「桃太郎、鬼になる」
むかしむかし、ある村におじいさんとおばあさんが暮らしていました。ある日、おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてきました。桃を持ち帰り、切ってみると、中から元気な男の子が飛び出してきました。
「これはきっと神様からの授かりものじゃ」
そう言って、桃から生まれた子を桃太郎と名付け、夫婦で大切に育てました。
やがて桃太郎は立派な若者に成長し、村人を苦しめる鬼を退治するため、旅立つことになりました。おばあさんからきびだんごをもらい、道中で犬、猿、雉を仲間に加え、いざ鬼ヶ島へと向かいます。
しかし、ここで歴史が変わる。
鬼ヶ島にたどり着いた桃太郎たちは、鬼たちと戦い始めました。しかし、予想以上に強い鬼の総大将が現れ、桃太郎は苦戦を強いられます。
「貴様……なぜそこまで強い……?」
桃太郎が息を切らしながら尋ねると、鬼の総大将は答えました。
「お前も感じているだろう? この血の騒ぎを。お前が持っている力の正体を」
桃太郎の心臓が高鳴りました。確かに、自分は普通の人間とは違う。生まれも奇妙で、異常な力を持っている。そして何より、この島に来てから、鬼の気配がなぜか懐かしく感じるのです。
鬼の総大将は続けました。
「お前は、我ら鬼の一族の子だ」
「……何?」
「昔、この地に生まれた鬼の子が、ある事情で人間の村に流された。その子がお前なのだ」
桃太郎は混乱しました。自分は鬼なのか? では、今まで退治しようとしていた相手は、実は自分の同胞だったのか?
「人間は私たちを『悪』と決めつけ、島に閉じ込めた。しかし、我らはただ生きていただけだ。桃太郎、お前もその力を使い、人間に復讐しようとは思わないか?」
仲間の犬、猿、雉が戸惑いながら桃太郎を見つめます。
「桃太郎、お前はどうするんだ?」
しばしの沈黙の後、桃太郎はゆっくりと口を開きました。
「……鬼ヶ島を出よう」
「なんだと?」
「俺は人間と鬼、どちらでもある。ならば、どちらかを滅ぼすのではなく、共に生きる道を探す」
鬼の総大将はしばらく桃太郎を見つめた後、静かに頷きました。
「面白い……では、お前のその覚悟、見せてもらおう」
かくして、桃太郎は鬼と人間の間に立ち、争いを終わらせる道を模索し始めました。かつて鬼退治に来た若者は、鬼と共に生きる未来を選んだのです。
こうして、新たな物語が始まるのでした。