各々が宿の自身の部屋に荷物を置き一息ついた後、食堂に集まり席に着いた。
アクアに気絶させられていたヨルも、かなり不機嫌そうな顔をしながらも集まっていた。
そして、食堂には円形の机の上にすでに晩御飯が用意されていた。
パッと見た限り、出ているグラスやお皿、料理に飾り付けられた花などによって豪華な料理であることは一目瞭然だった。
全て大皿で用意されており、自分たちで食べたい料理を食べる形式のようだ。
そして自然と全員が手を合わせた。
「「「「「いただきます!!!!!」」」」」
すずね、ルト、ヨル、アクアは食べたい料理を、自分自身の皿に載せて食べ始めた。
ただ、大将だけはギュッとつむった後に再度出ている料理を凝視していた。
「大将、どうかしたんですか?」
なぜか食べはじめない大将にアクアが声をかける。
声をかけられて大将は自分の顔が変になっていることに気づいたのか、凝視をやめてにこやかに笑う。
「いや……半分は俺がこの世界に来てから見たことがある料理なんだけど、半分は全く見たことが無い料理だったからね。料理人としてはどんな味なのか、全く想像できないからじっくり見てただけ」
「ガハハ!!そうか。大将は魔界側の料理を見るのは初めてか」
「まぁ、これまでリアナの街からほとんど出たことが無かったからね。そもそも人間側、魔界側って考えて料理を見たこともなかったし……」
大将は目の前の大皿に乗った1匹の魚をフォークで指して持ち上げて眺める。
なぜかその魚はフグのように真ん丸でありながら、目がぎょろっとしていた。
「それは魔界魚の一種だな。新鮮だと真ん丸だが、鮮度が落ちるとしぼんでぺったんこになる。新鮮なもののプニプニのお腹部分を食べるのが格別なんだ。骨もないから食べやすい」
ヨルはそう言うと、同じように真ん丸な魚のお腹部分を手でつかんでがつがつと食べた。
大将はその言葉に従って少し顔を歪ませながらもお腹部分を小さくかじる。
「……うまい」
「だろ?」
「あぁ。プニプニの触感もたまらないが、淡白な味なのも驚きだな。あと、味付けも……」
「はいはい。料理人は研究しておいてくれ。私はどんどん食べるからな」
「料理人としては研究はしないといけないからね。とはいえ、おいしい食べ方もマネしないといけないか」
そういうと、さっきまで持っていた魚をペロリと平らげたヨルは2匹目をすでに手に取って話す。
大将はヨルと同じく魚を手に取ってがつがつとお腹部分を食べ始めた。
そんな二人の様子をすずねが他の料理を食べながらもニコニコしながら見ていた。
ルトがすずねに声をかける。
「嬢ちゃん、どうかしたのか?」
「たいしょうとよるがたのしそうでうれしい」
「どうして?」
「……」
すずねはルトの質問に対して少し回答せず大将とヨルの方を見る。
大将が葉っぱのようなものをフォークにさしながらヨルに何やら聞いている。
ヨルはめんどくさそうな顔をしながらも、他の皿にあった何かの肉を手に取り、その葉っぱでくるんでパクッと食べた。
それを見た大将は同じように葉っぱで肉をくるんで食べる。
すると、急に顔を真っ赤にしてコップから水を飲む。
その様子を見ていたヨルがにゃははは!と笑っていた。
そんな二人のやり取りを眺めながら口を開く。
「やっぱり……みんななかがいいほうがすきだから」
「そうだな」
すずねとルトは自分たちも色々食べながらも、大将とヨルが仲良く話している姿をニコニコしながら見ていた。
そして時間が経ち、みんな料理を食べ終えて、テーブルの上の料理がすべて片づけられた。
片づけられた場所には宿の給仕人から各々温かいお茶のようなものが配られる。
配られたのを確認したアクアは、椅子から立ち上がって口を開いた。
「さて……これまでに分かっている状況と明日からの作戦について話しましょうか」