大将はヨルの目をじっと見ながら話しかける。
「以前会った時も少しだけ不思議に思っていた……
『金のため』と言いながら『同族に手をかけるほど落ちぶれてしまうとは』と言っていたことを。
今回も『あの子たちのために』と言っていた……」
「……」
ヨルは黙って大将の話を聞いている。
大将は少し首をかしげながら尋ねた。
「お前たちは何のために金が欲しかったんだ?
落ちぶれるとわかってまでなぜ金が欲しかったんだ??」
「それは……」
ヨルは大将から目線を外し、ルヴィアをチラッと見て答えた。
「……子供たちを養うためさ」
「子供?お前たちに子供なんていたのか?」
「いや、そうじゃない。色々な理由で親がいなくなった子供たちのことだ。
魔界じゃまだよくあることなんだ」
「……」
「私はラドと一緒に魔物の子供を守るために戦争中は傭兵として、
戦争後は裏の稼業を生業として生きてきたんだ。
ただ、できる限り他の奴を傷つけることが少ない仕事を選んではいたがな」
想定外の言葉に大将は言葉を失う。そして、ルヴィアの方を見た。
ルヴィアは真っ直ぐ大将を見て答える。
「魔族だとまだあるわ。強い子以外は認めない種族がいくつかあるからね。
もちろん私も色々頑張っているけど、魔界はあまりにも広いからこういう話があってもおかしくない。
今でも魔族長の会議で時々議題としては出てくるから」
「……なるほど」
大将はその言葉を聞いてヨルを再度見る。
ヨルはその大将の目をじっと見つめていた。
ハァと大将は呟きルトに話す。
「であれば、俺も助けるに一票だ。こいつを助ける訳じゃない……子供たちを守るためだ」
「そうか......なら決定だな」
ルトはパンと一回手を叩いて締める。
「俺たちは今からこいつらを助けるために動こう」
「……ありがとう」
ヨルは涙を流す。
すずねはそんなヨルに声をかける。
「よかったね」
「あぁ……ありがとう……」
すずねとヨルは抱きしめあった。
それを横目にアイルは話す。
「よっしゃ。なら俺たちも準備するか!」
「勇者待って……私たちはこの旅にはついて行かない方が良い」
「……なぜだ?」
ルヴィアの言葉にアイルの眼光が急に鋭くなりトーンも低くなる。
それでもルヴィアはアイルの目をじっと見て話す。
「戦士が捨てた紙の問題よ……あれは私たちのような、かなり上の方しかまだ渡されてなかったはずよね?」
「そうだな。人間側だと100人と見てないはずだ」
「であればこの案件、私たちが急に向かったらどうなると思う?」
「……間違いなく怪しまれる。最悪邪魔が入るかも……クソ、俺たちの周りを疑わないといけないのか」
「そうね。絶対信用できる相手以外に、この話はダメよ」
ルヴィアの言葉にアイルは目をつぶり、イライラを無くすためか深呼吸をする。
ルヴィアは大将の方を向いて、話す。
「大将、私たちは戦士をそそのかした奴を探すわ。
この紙についても魔族側で新しい情報が分かったとか言って、時間を稼ぐから。
その方が動きやすいでしょ?」
「それで頼みます。そしたら俺、ルト、すずねちゃん、ヨルの四人で動くでいいですか?」
「……側近ちゃんを連れて行きなさい。念のために」
ルヴィアの提案に大将は少し驚く。
「良いんですか?ここにいないし、ルヴィアさんの右腕じゃないですか」
「……右腕だからよ。今回、私と勇者は恐らく何があってもほとんど動けないにもかかわらず相手は確実に戦士。
私は戦士と何度も戦ったことがあるからわかるけど、あなた達4人じゃ全く歯が立たないわよ」
「たたかおうとおもってないよ」
ルヴィアの言葉にすずねが口をはさみ、さらに話す。
「あのおじちゃんもやさしかったから、はなしたらわかってくれるとおもう」
「すずねちゃん……ありがとう」
その言葉にアイルがお礼をいった。
お礼の意味が分からなかったすずねは首をかしげて尋ねる。
「どうしてあいるがおれいをいってるの?」
「なんでだろうな……ただ、言いたかっただけかな」
「へんなあいる」
すずねはさらに頭にハテナマークがうかんでいるようだ。
それを横目にルヴィアが大将に話しかける。
「万が一、戦士と戦闘になってしまった場合でも側近ちゃんがいれば死ぬことはないと思う。
あの子はよく魔界を調べるためにあちこち言ってもらっているから、変には思われない。
今回も魔界の調査の一環としてサンドラの町で合流させる」
「わかった。なら5人で行こう」
「ねぇ、少し思ったんだけど……」
ルヴィアは大将に向かって話しかける。
「側近ちゃんとヨルの二人でも大丈夫じゃない?どうしてルトと大将とすずねちゃんが行くの?」
その言葉にルトと大将とすずねはルヴィアの顔を見た。