ラドの感情がおさまった後、何かを思い出したかのように大将がすずねの方に詰め寄った。
「そうだ、すずねちゃん!どうしてあんな危ないことをしたんだ!!」
「あぶないこと?」
「戦士に近づいて話すなんて……」
大将は何かをさらに思い出したのか、アクアの方を向いて詰め寄る。
「アクア!!どうしてすずねが襲われそうになった時に、俺を止めたんだ!?」
「それは……」
「まって!!」
アクアが何かを答えようとした瞬間、すずねが止めた。
その声を聞いた大将は再度すずねの方を見る。
すずねは大将の目をじっと見て話す。
「ちがうの……わたしがあくあにやどにいるときに、おねがいしていたの」
「お願い?何を??」
「おじちゃんとふたりで、はなしをさせてって……」
「どうして!?あんなにも危ないのに!!」
「だって……」
すずねは大将から目線を外し、下を向いて呟くように話す。
「おじちゃんのおこっているりゆう、わたしだとおもってたから。
あんなやさしいおじちゃんがおこるのは……なんかへんだとおもって」
「……」
大将はすずねがガルに叫んだ言葉を思い出したのか、黙ってしまう。
大将はふぅとため息をついた後、すずねの前に立った。
すずねは何か怒られると感じたのか手を握り、目をギュッとつむった。
すると、大将は片膝を付いてすずねの体を自身の近くに寄せて、優しく抱きしめた。
「えっ!!!」
かなり驚いた表情ですずねは声が出るが、大将は無視してギュッと抱きしめる。
そしてその態勢のまま、呟くように話す。
「本当に……本当に何もなくてよかった……」
「……」
大将の消えるような小さな言葉を聞いたすずねは、何も言わずにそのまま抱きしめ返した。
暖かな風が吹き、二人を包み込むかのように舞った。
「コホン……ガハハ!!とりあえずすべて解決ってことだな!」
その姿を見たルトは咳払いをしてから大声で笑った。
その声を聞いた大将は顔を一気に真っ赤にして、バッと抱きしめるのをやめて立ち上がった。
すずねも同じく顔を真っ赤にして大将とは異なる所を向く。
そんな様子を黙ってニコニコしながら見ていたアクアは、ふと何かを見つけてそこの近くまで行き、拾い上げる。
「これは……斧?」
その様子を見ていたヨルが、少し近づいて話しかける。
「私が町で聞いていた音は、たぶんそれだろうな」
「これで木を切る音?」
「たぶんな。カーン……カーン……って感じだったから」
「……」
アクアはその言葉を聞いて、黙ってその斧をにらめつけるようにしてみる。
そして独り言を話すかのように呟く。
「どうしてこんなもので?あんな大剣を持っているのに……」
その言葉が聞こえたのか、それともその場から逃げたかったのかわからないが、
すずねはトコトコとアクアの方に歩いてきて、斧を見て話しかける。
「おじちゃんはやっぱり……やさしかったんだね」
「どうしてそう思うの??」
「だって……」
すずねは、ガルの炎の剣によって焼かれた森の方を見て話す。
「おじちゃん、もりをやけたのに、わざわざやかなかったんでしょ?」
「……」
「ほんとうは、こんなふうにやきたくなかったんだとおもうよ」
「……そうなのかもね」
すずねの言葉にアクアも焼かれた森を見ながら頷きながら同意した。
そしてアクアは両手で大きめの丸いボールを持つかのような形にしてから小さく呟く。
「この地を守る精霊よ.......」
すると、両手の中に緑色の大きなもやもやが集まったかと思うと、一気に空高く飛び上がる。
そして焼けた森の上から雪のようにその緑のもやもやが降っていく。
「わあ!!」
「これは!」
そのもやを見ていたすずねだけでなく、大将からも声が漏れる。
焼かれた森に落ちたもやもやから緑が一気に生い茂り始めた。
一面黒かった森が、元通りとは言わないものの緑あふれる場所に戻った。
アクアは両手のもやもやを落とすかのようにパンパンと叩いた後、そこにいた全員に向かって叫んだ。
「さて、みんなでサンドラの町に帰りますか!」
「「「「「賛成!!!」」」」」
そこにいた5人、大将、すずね、ルト、ヨル、ラドは右手を上げて大きな声で叫んだ。