昔々、赤ずきんという小さな少女が、母親から頼まれておばあさんの家にお使いに出かけることになった。途中、森の中で出会った狼に、話しかけられた。狼は、彼女の行き先を聞き、にっこりと微笑んだ。
「おばあさんの家か。いいところだね。でも、気をつけた方がいいよ」
赤ずきんは驚いたが、狼の言葉を無視して、何も気にせず歩き続けた。けれども、途中でふと思った。
「狼が言う通り、何かおかしいことが起きるかもしれない」
その時、赤ずきんは小さな決意を固めた。もし狼が本当に危険な存在なら、狼と対話してみようと。
おばあさんの家に着く前に、再び狼と出会った。狼はその目を光らせながら、ゆっくりと話し始めた。
「君がそんなに警戒するのは、私が恐ろしい存在だからだろう。けれど、私はただ、力が欲しかっただけなんだ」
驚いたことに、狼は自分の本当の気持ちを打ち明けた。狼はもともと森の中で孤独に生きており、他の動物たちと関わることができずにいた。しかし、今まで恐れられ、嫌われるばかりだったことを悲しんでいたのだ。
「私はただ、友達が欲しかった」
赤ずきんはその言葉に心を動かされ、優しく答えた。
「私は怖いとは思わないよ。でも、だからといっておばあさんを襲わせるわけにはいかない」
赤ずきんは、狼に提案した。
「私と一緒に、おばあさんの家で過ごしてみない? おばあさんもきっと、あなたを歓迎してくれるはず」
こうして、赤ずきんと狼は共におばあさんの家に向かった。おばあさんは最初驚いたが、狼の心を知った後、彼を暖かく迎え入れた。そして、狼は徐々に村の動物たちとも友達になることができ、村は少しずつ変わり始めた。
「本当の恐れは、理解し合えないことから生まれるんだね」
赤ずきんは静かに呟いた。
狼と共に歩む道を選んだ赤ずきんの物語は、人々の間で語り継がれ、恐れや偏見を越えた友情の象徴として、長く残り続けた——。