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雨の夜に

「ツク、どうしたの?」

窓の外をじっと眺めていると、ベッドから恋人がそう呼びかけた

「眠れないの?」

激しくて容赦なくて意地悪で、優しい恋人

「・・・雨、見てたの」

十代に返ったみたいに受け答えしてる


言葉遣いまで変わってしまった


まるで娘に戻ったみたい


ツクはそう思う


お互いの部族から離れて、二人で暮らして、それなりに経つ


恋人の言葉に偽りはなく、夜毎、ツクは体を暴かれ続けている


ヨミの体力に合わせて、自分の体力も戻ってきたみたいに思う



 恋は人を若返らせるものなのね


 ・・・恥ずかしい


ツクはそう思う、


ベッドで自分を待っている恋人の顔を見れない


そう思っていると


「・・・早くおいでよ、ツク」


後ろから抱きしめられ耳元でささやかれた


なんてつやのある声だろう、ゾクゾクする


「ねえ・・・ツク・・・」


その声のトーンからわかってしまう、また誘われていることを


はぐらかそうと一瞬ツクは思う


そしてそれが通じないこともわかっている


「ヨミ・・・」


「ねえ夜はまだ長いよ?・・・また、そのかわいい声を聴かせて?」


「・・・」


自分に拒否権などないとツクはわかっている


この恋人は優しく、それでいて暴君なのだ


今でも、愛し合うとき、ふとした一瞬、戒めるように、若いころと同じ目でじっと見つめられ射すくめられ、当たり前のように、しるしをつけられる・・・所有のしるしを


「おいで、ツク・・・今度は優しくしてあげるから」


それが嘘だということをツクはもう知っている、嫌と言うほど知っている


そりゃ最初は優しくしてくれるだろうけれど、途中からそれはそれは楽しそうに、意地悪になる、激しく容赦なく欲しがらされてじらされてそれから・・・


いつものことだわ


「嘘つきね・・・ヨミ」


自分に手を差し出す愛しい恋人に向かってツクはささやかな抵抗を見せる


ああこれも言い訳だ


欲しいのは私も同じなのだから


「仕方ないでしょ」


嘘つきと言われたヨミは楽しそうに嬉しそうに笑う


「あなたが可愛すぎるのが、いけないんだから」


やっぱりずるい


欲しい言葉をいつでもわかっていて惜しげもなく与えてきて


これでどうして逃れることなんかできようか


「もう・・・」


そう言うのがツクには精一杯の抵抗だった


そしてそれから、差し出された手を取る


ヨミは愛しい恋人を再びベッドへと誘う


当たり前のように、ツクに先にベッドに入らせ、それを見下ろすヨミ


その瞳の中に、十代のころからずっと見知っている激しい、そして優しい、だけどやっぱり獰猛な獣の目の輝きをツクは見て取る


それから


いっぱい泣いて、いっぱい泣かされて、そして、ヨミに喜んでほしい


自分がこの美しく愛しい恋人のものであることを、自分のすべてで伝えたい


何度も何度も伝えたい


ツクはそう思った




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