらが、あなたの理性と戦い、あなたを狂気に突き落とす。 鏡は、何も映さない。 しかし、それは、あなたの心を映し出している。 そして、その闇を、無限に増幅し、あなたを永遠にその闇に閉じ込める。 あなたは、そこで、永遠に、自分自身と戦うことになるだろう。 まるで、地獄の底に落とされたように。
これらの面鏡は、互いに繋がっていると伝えられている。 一つを見れば、他の面鏡にも、あなたの魂の闇が映し出されるという。 三つの面鏡全てを見た者は、村の呪縛から逃れることはできない。 永遠に、その闇に囚われ、魂を蝕まれ続けるというのだ。 羽黒村の面鏡の物語は、今もなお、村の古老たちから語り継がれ、村人たちの心に深い恐怖を刻み込んでいる。 そして、その物語は、いつの日か、あなたにも届くかもしれない…