それでもクラウスの指は厭らしく動き回る。
「うっ、んうー……」
「……虐めたいわけではないのだが……少しくらい俺を覚えて欲しいからね……」
何を、と言うまもなく、隘路に指が2本も差し込まれた。
「あ、やっ、やだっ……痛い、やめてぇ……」
つつ、と、溢れた涙を、クラウスがペロリと舐める。
「ひうっ……」
「あまり濡れていないからね仕方ない。大丈夫、本番はどろどろに潤ってヒクヒク物欲しそうに蠢いてから、挿入するから心配しないで」
「そんな、ダメ、です……」
しかしこれまで知ることのなかった刺激を与えられ、華奢な身体がピクピクと跳ねる。ぬるりと指が抜かれ身体も自由を取り戻す。イリヤーナは床に突っ伏した。
鎖で戒められたままとはいえ、国王ではない男の前で淫らな姿を晒してしまったことに羞恥と罪悪を覚え、唇を噛んで俯く。
そこに、冷酷だが楽しそうな声がかけられる。
「……まだおわりではないですよ、王女」
弛緩した片足を高く持ち上げられ、イリヤーナは悲鳴を上げた。しかしクラウスは動じることなく、再びそこをいじり出す。水音がしはじめ、とてもそちらを見る勇気はない。ぎゅっと目を閉じる。
「あなたがーー欲しい。あなたを俺のものにしたい。いや、俺のものにする」
とんでもない話である。イリヤーナは、お願いやめて、と力なく呟く。それが面白くなかったのか、クラウスは指を抜いてイリヤーナの肩を掴んだ。
「俺の花嫁だ、いいね?」
わたくしは国王の花嫁です、と、それでも叫ぶ唇はキスで塞がれる。乱暴な舌が捩じ込まれ、口腔内を暴れ回る。水音とクラウスの短い呼吸がイリヤーナの耳を打つ。
しばらく嬲ったあと、クラウスはゆっくり離れていく。
「あなたを愛しています」
「そんなっ……」
「初めて見た時から、あなたを手に入れるために俺は……」
キツく抱きしめられ、再びの口付け。そして、何か錠剤を口に放り込まれた。
「やっ、な、に、これ……」
逃れようともがくが、あっさり引き寄せられる。
「またしばらく、お休みください……」
イリヤーナが目を覚ましたら、戒めはそのままに身体は清められて新しい白いドレスを着せられていた。
「あ、わた……」
クラウスに、淫らな姿を見せてしまった。途端にイリヤーナを絶望が襲う。
「どう、しましょう……国王陛下の花嫁にならなくてはいけないのに……」
だが、クラウスの「愛しています」という言葉に心が揺れる。
あんな恥ずかしい真似を平気で行い、数多夫人を抱える男に嫁ぎたいわけではない。しかし一度結婚を約束したからには、滞りなく実行しなくてはならない。
それは国と国との約束なのだから。
それなのにーーこんなことになってしまった。
和平は守られるだろうか。
これを口実に祖国が侵略されやしないか。不安ばかりが募る。
「……目が覚めたようですね、王女」
唐突に声が掛けられてビクリと震える。
「クラウスさま……」
「……もう数日の辛抱です」
「えっ!? わたくしはここにあと数日居なくてはならないのですか? 出してください、わたくしはっ……」
ベッドから飛び出して扉に向かうが、すぐに鎖が引っ張られ、イリヤーナはクラウスの腕の中に飛び込む形になった。
「う、痛い……」
「申し訳ない。鎖が強すぎたようだ。すぐに戒めを緩め、手当を」
「……優しい、んです、ね……」
「俺が自分の花嫁を粗末に扱うはずないでしょう? 数日もかけません」
何のことだろうと思う間も無くクラウスの手が伸びてきてぎゅっと抱きしめられた。
「……ああ、あなたを堂々と抱きしめられるように、あなたを誰よりま、幸せにできるよう、頑張りますね」
「クラウス……さま……」
この人は本気なのだーーイリヤーナはようやく少し理解した。