ガルは持っていた剣をそばに突き刺してすずねの方まで歩き、胸倉を右手でつかんで引き上げた。
すずねは苦しそうにしつつも、涙を流さずにガルの方を見る。
怒りを抑えたような声でガルが話しかける。
「言っていい嘘と悪い嘘がある……」
「あの二人を庇いたいのはわかるがな……」
「お前みたいな小娘が……」
「あんな風にめちゃくちゃにできるわけないだろうが!!!」
その言葉を聞いたすずねは胸倉をつかまれたままうつむき、呟く。
「……うそじゃないの。ほんとうにごめんなさい」
「!!」
ガルはすずねをアクアのいる方に思いっきり投げ飛ばした。
ガハッ!
すずねは地面に叩きつけられる。
それでも涙を流さずにガルの方を見て口を開く。
「ごめんなさい……」
「おまえが……」
謝る言葉を遮りガルは我慢が出来なくなったのか怒鳴る。
「お前みたいな小娘が、どうやって廃墟もろともすべて吹き飛ばせるっていうんだ!
あのきれいだった地面をどうやったら真っ黒に汚すことができるんだ!!
こんな……俺と戦うこともできないお前のような魔族の小娘が!!!」
それを聞いたすずねは立ち上がり、ガルの方を向いてせき止めていたであろう感情と共に叫ぶ。
「わたしだってわからない!
きづいたらすべてふきとんでいた!!
まわりにいたみんなもたおれてた!!!」
「であれば、なぜ自分がやったと言うんだ!!!」
「……」
ガルの言葉にすずねは一瞬言葉が止まる。
だが、悩みや迷いを振り払うかのように首を横に振ってから叫ぶ。
「それでも……わたしをみるみんなのめが......」
「わたしがやったといっていたの!!」
「……」
すずねは大声で叫んだあと泣きじゃくるのではなく、ただただ両目から涙を流した。
それを見たガルは何を思ったのか、アクアや大将のいる方を見た。
アクアや大将だけでなく、ルトやヨルも誰も言葉を発せずにじっとすずねの方を見ていた。
ガルは再びすずねの方を見る。
すずねは変わらず涙を流しつつも、ガルの目をじっと見つめていた。
そして再び頭を下げた。
「ごめんなさい。あなたのたいせつなばしょをよごしたのは......」
「わたしです」
「……」
頭を下げる姿にガルの両手はこれまでになく固く握られていた。
そして溜まった感情の吐き出し口を求めるかの如く、大きく叫びながら天を仰いだ。
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
その叫び声は感情が乗っているかの如く、周りの炎が燃え上がる。
アクア側の氷も完全に溶け切り、溶けてできた水も蒸発していく。
森全体にガルの声が響いた瞬間、動物たち怯えて一斉に動いたかざわざわとした。
戦士は息が続く限り叫び続けた。
だが、叫び終わった瞬間、周りの炎はふっと消えた。
そして目の前に刺した剣を持ち、戦意を失った顔ですずねやアクア、大将の方向へ一歩、二歩とゆっくりと歩き始めた。
アクアやヨルは何かに備えるためか構えたものの、すずねは涙を拭いて横を通ろうとする戦士に尋ねる。
「ゆるしてくれるの?」
「もうどうでもいい。ターゲットには興味を失った。俺は街に帰る」
「ゆるしてくれてありがとう、おじちゃん」
「……くそっ」
そう呟くと戦士はすずねの真横で立ちどまり、すずねにしか聞こえない声で呟く。
「これで会うのは最後だ」
「……わたし、おじちゃんのこと好きだよ?」
「俺は……大嫌いだ」
そういうと、再び歩き始めた。
そして、アクアの横を通り大将の横を通る瞬間、
「戦士.......頼まれたものがある」
そう言うと大将は自身のカバンを下ろして何かを探し始めた。