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第十一幕 嵐の前の陽だまり

朝靄が晴れ、瑞々しい朝露が真田の郷を輝かせている。

田畑では早朝から農民たちが腰をかがめ、黙々と農作業に励んでいた。

遠くで鶏の鳴き声が高らかに響き、時折、牛ののんびりとした鳴き声が、それに重なる。


そんな平和な朝の風景の中に、不意に一つの違和感が生まれた。


「……ん?」


一人の年老いた農民が顔を上げ、遠くの方をじっと、見つめた。

その視線の先には土煙を上げながらこちらへ向かってくる一団の姿が見えた。

最初は遠くの山並みに溶け込み、蜃気楼のようにぼんやりとしか見えなかったその一団が、近づいてくるにつれその姿をはっきりと現していく。


「……おーい! 戻ったぞー!」


先頭を行く、一際大きな馬に跨った若武者が高らかに、声を上げた。

その声は朝の静寂を切り裂き、里中に響き渡る。


「おぉ……! 源太左衛門様だ!」

「殿様も、ご無事で、お戻りになられたぞ!」


農民たちは鍬を持つ手を止め、歓声を上げた。

その顔には安堵と喜びの表情が浮かんでいる。

先頭を行くのは真新しい鎧を纏い、背中に家紋が刻まれた旗をはためかせた、若武者──源太左衛門。

初陣を終えた自信と誇りに満ち溢れ、その瞳は朝日に負けないほど力強く輝いている。


そしてその横には真田の長、頼昌の姿があった。

顔には疲労の色が見え隠れするものの、その表情は穏やかで、瞳には深い安堵の色が浮かんでいた。

長年使い込まれた鎧は所々傷つき、土埃で汚れている。


「殿様! 若様!」

「戦は……戦は、どうでございましたか!?」

「若様の初陣は、如何でございました!?」」


口々に興奮した様子でまくし立てる村人たち。その表情には安堵と喜び、好奇心が入り混じっている。


「皆、落ち着け。大した戦ではなかったわ」


頼昌は苦笑いを浮かべながら、騒ぐ村人たちを宥めるように言った。

しかし、そんな父の言葉を遮るように源太左衛門が高らかに声を上げる。


「案ずるな、皆! 諏訪の小勢など、この源太左衛門が見事に追い払ってやったわ!」


源太左衛門はそう言って、手にしていた長槍を高々と空に掲げた。その瞳は自信に満ち溢れ、眩しく輝いている。

朝日に照らされた槍の穂先が鋭く光を反射した。


初陣を終えたばかりの若武者とは思えぬ、その堂々たる振る舞い。そして、その自信に満ちた言葉。

それらは村人たちの心を、強く揺さぶった。


「おお……! さすがは、源太左衛門様!」

「なんと、頼もしい……!」

「この郷も、安泰じゃ……!」


村人たちの熱狂的な称賛を一身に浴び、源太左衛門は意気揚々と胸を張った。

しかし、その表情はだらしなく緩み、子どものように無邪気な笑みを浮かべている。


(こやつめ……まだまだ、青いのう)


