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ep.17-3 人間界と魔界の間の街『サンドラ』

飛行船は昼も夜も関係なく飛び続け、ちょうど一日後にサンドラの町の空港に到着した。

そして4人は飛行船から降り、サンドラの町に降り立つ。



そこは周りが森に囲まれた、自然豊かな町だった。

風が吹くと森が生きてるかのようになびくのが見える。




町の中に大きな公園があり、そのちょうど真ん中には杖を持った女性の像が飾られている噴水があり、その像の足元には何かが彫られている大きな台座があった。他には宿屋、ご飯屋、服屋などの店があるため、生活をするには全く困らない町ではあるものの、大将が住んでいるリアナの街に比べるとかなり小さい。



行きかう人々は人間、魔族がほぼ半々のように見える。

そしてどこを見ても人間や魔族の区別なく話していた。

まだ、太陽も空高く上っており、昼間だからか町に活気がある。

その町の中をルトを先頭に大将、すずね、ヨルが歩いていた。



大将とすずねは初めて見る物が多いのか、キョロキョロしながら歩いている。

特にすずねは興味ある所がたくさんあるのか、3本のもふもふ尻尾が色々な方向に動いていた。


一方、ルトとヨルは目的地に向かって黙々と歩いていた。

ただ時々ヨルの猫のような耳が急にピクンと動き、何かの音を探しているようだった。

そしてルトが一つの建屋の前で止まる。



その建屋の前には髪が腰のあたりまで伸びていて、頭に二本の角が生えているすらっとした高身長の女性、魔王の側近であるアクアが立っていた。

アクアは四人に頭を下げてから口を開く。



「みなさま、お待ちしておりました。

 移動の疲れもあると思いますので、一旦本日は宿でご休憩なさってください」

「お……おい!!!」



その言葉にヨルがアクアの話にかぶすように話す。



「ちょっと待ってくれ、ラドが大変な状況のはずだ!今すぐに出発させてくれ!!」



その必死な言葉に大将、すずね、ルトはどうすればよいのか、という迷った顔をしてお互いを見る。

だが、アクアは淡々とした口調で返事をする。



「お断りします。自身の疲れすら理解できない方は足れまといとなります。

 本日はお休みくださいませ」

「どうしてなんだ!?私は元気だぞ!!休憩なんて必要ない!!」

「ほう?……なら私から逃げることができればそのまま出発しましょう。

 ただし、捕まった場合は……本日は諦めてくださいね」



その言葉を聞いたヨルはこめかみに血管が浮かび上がる。

そして怒気が少し漏れている口調で話す。



「私を猫又と知って、そんなことを言ってるんだな?」

「もちろんです」

「なら……捕まえてみろ!!」



次の瞬間、アクアの目の前に立っていた猫又が消える。

大将とルト、すずねは周りをキョロキョロした。

ただ、アクアはため息をつきながら周りを見ることなく右手でゆっくりと指パッチンをした。

指パッチンをした手から、青色の雷のようなものが伸びていく。

その青色の雷は少し遠くの家の屋根に飛んでいく。




パキン!

ドスン!!!



「はぁ……私の、勝ちですね。と言っても、聞こえてないと思いますが」



アクアは呟く。

少し遠くの家の屋根で全身氷漬けになったヨルがゴロンと屋根から落ちた。

アクアは指パッチンをした手をフルフルとして氷漬けを溶かした。

その様子をポカンとして見ていた大将、すずね、ルトに話しかける。



「みなさんは宿に入ってご休憩ください。各々の部屋をご用意しております。

 あと、本日の夜ご飯も準備しております。その時に明日のお話をさせてください」

「ねぇ、あくあ」



すずねは手を上げてアクアに尋ねる。



「よるも……やどにいれてあげてね」



その言葉にアクアはすずねの前まで行き、すこししゃがんですずねと目線を合わせ、さらに頭を撫でながら答える。



「すずねちゃん、もちろんです。

 魔王様からもヨルさんをちゃんとおもてなしするように言われてますから」

「ありがとう!」

「すずねちゃんが笑顔なら、私はそれでいいです」


アクアとすずねはお互いににこりとした。

アクアは倒れているヨルを抱え、3人と共に宿屋に入って行った。

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