大将がカバンから何かを探しているのを見てガルは後ろを振り返り、森の方に向かって叫ぶ。
「おい、そこにいるのはわかってる。さっさと出てこい!……殺気があって面倒だ。」
「……」
すると一本の木の上からドサッという音と共に出てきた。
ごつごつしている顔で少し引き締まった体を持つ男が、弓矢のようなものを持って出てくる。それを見たヨルは目を大きく見張り、叫ぶ。
「ラド!!!!」
ガルの横を通ってヨルはラドの元に走って近づいていく。
そして二人は抱きしめあった。
「ラド……すまない。遅くなった」
「俺は信じていたさ……って言っても、ぎりぎりだったがな!」
二人はそう言いつつ、そのまま抱きしめ続けた。
そんな様子を大将、アクア、ルト、すずねはじっと見ていた。
ただ、ガルは全く興味が無いのか大将にイライラしながら話す。
「で、頼まれたものは?」
「あ……あぁ。すまない。これだ」
大将はラドとヨルの様子から目を話し、自身のパンパンに詰まったリュックサックの側面を開ける。
その中から、手紙のような物を取り出した。
手紙は白いが、がさつに青い蝋で封がされていた。
蝋には小さいものの、右手で剣をかかげている人間だと思われる絵が描かれていた。
「アイルから、これを」
「この手紙は……確かにあのバカからだな。わざわざあいつ専用の蝋を使うとは、珍しい」
ガルは大将から手紙を受け取ると、蝋の部分を無視してビリビリに破りなかの手紙を取り出す。
そして一通り目を通しであろう瞬間、ため息とともに呟く。
「はぁ……、相変わらず馬鹿だな」
そう言いながら、その手紙をビリビリに破く。
そしてパッと空中に投げた瞬間、その手紙は炎に包まれ風に吹かれて黒いススのようなものが飛んで行った。
ガルはそのススがどこかに飛んで行ったのを確認してから、大将の方をじっと見て口を開いた。
「あのバカに伝えておいてくれ……『約束はまだ守っている』と」
「わかった」
大将が返事をしたのを確認した後、ガルは大将達を無視して町に帰るためか歩く。
そしてルトも含めて全員を通り過ぎたところで何かを思い出したのか、少し振り返って話す。
「俺はあの二人を始末したと報告しておく……二人には絶対に人間界に近寄るなと言っておけ。面倒なことになるからな……」
「お、おい、ちょっと待ってくれ!」
ルトはガルを引き留めてながら尋ねる。
「お前、誰に報告するんだ?どうしてそんなことを!?」
「クライアントの名前も含めて、お前たちに言う理由が何もない……だが」
ガルはギロリとルトの方をにらみつけて話す。
「お前の思っている以上に闇は深い。行動する際は気をつけておけ」
そう言うと、ガルは街の方に向かって振り返ることなく歩き続け、姿が大将達からは見えなくなった。
抱きしめあっていたヨルとラドも知らぬ間に離れて、大将達の元の近くでガルの姿をじっと眺めていた。
ガルの姿が見えなくなった瞬間、ラドは大将に頭を下げて話す。
「こんな俺を助けてくれて……ありがとう」
「すずねちゃんに言ってくれ。あの子が決めたことだ」
大将のその言葉にラドは信じられないという顔ですずねの方を見る。
すずねはニコリとして、ラドに話しかけた。
「よかった。よるとさいかいできて!」
「あんたにあんな酷いことをしちまったのに、本当に.......本当に悪かった……」
ラドはすずねに土下座をして謝る。
すずねは土下座をしているラドの肩をトンと叩き、ラドの顔が自身の方を向いたのを確認してから笑顔のまま呟いた。
「みんなえがおになれて……よかったね!」
「……おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ラドはその言葉を聞いた瞬間、我慢していた感情が崩壊したのか大声で泣きじゃくり始めた。
そんなラドをすずねは優しく抱きしめた。