頼昌はそんな息子の様子を苦々しく、しかしどこか温かい眼差しで見つめていた。

たった一度の……それも小規模な戦で勝利したからといって、郷の者たちに囃し立てられ、良い気になっておるようではまだまだ半人前も良いところ。

しかし、それこそが若さというものなのかもしれない。


そう頼昌が感慨に耽っていると──。


「!?」


不意に、村人たちの頭上を巨大な影が遮った。


何事かと皆が空を見上げると、そこには蝶のように優雅に空を舞う胡蝶の姿があった。

胡蝶はしなやかな身体を大きく、そして高く跳躍させ、村人たちの頭上をふわりと飛び越えると、源太左衛門の目の前に音もなく舞い降りたのだ。


突然の出来事に周囲の者たちは皆呆気に取られ、言葉を失っていた。

そんな彼らの困惑な、意に介さず、胡蝶は顔をぱっと輝かせ満面の笑みを浮かべる。


「源太左衛門! 無事であったか!」


そう言うと胡蝶は、喜びのあまり源太左衛門に勢いよく抱きついた。

突然の胡蝶の出現、そしてその人間離れした動きに村人たちはざわめき始めた。


「おい……今の、見たか……?」

「あ、ああ……。すげぇ跳ね方だったな。胡蝶のやつ一体どうなってんだ……?」

「あんな動き、源太左衛門様でも、できねぇぞ……」


ひそひそと、興奮した様子で村人たちは囁き合う。

一方、突然現れた胡蝶に注目の的を完全に奪われた源太左衛門は、面白くなさそうにむすっと口を結んでいた。


「……しかし、何故、抱きついておるのだ?」

「まるで、恋人の帰りを、待ちわびていたかのような……」

「いや、まさか……な……?」


村人たちのひそひそ話は、次第に妙な方向へと逸れていく。

それを聞き、源太左衛門の怒りは頂点に達した。


「……おい、胡蝶! いい加減に離れろ! なぜお前が皆の注目を集めておるのだ!」


源太左衛門は怒気を含んだ声で胡蝶を引き剥がそうとした。その顔は嫉妬と怒りで真っ赤に染まっている。


「はは、すまぬすまぬ。お前の晴れの初陣帰りだというのに……つい嬉しさが込み上げて飛んでしまった。許せ」


胡蝶はそう言って悪戯っぽく笑い、優雅な身のこなしで源太左衛門からそっと離れた。

そして馬上にいる父・頼昌の前に進み出ると、静かに膝をつき深々と頭を垂れた。


「父上。御帰りなさいませ。ご無事なお姿を拝見でき、この胡蝶、安堵いたしました」


胡蝶の心のこもった言葉に、頼昌は満足げに頷いた。


「うむ、出迎え大儀である。留守の間、変わりはなかったか?」


頼昌は馬上から胡蝶を見下ろし、優しく問いかける。


「はっ。母上をはじめ、使用人の方たちも、皆父上のご帰還を今か今かと待ちわびておりました」


胡蝶は顔を上げず恭しく答えた。

そんな二人の引き締まった会話と、凛とした立ち振る舞いを目の当たりにした村人たちは、頼昌の武将としての威厳と、胡蝶の目覚ましい成長ぶりに感嘆の息を漏らした。

村人たちの多くは胡蝶がまだ赤子であった頃から、その成長を見守ってきた。

それゆえ、こうして武士らしく頼昌と言葉を交わす胡蝶の姿は、彼らにとって感慨深いものなのだ。


(胡蝶どのもすっかり、立派になって……)


誰もがそう思っていた。

しかしそんな感動的な雰囲気をぶち壊すように、源太左衛門が不満げな声を上げる。


「おい胡蝶。俺の時と随分と態度が違うではないか」


源太左衛門のその言葉に胡蝶は「はて?」と首を傾げた。

その様子が妙に愛らしく、村人たちは女子を彷彿とさせたが、誰も何も言わない。

そんなことを言えば胡蝶が怒り狂うからだ。


「何故、俺が源太左衛門殿に恭しくせねばならぬのかな。父上は真田の棟梁……一方で、お前は……嫡男とはいえ所詮は一兵卒。しかも初陣を終えたばかりの若輩者だというのに」


胡蝶はそう言って、肩を竦める。

その言葉に、源太左衛門は顔を真っ赤にして、激昂し馬から飛び降りると、胡蝶に槍を突きつけ叫んだ


「おのれ……なんて無礼なやつ!叩き斬って……」


しかし彼は次の瞬間、ふと動きを止め、小さく首を傾げ唸り始めた。


「……初陣を終えたばかりの若輩者?確かに……そうだな……?う~ん……よくよく考えれば、何故そのような者が皆から脚光を浴びねばならんのだ……?」


源太左衛門はぶつぶつと何かを呟きながら、考え込んでいる


「熟練の歴戦の兵たちこそ称賛されるべき……うん、それもそうか……」


それを見た胡蝶は、ぷっと吹き出した

源太左衛門は道理というものをよく理解している青年。立場や権威を笠に着るような真似はしない。

それ故、胡蝶の言葉にも素直に納得してしまう純粋さがあるのだ。


「冗談だ、冗談。熟練の兵であろうと、初陣の兵であろうと、真田の嫡男であろうと……皆、懸命に戦ったことに変わりはない。初陣を無事に終えた、それこそが一人前の武士の証よ」


