数学の授業が始まる時間になると、教室の扉が勢いよく開いた。
「はい、席についてー!」
二先生が入ってくると、クラスは一瞬静まり返る。しかし、すぐにお決まりのやり取りが始まった。
「二先生!」
クラスのムードメーカー、羽生(はにゅう)がニヤリとしながら手を挙げる。
「二って、どう読むんでしたっけ? に? ふたつ? それともツー?」
二先生は苦笑いしながら黒板に自分の名前を書いた。
『二(したなが)』
「羽生くん、何度言わせるんだい?」二先生は腕を組む。「“したなが”だってば。次に間違えたら、君の名前を『はぶ』って読むからね!」
羽生は満足げに頷いた。「羽生(はにゅう)って読めるけど、先生がハブさんって呼んでもそれはそれで有名人だから僕はうれしい。」
教室が笑いに包まれる中、一郎が小声でつぶやいた。「でも“ハブ”って沖縄のヘビのこともいうよね…?」
「そうだよ! 蛇のように食べちゃうぞー!」羽生がいつものように笑いを取っている。二先生も笑いながら黒板を叩いた。
「さあ、今日はちょっと変わった数学の授業を始めるぞ!」