ここは空港の待合場所のような場所。
外を見てみると飛行船のような乗り物がいくつかあるものの、すべてプロペラなどが全くついていない。
その代わり飛行船の下部分に全体を包み込むかのような魔方陣が展開されていた。
そんな待合場所でルトが他三人をまとめていた。
「みんな!出発の準備はばっちりか!?」
「もちろんだ!」
「そら……こわいよ……」
「……」
各々の反応も異なったが、持っている物や服装も大きく異なっていた。
大将はすずねを助けに行った時とは異なり、いつものを白の割烹着を着てリュックサックを背負っていた。
リュックサックは何が入っているのかわからないもののパンパンに膨らんでいた。
すずねはいつものラフな格好でもふもふの尻尾も3本揺らめいていた。
大将と同じくリュックサックを背負っているものの、大将ほど大きくもなければパンパンに入っているわけではなかった。
ヨルはいつもの黒いフードを被り全身黒のローブのような服を着ていた。
ローブの外は何も背負っていないものの、歩いていると時折ローブが変な形に曲がって見えるため、ローブの中に何かを持っているように見える。
三人のまとめ役になっているルトはリュックサックのほかに手提げかばんを一つ持っていた。ボストンバッグのような手提げかばんにしてはかなりの大きさであり、持ち手の引っ張り具合を見る限り中身はズッシリとしているように見えるが、ルトは何の苦も無く軽々と持っている。
ルトは口を開かなかったヨルの前に行って話しかける。
「おいヨル、準備は完璧か!?今回の旅はお前のためでもあるんだぞ!しっかりしてくれ!!」
「あぁ……すまない。準備はちゃんとしてきた」
ヨルが少しうわの空なのか、生返事をした。
その返事を聞いたすずねは少し不安そうな顔でヨルに話しかける。
「よる、だいじょうぶ?」
「あぁ……昨日の夜、少し眠れなくてな」
「どうして?」
「……」
すずねの質問にヨルは目をつぶって少し悩んだ。
そして下を向いて、呟くように口を開いた。
「今のような状況が夢のように感じてしまってな……正直、助けてもらえないと思っていた。
なんなら、お前たちに殺されても仕方ないと心のどこかでは思っていたんだ」
ヨルは前を向いて、すずねの方をしっかり見て話の続きを話す。
「でも……もしかするとラドや子供たちにもう一度会える可能性が生まれた。お前たちにあれだけ酷いことをしたのにも関わらず。それが私にとってどうしても夢みたいに思えてしまってな」
「わたしは……」
ヨルの話を聞いてすずねが口をひらく。
「よるがたいしょうにやったことをまだゆるしてないよ」
「……許さなくていい。それは私の罪だ」
すずねの言葉にヨルは答える。
ただ、その答えを聞いたすずねは首を横に振って話しかける。
「ゆるしてないけど……わたしはさいごにみんなでわらいたいの。ただそれだけ」
「……」
すずねの言葉にヨルはきょとんとする。
それを横で聞いていた大将は何も言わずににこりとする。
逆にルトは右手をグーにして自身の口に近づけてハーと息をかけてヨルに言う。
「ヨル、我慢しろよ」
「?」
ヨルはルトの言葉の意味が分からず困った顔になる。
次の瞬間、背の低いルトは飛び上がる。
ゴン!!!
「痛った!!何するんだ!!!!」
ヨルの頭に自身の右手でげんこつを思いっきり食らわせた。
殴られたヨルは、げんこつされた部分を手でさする。
そしてそれを目の前で見ていた大将とすずねは口をあんぐりして驚いていた。
殴った右手が痛いのか、ルトは左手で殴った部分をさすりながら叫ぶ。
「俺はまだお前を信用しきれておらん。
だがな……この一発で俺はお前を許した。あとはこの二人に許してもらいな」
「……すまない、ありがとう」
「俺は心がひろいからな、ガハハ!!!」
ルトが口を開けた大きく笑う。
それを見たすずねがぼそっと呟く。
「るとはよるとはじめてあったとき、さいごまではなしをきくつもりなかったのに」
「……!!」
すずねの言葉を聞いたルトは顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせる。
それが面白かったのか、ルト以外が大声で笑う。
「ははは!!」
「あはは!!」
「にゃはは!!!」
「「「!?」」」
ヨルの笑い方に3人は驚き、ヨルは顔を真っ赤にして口を押さえた。
そして、飛行船の搭乗時間になり4人は笑顔で色々話しながら飛行船に乗り込んだ。