胡蝶はそう言うと、先ほどまでの皮肉めいた笑みを消し、居住まいを正し、深々と頭を垂れた。


「源太左衛門様。此度の戦の大勝利、誠に目出度く……。この胡蝶、貴方様の目覚ましいご活躍、心よりお慶び申し上げます」


胡蝶のあまりにも恭しい態度に、源太左衛門は槍をぽろりと地面に落とし、ぶるぶると身震いした。


「お、おい、やめろ胡蝶。お前が俺にそんな他人行儀な態度を取ると、どうにも寒気がする……!」


源太左衛門は両腕をさすりながら、困ったように言った。


「やれやれ、まったく……。恭しくしろと言ってみたり、適当に扱うと怒ってみたり……。源太左衛門どのは難しいお方よ」


胡蝶はそう言って肩を竦め、わざとらしくため息をついた。


その様子を見ていた頼昌、そして村人たちは皆くすくすと笑い声を上げた。


(まったく、こやつらは……)


頼昌は苦笑いを浮かべながらも息子たちの仲睦まじい様子に目を細めた。

その胸には、温かい愛情が満ちている。


(源太左衛門も、胡蝶も、二人とも立派に成長してくれた……)


村人たちもまた、同じような気持ちであった。

幼い頃から知っている二人の若者が、こうして立派に成長した姿を見るのは何よりも、嬉しいことだった。


「大体な!お前は俺の活躍を知らんからそのように揶揄うことができるのだ!」

「ほう?ならば聞かせてもらおうか。嫡男どのの目覚ましい活躍ぶりをな」


源太左衛門の快活な笑い声と、胡蝶の鈴を転がすような美しい声が、真田の郷に高らかに響き渡る。

平和が戻った瞬間であった──。




♢   ♢   ♢




真田の屋敷。その広大な庭は、今、熱気と興奮に包まれていた。

頼昌と兵たちの無事の帰還を祝し、郷の者たち、そして真田家の家臣たちが集い、盛大な宴が催されているのだ。

庭の中央には巨大な焚き火が燃え盛り、赤々と周囲を照らしている。

その周りには、所狭しと筵が敷かれ、人々は思い思いの場所に車座になって、酒を酌み交わしていた。


「さあ、飲め、飲め!」

「今日は、無礼講じゃ!」


豪快な笑い声が、あちこちから聞こえてくる。

宴会の場には、これでもかと言わんばかりに料理が並べられていた。

大猪の肉が豪快に丸焼きにされ、香ばしい匂いをあたり一面に漂わせている。他にも山菜の天ぷら、川魚の塩焼き、採れたての新鮮な野菜がふんだんに使われた料理が並べられ、宴の席を彩っていた。


