浦島太郎は、助けた亀に連れられて竜宮城へと向かった。そこで乙姫からの歓待を受け、美しい舞や豪華な料理に心を奪われた。しかし、日々の楽しさに浸るうちに、ふと故郷のことを思い出した。
「乙姫様、私はそろそろ帰らなければなりません」
名残惜しそうな乙姫は、一つの玉手箱を渡した。
「この箱は決して開けてはなりませんよ」
浦島太郎はうなずき、竜宮城を後にした。しかし、帰ってみると村の様子が変わっていた。自分の知る人々の姿はなく、家も無くなり、見知らぬ時代になっていた。
「まさか……」
彼は戸惑った。竜宮城で過ごしたのはほんの数日だったはず。しかし、村人に尋ねると「浦島太郎? そんな名前の人が昔いたと聞いたことがありますが……」と言われる始末。
玉手箱を開ければ、真実がわかるかもしれない。だが、乙姫の言葉が頭をよぎる。「開けてはなりませんよ」。
浦島太郎は迷った末に、箱を開けるのをやめた。代わりに、旅に出ることを決意する。
「この時代がどんなものなのか、自分の目で確かめよう」
彼は新しい世界を歩き始めた。やがて、旅の中で出会った人々に竜宮城の話を語り、伝説の語り部として名を馳せるようになった。
「失われた時間は戻らない。だが、新しい時間を生きることはできる」
彼の物語は人々の間に広がり、やがて永遠に語り継がれることとなった——。