大将、すずね、ルト、アクア、ネルの5人は各々少し緊張した顔で、サンドラの町の中央にある噴水の像の前で集まっていた。全員が集まったのを確認したアクアは他4人に対して話しかける。
「皆さん、集まりましたね、早速行きましょう。こちらです」
アクアが先に歩き先導する。
5人はサンドラのにぎやかな町の中を抜けていく。
次第に建物が無くなっていき、逆に木々などの自然が増えていく。
そして建物が一切なくなり、目の前は森しか見当たらないような場所に到着した。
「ヨルさんの地図によると、ここで間違いないですが……」
「本当にここ……?」
アクアの言葉に大将は不安そうな言葉で呟く。
ヨルが大将の方を向いて話しかける。
「ここで合ってるハズ。確かにこっちの方向から音が聞こえて来てたから」
「今は聞こえないの?」
「……」
ヨルは黙り、自身の耳をピンと立てて音を聞こうする。
風が通り抜ける音が一面に響く。
「……間違いない。この正面にある森の中から、かすかな音が聞こえる」
「どんな音なの?」
「そこまでは聞き取れない。強いて言うなら、何か大きなものが倒れる音のような気が」
ヨルは眉間にしわを寄せ、悩みながら答える。
二人の話を横で黙って聞いていたルトが、急に森の方に少し小走りで走った。
そして何かを見つけたのか、ほか四人を手招きした。
四人はルトの方に歩いて近づいた。
「ここを見てみろ。木の枝が何かで切られたように折れているうえに、大きさの異なる足跡が二つある。おそらくラドと戦士がここを通ったってことだ。ついてこい」
ラドはカバンから短刀を取り出し、
後ろのメンバーが通りやすいように枝を切って道を作って森の中に入って行った。
その道を四人がついていく。
うっそうとした木々が道を塞いでいたが、よく見ると人が通ったであろう足跡などが残っていた。
5人は道なりに進むと、森の中であるにもかかわらず、急に視界が少しひらけた。
そこは、いたるところの木々が大小問わずに切り倒されている場所になっていた。
視界が急に開けたことに大将は驚いて呟く。
「どうしてこんなにひらけてるんだ?」
「多分……あれが理由じゃないでしょうか」
アクアは指をさしながら答える。
倒れた木々からロープがぶら下がっていた。
その上、不自然な長さに切られた丸太や先の尖っている槍のようなものもいたるところに転がっている。
「……ラドが準備したっていう罠か?」
「だろうな。ただあいつ、そこまで器用だったとは」
「それにしてもなんでこんなにも木々を切らないといけないんだ?」
大将はピンと張られた状態で残っているロープを見つけたのか、その方向に歩く。
「別にこんなロープなんて見れば……」
「危ない!!!!」
「えっ?」
近くにいたヨルは大将の手を握り、力いっぱい引いた。
大将は急に引っ張られたためか、体制を崩してしりもちをつく。
「いてて……おい、ヨル!!なんだって……」
「あんたが歩こうとしたところよく見てみろ!!」
「よくって言われても……」
大将は周りをよく見てみる。
地面は木々の葉っぱや木の根っこなどで埋め尽くされており、
パッと見た限り何も変な場所は見当たらないようだ。
ヨルは近くにあった、片手でギリギリ持ち上げれるぐらいの少し大きめの石を、大将が歩こうとした場所に投げた。
メキメキ……ドサッ!!
石が落ちたその場所の葉っぱは、急にぽっかり空いた空間の中に落ちて行った。
それを見た大将が驚きながら口を開く。
「これは……落とし穴!?」
「あぁそうだ。パッと見たロープはフェイクで、こっちが本命だろう。この森はラドの罠ばかり。だからこそ、戦士は確実に罠を破壊するため、木々を破壊しながら進んだのだろう」
「なるほどね。ということは、この倒れた木々を追いかけていけば……」
「戦士に合えると思って間違いないと思う」
ヨルは大将に手を差し出し、しりもちをついていた大将の手を握って立ち上がらせた。
大将は手をパンパンと払って、ヨルに頭を下げる。
「助けてくれてありがとう、そして怒ってすまなかった」
「いや、気にするな。それよりもさっさと行こう」
「私も罠を索敵しながら行きます。大将とラドさん、すずねちゃんは私とヨルさんの後についてきてください」
アクアはそう言うとヨルと共に、倒れた木や草をよく観察しながら歩き始めた。
残った3人はアクアとヨルについて行った。
そんな調子で歩き続けて数時間後……
倒れている木々が少しずつ少なくなり、そして、
ゴゴゴゴゴ
ドサッ……
少しづつ木を切る音と倒れている音が聞こえ始め、歩くほどその音は大きくなり始めた。
そして遠くで斧のようなもので木を切っている戦士、ガルを見つけた。