大きな桶から、柄杓で酒を汲み、それを回し飲みする者たち。

猪の肉に豪快にかぶりつき、その野性味あふれる味を堪能する者たち。

互いの武勇伝を語り合い、大声で笑い合う者たち。


誰もが皆、笑顔でこの勝利の宴に酔いしれていた。


女たちは子供たちに、料理を取り分け優しく微笑みかける。

子供たちは普段は見ることのできないご馳走に目を輝かせ、無邪気にはしゃぎ回っている。


「おぉーい! 皆の衆、よーく聞け! この真田源太左衛門幸綱様の、華々しき初陣の武勇伝を、とくと語って聞かせようぞ!」


ひときわ大きな声で、源太左衛門が高らかに宣言した。

その声は普段よりもさらに大きく、広大な庭の隅々まで響き渡る。


「おお!待ってました!」

「よ!若様!」


村人たちは、わっと歓声を上げ、期待に満ちた眼差しで源太左衛門を見つめた。

源太左衛門は皆の視線を一身に浴び、満足げに頷くと、舞台の役者のように大袈裟な身振り手振りを交え、語り始めた。


「……それは、凄まじい戦いであった! 敵は諏訪の精兵……その数、ゆうに千は超えておった! 対する我らは、僅か百足らず! しかしこの源太左衛門、怯むことなく敵陣深く斬り込み、鬼神の如き働きよ! 右に薙げ払えば、敵兵五人吹っ飛び!左に突き出せば、敵将の兜、真っ二つ! まさに一騎当千、獅子奮迅の、大活躍であったわ!」


源太左衛門は熱弁を振るう。その表情は真剣そのものだが……。

どう考えても大袈裟に誇張された話であることは、明白である。

しかし村人たちは皆、源太左衛門の熱のこもった語りに引き込まれ、息を呑み聞き入っている。


「おお……!」

「なんと、凄まじい……!」


村人たちは源太左衛門が一言発するたびに、感嘆の声を上げその目を大きく見開いた。


「まったく……どこまで、話を、盛っておるのやら」


その様子を少し離れた場所から見ていた胡蝶は、呆れたように小さく呟いた。

その口元には皮肉な笑みが、浮かんでいる。

源太左衛門の武勇伝は時間が経つにつれ、ますます大袈裟に、そして荒唐無稽なものへと変貌していった。


「そうして俺の、鬼神の如き働きを目の当たりにした、諏訪の大将……なんとあの諏訪頼重が顔面蒼白、血の気を失い腰を抜かして逃げ出したのよ! 信濃の盟主だか、諏訪の棟梁だか知らぬが、この源太左衛門の敵ではなかったわ! 敵ながら情けない、無様な姿であったぞ!」


源太左衛門は抑揚をつけ、身振り手振りを交え熱弁を振るう。


(諏訪の大将がこのような小競り合いに、わざわざ出てくるわけなかろうに……。嘘八百も大概にしろ、というかもう少し頭を使え、あの阿保)


胡蝶は心の中で、皮肉たっぷりに呟いた。しかしここで水を差すのも大人気ない。そう思い口を噤んだ。

ふと視線を移すと、父・頼昌と、母・琴が、仲睦まじく、寄り添い、言葉を交わしているのが、目に入った。


「ご無事で、何よりでございます。この琴、どれだけ心配したことか……」


琴は心配そうに頼昌の顔を覗き込み、優しく問いかける。


「うむ。……心配をかけたな」


頼昌はそう言って、琴の華奢な手を優しく包み込んだ。その表情は穏やかで、瞳には深い愛情が込められている。

その様子を見た胡蝶は心の底から安堵した。

頼昌と源太左衛門が出陣している間、母は表向きは気丈に振る舞っていた。しかし、その瞳の奥には常に不安の色が浮かんでいたのを胡蝶は知っている。ずっと張り詰めていたに違いない。

