昔々、ある村に、優しい老夫婦が住んでいました。ある日、老夫婦が山から帰る途中、怪我をしている雀を見つけました。老夫婦はその雀を助け、家に連れて帰り、優しく手当てをしました。しばらくして、雀は元気を取り戻し、感謝の気持ちを込めて、老夫婦に「何かお礼がしたい」と言いました。
通常の物語では、雀が「お礼に何かを差し上げます」と言って、老夫婦がその後に手に入れた箱からたくさんの財宝を得る一方で、嫉妬深い老婆がその秘密を知り、同じ箱から財宝を得ようとして失敗し、罰を受けるという展開が描かれます。しかし、この物語では、老婆がどんな行動を選んだとしても、老夫婦が選ぶ「慈悲と感謝」の道に焦点を当てて物語を進めます。
ある日、雀は元気になったことを感謝して、老夫婦に言いました。「私はあなたたちにお礼がしたい。どんなものが欲しいですか?」
老夫婦はお金や物ではなく、ただ一緒に穏やかに過ごすことを望んでいましたが、老夫婦の優しさに感動した雀は、どこからか特別なものを持ってきてくれると言いました。それが、物語で語られる「金の箱」ではなく、「幸福の箱」でした。
「この箱は特別です。この箱からは、あなたが心から欲しいものが出てきます。しかし、注意してほしいのは、箱を開ける前に心の中で欲しいものをしっかりと決めてから開けることです。それが、あなたの心に響く本当の望みとなるでしょう」
老夫婦は感謝の気持ちでその箱を受け取りました。そして、その箱を開けると、現れたのは豊かな田畑や家、家族の笑顔、そして永遠の平和を象徴するような美しい光景でした。それらは、物理的な財宝ではなく、心の中で感じる幸福そのものでした。
「この箱は、私たちの心の中の最も純粋な願いを叶えてくれたんだね」とおじいさんは微笑みました。おばあさんも目を潤ませて言いました。「本当に、これ以上のものはない。お金や宝石では得られないものだわ」
そして、その箱は再び消え去り、老夫婦の家に穏やかな日々が続きました。村の人々は、彼らが得た幸福がどれほど素晴らしいものであったかを知り、共にその幸せを分かち合いました。
一方、年老いた老婆がその話を聞き、嫉妬心を抱きました。彼女もまた雀にお礼を求めて箱を手に入れようとしました。老婆は自分の欲望のままに箱を開け、求めるものを心の中で決めました。しかし、箱から現れたのは無駄に散らばる金銀財宝の山でした。金や宝石が山のように積もり、その中で老婆はどうしてよいか分からず、さらに虚しさを感じていました。
その時、箱が再び姿を消し、老婆は何も得られなかったことを悟りました。自分の心に正直に向き合わず、ただ物だけを求めた結果、失われたものの大きさに気づくのでした。
老夫婦はその後も平和で幸せに暮らし、村人たちに「本当の幸福とは、外のものではなく、心の中にある」と教え続けました。そして、老夫婦の優しさと無欲な心は村全体に広まり、村全体が幸せに包まれていったのです。