大将たちがガルを見つけたのと同時ぐらいにガルも大将たちに気づいた。
ガルは無言で持っていた斧のようなものを投げ捨て、切り株に立てかけていた自身の身長より大きな剣を持つ。
そしてヨルへ一直線に迫って来た。
その瞬間、アクアが小さく詠唱し氷の剣を生み出してヨルの前に飛び出した。
ギン!!!
ガルの剣とアクアの氷の剣がぶつかる音が響き、その衝撃波が一面の木々を揺らす。
二人はそのまま鍔迫り合いをしながら話す。
「おい、邪魔だ。殺されたいのか?」
「あなた程度に私がやられるとでも?」
「はぁ……くそ面倒だな」
ガルは剣を振ってアクアを弾き飛ばし、距離を取った。
ガルは自身の持っている剣を真上に高く持ち上げる。
そしてアクアと距離があるにもかかわらず、そのまま剣を前に振りぬいた。
ブン!!
ガルの剣からかすかに青白い斬撃が飛ぶ。
それを見越していたのか、アクアは目の前に氷でできた煌びやかな盾が浮いていた。
斬撃が盾にぶち当たる。
ギギギギギギッッッ!!!
斬撃と氷の盾であるにもかかわらず、金属をこすり合わせたときのような音が一面に響く。
パリン!!
氷でできた盾は砕け散った。
だが、氷の盾に当たっていた斬撃も消え去っていた。
それを見たガルは自身の持っていた剣を肩にかけてアクアに話しかける。
「……用があるのは、そこにいる猫又だけだ。
今すぐに渡してくれないか?そうすれば誰も怪我をしなくて済む」
「渡した場合、ヨルさんはどうなるのですか?」
「もちろん、殺す。ただそれだけだ。他の奴には手出しはしない」
「であれば、お断りします。ヨルさんが怪我をすることになるので、あなたの言っていることは嘘となりますよね」
「……」
ガルは回答を聞きつつも一瞬、自身の後ろの森の方をチラッと見て睨む。
そして再度アクアの方を向いて話す。
「であれば、お前の後ろの奴もろとも殺すことになるがいいのか?」
「できるのであれば。ご自由に」
それを聞いたガルはため息をついた後、剣を構えてから目を瞑り大きく深呼吸する。
そして小さな声で呟いた。
「心の業火は永遠に消えることはなく……
たとえその炎でこの身を焦がしても、我は力を求める!」
その瞬間、ガルの剣からは炎が上がり剣にまとった。
ガルは目を見開き、そのまま横に薙ぎ払うようにアクアに向かって剣をふるった。
ゴオッ!!!
さっきの斬撃とは異なり、斬撃に炎がまとっており、2~3倍程度の大きさになっていた。
斬撃が通ったところの木々には火が付きつつ、アクアに近づいた。
ガルが剣を振るった瞬間からアクアも両手を前に出して詠唱をしていた。
「我がとこしえの盟約に従い力を貸せ!
水の精霊『ウンディーネ』!!」
アクアの手から大量の水が現れた。
その水で果てしなく大きな門のようなものが出来上がり、
アクアがフッと息を吐いた瞬間一気に凍り付いた。
あまりの冷気に周りの草木には霜がつき、凍っていく。
炎の斬撃と氷の巨大な門がぶつかる。
氷の門は炎によって溶かされるものの、炎の勢いが弱くなっていく。
ゴゴゴゴゴ……
ついに炎の斬撃によって氷の門は真っ二つになり、崩れた。
切られた氷が割れながら森の中に落ちて行く。
だが、斬撃も勢いがなくなったのか、宙で霧散した。
二人の距離は5mぐらいであるものの、ガル側は火の海に、アクア側は氷の世界となっていた。
そしてアクアの後ろ側にいた大将、すずね、ルト、ヨルはただただ見ている事しかできなかった。
ガルが、炎をまとった剣を地面に刺してアクアに話す。
「どうしてそんなやつをかばうんだ?」
「そんなやつ?ヨルのことですか?」
「あぁ。お前にとっては赤の他人だろう。そこまでして守る理由があるとは思えない」
「その言葉、お返ししましょう。あなたもこの人をそこまでして殺す理由がどこにあるのですか?」
「……」
ガルはアクアの質問に黙る。
「ねぇ、おじちゃん!ひとつだけおしえて!!!」
後ろで戦いを見ていたすずねがアクアの横まで来てガルに叫んだ。