それが今こうして、二人とも無事帰還したことで、ようやく心の底から安堵し、喜びに満たされているのが胡蝶には手に取るように分かった。


良かった。


胡蝶は誰に言うわけでもなく、心の中でそっと呟いた。

母の安堵に満ちたあの表情を見た時、自分の心もまた同じように温かに満たされた。


──しかし。


それと同時に、胡蝶の胸中には言いようのないもどかしさが込み上げてくる。


二人がいない間の……母の不安げな表情を、少しでも和らげてあげたかった。

しかし、自分にはそれができなかった。

やはり血の繋がりというものは、それほどまでに大きいのだろうか……。


「……」


胡蝶は無意識のうちに、自らの掌を見つめていた。


白く細い、指。

この手は、確かに頼昌や、源太左衛門と同じように剣を握り、槍を振るうことができる。


しかし……この身には真田の血も、そして母の出自である海野の血も……一滴も流れていないのだ。


──どこまでいっても、自分は「余所者」でしかないのだろうか。

──彼らの真の安らぎの輪の中に、入ることは永遠に許されないのだろうか。


そんな暗く沈んだ思いが、胡蝶の心を縛りつけようとした、その時だった。


「胡蝶」


不意に。優しく力強い声が胡蝶の名を呼んだ。


「そのような陰で何をしている。こっちに来い」


声のする方へ顔を向けると、そこには父・頼昌が胡蝶を見つめ、手招きしていた。

その表情はいつになく穏やかで、その瞳には深い愛情が込められている。


「よくぞ留守の間、屋敷を守ってくれた。お前がいなかったら琴も心細かったであろう。お陰で安心して、戦に集中することができた。……さすがは、我が自慢の息子よ」

「あっ……」


頼昌はそう言うと、胡蝶の手を握る。

その手は大きく、温かく、力強い。長年、武芸を鍛え、幾多の戦場を駆け抜けてきた武士の手。

その温もりが胡蝶の冷え切った心を、ゆっくりと溶かしていく。


そして、次の瞬間。

胡蝶のもう一方の手を、優しく温かい何かが包み込んだ。


「母上……?」


見ると、琴が胡蝶の手をそっと両手で包み込むように、握りしめていた。

その手は頼昌の手とは対照的に柔らかく、そして繊細であった。


「胡蝶。貴方がいてくれて、本当に良かった……。家族が一人でも側にいるということは、こんなにも温かく、そして安心できることなのですね……」


父の、力強い手。

母の、優しい手。


二つの温もりに包まれ、胡蝶の心は今、確かに満たされていた。


「……っ」


胡蝶は言葉を失った。

一体、何を言えば良いのか分からなかった。


どうして、父は。どうして、母は。自分に、これほどまでに、優しく接してくれるのだろう。

何故、血の繋がりもない自分をこんなにも、温かく包み込んでくれるのだろう。


これではまるで、本当の親子のようで──。


「わ、わたくしは、これで失礼いたします……!」


突然、胡蝶は顔を真っ赤に染め上げ、羞恥のあまりその場から逃げ出すように駆け出した。

その身のこなしは美しい蝶が、風に乗って舞い上がるかのようで、あっという間に胡蝶の姿は、宴の喧騒の中に消えていった。


「えっ?」

「むっ」


突然の、そしてあまりにも鮮やかな逃亡劇に、頼昌と琴は一瞬きょとん、と顔を見合わせた。

しかしすぐに、どちらからともなくふふっと優しく微笑み合った。


「可愛らしい子……」

「そうさな。胡蝶はまだまだ、子供よ。しかし……それもまた、良い」


いずれは雄々しく育つのだ。こうして愛でることが出来るもの、今だけ……。

ならば、その時が来るまでこの揺籃で守って、そして慈しもうではないか。

二人の心の中には胡蝶への深い愛情と、そして庇護欲が満ち溢れていた。


「……おぉーい! 皆の衆! まだまだ、宴は、これからだぞぉー!これから敵の大将の首を取る場面だ、心して聞けよぉ!」


源太左衛門の馬鹿げた与太話が、庭に響き渡る。

琴はその喧騒を聞きながら、静かに呟いた。


「この、穏やかな日々が……いつまでも、続けば、良いのに」


琴の祈りにも似た言葉が、風に乗って消えていく。

そうして、源太左衛門の初陣は無事終わり、真田の家にも平穏が戻ってきた。
















──数日後。


その報せは突然、真田の郷にもたらされた。


諏訪と村上──。


信濃きっての大勢力が手を組み、連合軍となって、この地……小県郡へ攻め込んできたのである。


真田の……そして、胡蝶の運命を大きく揺るがす、戦乱の幕開けであった。


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